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26話 笑顔で行ってきます

「もういい!!勝手にすればいいじゃない!!」

「えええ!?リナ様!?」


 突然リナ様が怒り出して、駆け出して行ってしまった。

 今の会話、何か悪いところあったかな……。また何かしくじってしまったのか……。会話って難しい。


「何事!?リナちゃんの大声が聞こえたと思ったら泣きながら走り去って行ったんだけど!?」

 

 リナ様の大声を聞きつけたのか、シドが様子を見に来た。

 え……リナ様泣いてたの……?これ俺が泣かしたの!?さっきの会話のどの辺に泣かしちゃう要素があったの!?わからない。わからないよおおおお(心泣)


「俺にもよくわからないんだけど、さっきシドに話した健康を売る新事業に絡みたかったみたい」


 さっきの会話からわかるのはこのくらいだ……。

 

「困った。リナ様は学園に戻るんだし、流石に新事業を一緒にやるのは不可能だよなぁ。何とか機嫌を直してもらう方法はないものか」

「そう。リナちゃんも複雑な心境なんでしょうね」


 死ぬ気で頑張った半年を終えて晴れて学園に戻れるのになぁ。

 

「ねぇシド、もしかしてリナ様は学園に戻りたくないのかな?」

「それはないでしょうね。あの子は学園に戻ること自体嫌がってないわ」


 だよね。リナ様が学園のことを少し話してくれたことがあるけど、大変だけど頑張るんだって前向きに話してたし。

 

「実際のところ、リナちゃんは勉強は不得意よ。魔法もそんなに上手とは言えないし、学園では肩身が狭い思いをしてるわね」

 

 でもね。と続けて話すシド。

 

「学園には姉のミラちゃんがいる。ブレス持ちとして特殊な立場のミラちゃんの力になりたいと言って、入学しても卒業が難しいとされる王都の学園に入ったのよ」

 

 そうだったのか。リナ様は苦労すると分かっていて尚、王都の学園に入ったんだな。

 

 学園とミラ様にそこまでの強い想いがあるにも関わらず、それでも新事業に絡みたかったのか。

 

「よほど楽しそうに聞こえたんだろうなぁ」


 でもまだ具体的に何をやるって言ってないはずなのになぁ。どっかで誰かから聞いたのかもしれないな。

 

「それはそうなんだろうけど、それだけじゃないわねきっと」

「???」


 どゆこと?

 

「まぁ分からないか。本人だってしっかり自覚してなさそうだしね。心に余裕が出てきて意識し始めたってところかしら。何処の馬の骨ともわからないやつなら断固反対したけどイアックなら許しちゃうわ」


 何だかニヤニヤしだすシド。ニヤけた面がムカつく。

 

「…………?何言ってんだこのオカマ」

「よーしいい度胸だ表出ろ。いっちょ揉んでやるわ」


 青筋浮かべて笑顔を作るシドを見て、めんどくさいので全力で逃げた。


 ◇

 その後、冷静になったリナ様と表面上は仲直りしたのだが、お互いにどこか気まずい空気が漂っていた。

 

 俺は何が悪かったのかわからないでいるのでそれが原因だ。


 何が悪かったのかわからないけどとりあえずごめんなさい。なんて言う状態では本当の仲直りはできないのだろう。

 

 リナ様はリナ様で反省するところがあるみたいで何だかしおらしい。これも微妙な空気感の原因かもしれない。


 シドが勉強を教えてあげれば仲直りできるというので一緒に座学の勉強をした。

 

 今までもちょいちょい勉強を見てきたけど、おそらく半年の遅れを取り戻すまでは行ってない。


 リナ様は勉強が大分遅れていることを気にしていたので、かなりの時間を家庭教師に費やした。

 みっちりやったおかげで大分遅れを取り戻せたのではないかと思う。

 

 毎日勉強をする日々の中で、お互いの間にあった微妙な空気が薄れていったのも良かった。

 

 シドの言う通り、自然に仲直りができたのかな。


 

 そして明日はついにリナ様が王都に旅立つ日だ。

 

「明日はリナ様が出立する日だな」

 

 いよいよとなって途端に寂しさが込み上げてくる。

 

「……なんだか寂しいな。せっかく仲良くなれたのに……」

 

 明日の朝から出発だし、後はもう見送りの時くらいしか話す時間はないだろう。


「後はもう行ってらっしゃいを言うだけ……なのか。何か……俺にしてあげられることはないのか」


 1人悶々と考えていると、自室の窓の外に綺麗な青い鳥が近づいてきた。


 夜なのに鳥?


 不自然さを感じてはいたが様子を見てみると……。

 

 あれは!

 

「アオコ!」

「ピィ」

「アオコ!アオコじゃないか!久しぶりだ。よくここがわかったね」


 一度は別れた俺の友達、「」神鳥レガのアオコがそこにいた。

 あの時は群れの長としての責務があるので俺とは一緒に来れなかった。


「アオコ、群れのことはもういいのか?」

「ピィ」

「そうか。そう言えばそろそろ長を交代するところだったんだよな。それがちょっと早まっただけか」


 神鳥レガは一度群れの長になっても数年で交代する習性を持つ。長を経験することで個を強化し、それを繰り返して群れ全体としての強さを高めているのだ。

 

「それにしてもよくここが……あ、羽のネックレスが光ってる」

「ピィ」

「なるほど、これを持ってたからアオコは俺の居場所がわかったのか」


 不思議な羽だ。これはどう言う原理なんだろうか。興味が尽きない。


「群れの長は譲ったとしても、群から離れても良かったのか?」

「ピィ」

「なるほど、俺のそばにいてくれるのか。ありがとな」


 アオコは優しいやつだ。慣れない土地で俺が寂しい思いをしていると思ってきてくれたんだろう。


 アオコとの友情に感動してじーんとしていたが、自分のネックレスとアオコの綺麗な羽を見ていいことを思いついた。

 

