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28話 新しい価値

⭐︎ライフ適性者 ジーナ視点


 私はジーナ。ライフシード領で自警団員として雇われています。

 

 《マナ不全者》改め《ライフ適性者》達は毎日ライフアーツの鍛錬と魔物の間引き、食肉の魔物狩りを行なっており、私もそれに参加して日々頑張っています。


 しかしライフを使えても戦い自体に向いてない人もいます。気が弱すぎる、戦う力を持っていたとしても魔物が怖いなどです。


 私も戦いが苦手な1人。だから毎日の鍛錬でも狩りの場でも足を引っ張ってしまう。申し訳ないとは思っていてもどうしても足がすくんでしまいます。


 今日はイアックさんに言われて鍛錬に参加せずに領主館にお邪魔しています。私以外にも数名呼び出されていますが、これはおそらく戦いを苦手としている人たちを集めたのだと思います。


「イアックさんから呼び出しか……もしかしてお叱りを受けるのかな?」

「いつも足を引っ張ってばかりだからかな」

「イアックさんに愛想を尽かされていたらどうしよう……」


 イアックさんは私たちに希望をくれた人。ライフアーツの創始者だ。


 マナ不全者と呼ばれ、蔑まれることもあった私たちにライフ適性者と言う新たな呼び名もくれた大恩人。

 それもあって私も含めてみんなが敬っている。だからこそ愛想を尽かされたらどうしようと不安になっています。


「おはようございます。集まってくれてありがとうございます」

「おはようございます」


 イアックさんが来た。特に普段と変わった様子はないし、少なくともお叱りを受けると言うことはなさそうだ。


「今日ここに集まってもらったのは、ライフアーツ以外のお仕事の相談です」


 あ……やっぱりそう言う話なんだ……。


「あの……俺たちは不合格なんでしょうか?」

「え?」

「魔物とまともに戦えないから……」

 

 ライフ適性者のテッド君。この場にいる唯一の男性で、彼は魔物に怯えている自分を恥じて毎日悩んでいることを知ってる。

 

「んんん?何の話だろう?………………ああ、そういうことか。多分誤解があるよ。ライフアーツ部隊不合格なんて話じゃない」


 イアックさんはテッド君の目を見てはっきりと宣言した。


「テッド君、貴方にはライフ術の才能がある。ライフアーツはライフ術の一種でしかないんだ。テッド君の才能は他のライフ術でこそ活きると思う」


 不安に思っていたみんなのを見渡しながらイアックさんは力強く言い切りました。


「それはここにいるみんなも同じだよ。その才能を見込んで俺がやりたいことを手伝って欲しいってお願いにきたんだ」


 イアックさんは今まで他者から向けられてきた失望や蔑みの視線とは全く違う期待と確信に満ちた目を向けてくれます。


「みんなにはライフ術の中の3種類、ライフヒーリング、ライフリペア、ライフアライブの3つの習得を目指してもらいます」


 何やらすごそうなのが一気に3種類も出てきました。もちろん初めて聞きます。

 

「まずは体験してもらおうかな」と言ってイアックさんは私たちの手を取ります。


「じゃあ失礼して」

 

 そう言ってイアックさんは「まずはライフヒーリングね」と言って施術を始めました。


 

 ◇

 あの後のことはよく思い出せません。とても気持ちが良かったとしか言いようがありませんでした。

 

 周りを見渡すとみんなだらしない顔をしてピクピクしています。

 

 私もあんな顔をしていたのでしょうか……ライフ術、恐ろしい技です。


「ごめんなさい。いきなりだと効果がありすぎたね」


 バツが悪そうにイアックさんが苦笑いを浮かべます。


「今のがライフ術……凄すぎます」


 なんでしょう……体がすごく軽くなりました。

 心なしか肌も若返ったようにみずみずしくなっています。


 あれ?昨日の鍛錬で負った擦り傷が無くなっています。


「そう、戦闘じゃないライフ術です。コレを使ってライフシード領に新しい事業を立ち上げたいと持っています」


 徐々に復活してきたみんなに向けて、イアックさんが話しかけます。


「今、この領地には人の往来が少ない。それは端的に言うと来る価値が無いからです」


 ライフシード領の人口が著しく減ってしまったと言うのはみんな知っているところだ。でもそれは仕方ないことだと理解はしている。


「だから皆さんにはライフシード領を訪れる価値そのものになってほしいと思っています」


 その話はライフアーツと同じくらい夢と希望のあるお話でした。私はまだまだライフ術の真価を知らなかったみたいです。

 

「ライフヒーリング、ライフリペア、ライフアライブ、この3つを主軸としたウェルネス施設。これを新しい事業として立ち上げます。皆さんにはそのオープニングスタッフになって欲しいんです」


 私は確信しました。私たちはライフアーツがなくても違う方面で活躍できる。凹む必要などないのだと。

 

 私は安心しました。私たちの希望はちょっとやそっとで揺らぐようなやわなものではないのだと。


「すごい!」

「俺たちがこの領地に新しい価値を生み出す……」

「やります!やらせてください!」

 

 先程お試しでと言ってかけてくれたライフ術の効果でしょうか、それとも私の心の迷いが晴れたからでしょうか。頭がスッキリとして晴々とした気持ちです。

 

「ありがとう。それじゃ今後の方針を含めたもっと詳しい話をするね」


 私はイアックさんの説明を一言一句聞き逃すまいと集中するのでした。

 

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