表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

2/14

2話 荒れた領地とやつれたお嬢様

「着いたー!」


 神の園を飛び出した俺たちは外の世界の海岸に到着した。


 かなりの長距離フライトだったにも関わらず最後まで運んでくれたアオコ達には格別の感謝を。流石は俺の大事な友達だ。


「ありがとうアオコ!おかげで俺、外の世界に出られたよ」

「ピィ!」

 

 アオコが名残惜しそうに俺を見ている。連れて行って欲しいのかも知れない。


「ダメだよアオコ。アオコは群のリーダーなんだからみんなのところに戻らなきゃ」


「ピィィ……」

 

 鳴き声に元気がない。きっとアオコも自分の責任を理解しているんだ。俺だってアオコに会えなくなるのはとても寂しい。

 

 でも俺はこれからどこに向かうか決めていないし、アオコがどこに向かうのかもわからない。もしかしたらここで一生のお別れの可能性もあるのだ。


「やばい涙が……」

 

 アオコが雛の時、怪我をして動けなくなっていたのを治してあげた時から10年近く経った。

 俺は毎年アオコ達が神の園へやってくるシーズンを楽しみにしていたんだ。

 だけど今後はどうだろう……お別れなのか?俺にはまたアオコと会う方法が思い付かない。


「……ピィ!」

 

 アオコは何かを決意したように鳴き、自身の羽根を一枚剥ぎ取った。

 

「アオコ!?」

 

 突然の行動に俺は驚いたが、アオコはその羽を俺に渡そうとしているようだ。

 

「君の羽根を俺に?いいのかアオコ?」

「ピィ!ピィピィ!」

 

 アオコの言葉をはっきりと理解できるわけではない。でも付き合いの長い俺にはなんとなくわかる。「これがあればまた会える」そう言っているように感じた。


「ピィィ」と鳴き、アオコとその仲間達が飛び立っていく。

 先ほどまでの寂しさはない。また会える日を楽しみにしていよう。

 去っていくアオコ達を見送りながらそう思った。

 

「いいいいいよっしゃあああああ!」

「うわぁぁ!?」

 

 アオコと感動的な別れをしていると後ろからシドが雄叫びをあげた。

 完全に油断していた俺はビックリして変な声出しちゃったよ。

 

「な、なんだよシド!びっくりするじゃんか!」

「あらごめんなさいね。あんたと神鳥レガの別れを邪魔しちゃいけないと思って我慢していたんだけどもう限界だったのよ」


 なんだ……なんか震えてるからトイレを我慢してるのかと思ってたよ。


「あたしは戻ってきた!戻ってきたのよ!神の園からよ!もう嬉しすぎて自分のテンションがよくわからないわ!」

「良かったねシド!」

 

 俺も外の世界に感動してるのは間違い無いんだけど……ドチャクソ喜ぶシドを見てたら落ち着いてきてしまった。


「ところでシド、ここは何処だろう?知ってる?」

「もちろんよ!」

「そっか。じゃあシドは自分の屋敷に帰れるんだね」


 俺はこれからどうしよう。まず神の園を脱出することだと思ってその後のことはあんまり考えてなかった。

 外の世界に出たのは初めてなんだし、行く宛てなんてあるわけない。


「あのさシド、俺もついて行ってもいい?行く宛てがなくてさ……。もう少し一緒にいてくれたら嬉しいんだけど」


 シドは色々変態チックな風貌だけど貴族家の当主様らしいのだ。


 しかし海に落ちて行方不明になって半年ぶりに領地に帰る。

 領地は間違いなく荒れているだろうし、シドはこれからが本番なんだ。

 そんなシドに迷惑をかけたくないけど、俺には頼れるのがシドしかいない。

 

「俺のことなんて構ってられないのは分かってるんだけどさ……俺も外の世界に出たばかりで不安も大きいと言うか……」


 神の園にいる間、シドはずっと領地と家族の心配をしていた。


 そんなこれから大変になるシドに俺のことまで背負わせていいものか……

 

 ……そうだよ。シドにはシドのやるべきことがある。その邪魔はしたくない。


 シドがダメだと言ったら潔く諦めよう。

 

 ……ん?なんかシドがワナワナ震え出したぞ。


「おいおいおいおいおい、何言ってんのよ。あんたも一緒に連れてくに決まってるでしょ!」

「え……?そうなの?決まってたの?」

 

「邪魔だなんて思ってないし、あんたも思うな!たとえ迷惑なことでも何でも言いなさい!水臭すぎるわ。悲しくなってくるでしょうが!あんたには本当に感謝してる。何があってもあたしはイアックを支援する。何があってもよ」


 俺は神の園で大怪我をしたシドを見つけ、治療しつつ半年間身の回りの世話をした。

 

 見返りにシドには外の世界のことをたくさん話してもらったし、家族が全員いなくなって孤独だった俺に1人じゃないって本当に楽しいって思い出させれてくれた。


 一緒に過ごしたこの半年は俺にとってかけがえのないものだが、シドも同じように感じてくれていたようだ。

 

「あんたはもうあたしの家族同然よ。遠慮なくあたしを頼りなさい!」

「シド…」

 

 俺は内心ですっごい感動していた。シドに出会えて本当に幸運だった。シドありがとう!


「あとあれよ、あんた絶対仕事できるタイプだからあたしを手伝いなさい。給料も出すわよ」


 その上仕事までくれるのか。感謝感激雨霰とはこのことだな。

 

「わかったよ。よろしくお願いします」

「よし、じゃあ早速最寄りの町まで行って領地までの馬車を手配するわよ」


 

 ◇


 シドの領地《ライフシード領》までの道すがら、見るもの全てが新鮮だった俺は大はしゃぎだった。

 その辺に生えてる草とか小さな川とかでも大興奮だったよ。

 

 それから何事もなく馬車で旅すること7日、ついにシドの領地、ライフシード領に着いた。

 

「やっぱりあまり活気が感じられないわね」

「そうなの?」

「でも思ったほどではないわ。娘が頑張ってくれているのね」

「そうなの?」


 シドは神の園にいる間、ずっと娘さんと領地のことを心配していた。最悪の想定なども色々考えていたのは俺も知っている。っていうかめちゃくちゃ相談されたし。


 その最悪の状況ではなかったと言うことか。


「イアックあそこよ。あれがあたしの屋敷、ライフシード領主館よ」


 シドの屋敷へ到着。

 自分の家だから当然だけど、シドは扉を開けてどんどん進んでいき、執務室と書いてある扉のドアノブに手をかけた。


「さぁ娘と感動の再会よぉ!」

 

 確かに扉の向こうに人の気配があるな。


「あたしの可愛い娘よ。今帰ったわぁぁぁん!」


 勢いよくドアを開けるシド。ちょっとテンションがきもい。半年ぶりの家族との再会だからこんなもんだろうか。


「……」


 部屋の中には俺と歳が近いと思われる女の子がいた。

 目鼻立ちの整った可愛い女の子。何だかドキドキする。本当にシドの子かな?似てるのは金髪の髪色だけなような?

 

 口を開けて唖然としている。もしかして突然すぎて脳の処理が追いついてないかも?


「もしかしてパパ?……それとも変態お化け?」

「パパよ!?今帰ったのよおおおお!」


 両手を広げて女の子迫っていくシド。やっぱりシドのテンションがおかしくなっているな。抱きつく気か?あちらさんは多分まだ心の準備とかできてないと思うなぁ。


 迫り来るシドを前にして、女の子は突然泣き出してしまった。


「生きてた……パパ。良かった」

「リ……リナちゃん……」

 

 あの子が《リナ》さんか。神の園でシドに聞いていた娘さんの名前だ。

 シドが怖くて泣き出したのかと思ったが、そんなことはなく、純粋に父親の帰還を喜んでいるようだ。


「死んじゃったかと思った。今までどこで何してたのよ。生きてるなら連絡してよ」

「心配をかけたわ。本当にごめんなさい。今までのことをちゃんと説明するわ」


 シドは今までのことを説明した。

 暗殺されかけて海に落ち、気がついたら神の園にいたことを。


「と言うわけで今に至るのよ。帰ってこれたのは奇跡だと自分でも思うわ」


 リナさんは最初はうんうんと頷きながら聴いていたけれど話しが進むに連れて真顔になり次第に目つきが鋭く変わっていった。

 

 あれ?これどう言う反応?そもそもこの話って素直に信じてもらえるような内容なんだろうか。

 神の園ってこっちでは御伽話扱いなんじゃなかったっけ?

 

「……ふーん。そうなんだぁ」

「あら?リナちゃん?なんだか怒ってる?」


 ……ワナワナしてるぞ?力を溜めているのかなぁ?

 

「神の園に行けるわけないでしょうがぁ!領地ほっぽりだしてどこでバカンスして来たんだ変態親父ぃぃぃいい!」

「ノォおおおおおおおお!?」


 うわぁ!?リナさんが怒り出してしまった!?

 うーん、本当のことなんだけど普通に信じられないよね……。

 

 そう言えばシドだって初めて説明した時は俺の話を信じてくれなかったんだよなぁ。

 まぁ御伽話の島にずっといました!なんて話を即信じるのは無理があるか……。

 

 往復ビンタされながら「ホントなのよ信じてえぇぇ」 と言うシド。

 あ、これ止めた方がいいやつ?でもあの子めっちゃ怖いぞ……。

 

 まぁ心配かけたのは事実だし?ちょっとくらいお仕置きされた方がいいんじゃないかな。

 うん、このまま様子を見よう。断じてあの子の剣幕に恐れをなしたわけではない。断じて。


「それでそっちの人は誰なのよ」


 あ、俺の方に矛先が……。いや、俺は何も悪いことはしていない。堂々と話をしよう。ちょっと怖いけど頑張ろう。


「初めまして。イアックと申します。浜辺で倒れていたシド様を治療し、半年ほど身の回りのお世話をさせていただきました。その縁でこの度お仕事をいただけるとのことで、ここライフシード領に参りました。宜しくお願い致します」

「あ、ご丁寧にどうも」


 よし、挨拶は上々っぽいぞ。シドは貴族だし、一応様付けで。


「でも神の園から来たなんて嘘をつくのはダメよ。そんなわけないって誰でもわかるわ」


 嘘じゃないんだけどなぁ……。でもこれ訂正したらむしろ火に油だな。黙っておこう。

 

「ぐふぅう…リナちゃん激し過ぎ。嘘なんてついてないのに」


 お、シド生きてたか。ほっぺたリンゴみたいになってるけど。

 

「イアック、何あたしに様付けなんてしてるのよ。気味悪いからいつも通りでいいわ。あと改めて紹介するわね。愛娘のリナよ」

「リナよ。よろしく」

「よろしくお願いします。リナお嬢様」

 

 挨拶されて改めてリナお嬢様を見る。

 

 シドに似たくすんだ金髪をポニーテールにしていてそれが似合っている。本来はとても可愛い女の子なのだろう。

 

 しかし今はとてもやつれているんだよなぁ。

 肌や髪に艶がなく、全く健康的には見えない。睡眠だって足りていなそうだ。

 

 本来ならドキッとしてしまうような女の子なのだろうが、今彼女を見て1番に思うのは<健康状態が心配>である。


「リナちゃん、聞いてちょうだい。この子はイアック。私の命の恩人なの。うちで使用人として住み込みで働いてもらうつもりよ」

「……うちに人を雇う余裕なんてないわよ。今日のご飯だって困るくらいなのに」

 

 やっぱりそうなのか。しっかり食事を取ってるようには見えないもんな。


「大丈夫よイアック。あたしはリナちゃんの話を聞くからあんたはその辺散策でもして来なさい」

「……わかったよ」


 俺は部屋を後にして散策に出ることにした。

 シド達はお互い話したいことや聞きたいことが山ほどあるんだろうし、俺はむしろ邪魔だろう。

 

 でもなんだか雇ってもらえない感じだったな。他に行く宛てなんてないのに……。

 これはなんとか有能なところを見せないとまずいのではないだろうか。

 

「よし、シゲ爺が言ってたあれやろうかな」


 そうと決めたら早速準備だ。今日はもう少しで暗くなるし、あんまり時間ないから急ごう。

お読みいただきありがとうございます。

毎朝6時更新頑張ります。


ヒロイン登場しました。

今時点では可愛いとか美人とか全くなくて

「え?あの子大丈夫なの?病院行った方がいいんじゃないの?」

って感じの子です。


またお越しいただけたら幸いです。

よろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