「なぁアオコ、お願いがあるんだ」



 

⭐︎リナ視点

「リナちゃん、頑張るのよ。それとミラちゃんのこと、よろしくね」

「うん……」


 ついに王都へ立つ日が来てしまった。

 私は結局自分の中に湧いた黒い感情の正体がなんなのかわからなかった。

 

「リナちゃん、イアックとの勉強はどうだったかしら?学園に戻っても周りについていけそう?」

「大丈夫よ。まだちょっと自信ないところもあるけど、イアックが丁寧に教えてくれたから」

「そう。それは良かったわ」


 イアックは本当に親身になって勉強を教えてくれた。本当にあいつはいい奴よ。

 

 だからかな。寂しくて仕方ない。このライフシード領を離れたくないって思ってしまっている。

 でもそれはダメね。私は学生、学園で勉強して、ミラお姉ちゃんの力になってあげなきゃ。

 

 でも……せめて旅立ちの前にイアックに会いたい。それなのに肝心のイアックがいない。

 

 まさか……私に怒って見送りに来てくれないつもりなんじゃ……。

 

 そう考えて心がダークサイドに落ちそうになっているとやっとイアックが現れた。

 

「リナ様!」

「イアック!」

「イアック遅いわよ」

「ごめんなさい。ちょっと準備に手間取ってしまって。昨日の夜に思いついたから材料を朝かき集めなきゃいけなくて」

 

 イアック、汗だくだ。朝食の時も料理はあったけどイアックはいなかったし、そんな朝からどこ行ってたのかな。

 

「何してたの?って言うかその肩にいる子はどしたの?」

「この子は俺の友達のアオコです。俺を追ってここまできてくれたんですよ」


 イアックの肩に手のひらサイズの青い鳥が乗っている。ころっと丸くてとても可愛い。

 

「可愛い」


 ちょっとだけ触らせてもらえないかしら。

 

「ちょちょちょちょちょおま、それ」


 突然挙動不審になるパパ。何でそんな顔してるのよ。

 

「リナ様、これを」


 イアックが渡してきたのは綺麗な青い羽のネックレス。イアックがつけているものとお揃いかな。

 

「これ、その子の羽?」

「はい。アオコの羽はとても丈夫で全然劣化しないんです。それに青い羽は《正しい道を歩んでいる》と言うメッセージなんだそうです」


 え?それすごく素敵、青い羽にそんな意味があるんだ。

 

「正しい道……。それじゃ、私がここに戻ってきて、色々あってまた学園に戻るのは、正しいってことなのかな」


「俺はそう思います。昨日アオコと再会したのも、リナ様にネックレスを贈ることにしたのも、完全に偶然なんですけど、だからこそリナ様が今正しい道を進んでる証拠なのではないかと思います」


 何でだろう。イアックと話しているとどんどん気持ちが前向きになっていくのがわかる。さっきまでの暗い気持ちが嘘みたいに晴れていく。

 

「それにシド曰く、結構なご利益があるらしいです。様々な良くないことから守ってくれるそうです」

「そうなんだ」

「ちょちょちょちょちょそれ本物じゃない!?そんなことしていいの!?」


 パパ超うるさい黙ってて。

 

「イアックありがとう。本当に嬉しい。大切にするね」


 自然と笑顔になる。こんなに嬉しいプレゼントはいつ以来だろう。

 

「リナ様その……この前はごめんなさい。新事業のこと、リナ様にもきちんと話をしておいた方が良かったですね」

「ううん。この前のことなら悪かったのは私よ。ごめんねイアック」


 きちんと心から謝れた。それに黒い感情は湧き上がってこない。今ならちゃんとイアックに頑張ってって言えそう。


「頑張ってねイアック。それで今度戻ってきた時は私にも手伝いさせて」

「わかりました。本当は、学園に戻るリナ様に余計な心配かけたくなかったんです。ずっとリナ様に頼ってばかりでしたから」


 イアック、そんな風に思ってくれてたのね。

 何でもできるすごいイアックが私を頼りにしてくれてる。何だかそれが誇らしい。

 

「私こそ感謝してる。あんたがきてから目が回るような、それでいて最高に楽しい毎日だった」

「ありがとうございます。俺も楽しかったです」


 本当に楽しかったなぁ。


 (おい、そろそろ出発の時間だぞ、誰か言って来いよ)

 (嫌だよあの空間に飛び込めるわけないだろ)

 (シド様お願いしますよ)

 (えええ!?あたしなの!?娘の青春を邪魔したくないんだけど……)


 ……何だか後ろでシドと御者兼護衛の方々かボソボソ話してる声がするわね。

 

「リ、リナちゃん?そろそろ出発の時間よ」


 ああ、もうそんな時間なのね。

 

「リナ様、またお会いできる時を楽しみにしています」


 ううう……やっぱり名残惜しいよ。あ、そうだ。

 

「手紙、よこしなさいよ」

「え?」

「サボってないか確認するから手紙出しなさい!毎日!」

「えええ!?毎日は流石にちょっと……。それにサボりませんよ」(少ししか) ボソッ


 あ、何よその顔、私のささやかなお願いが聞けないって言うの?

 私は頬を膨らませて抗議の顔を作る。

 

「……わかりました。毎日は無理ですが小まめに手紙出しますよ」

「それでよし!」

 

 これで心残りはない。


「イアック、パパ、行ってきます!」


 さぁ、私も頑張らなきゃ!







◇馬車を見送った後

「イアック、あんたって結構なたらしだったのねぇ」

「何だよそれ」

「リナちゃんのあんな笑顔見たことないわよ。あたし親なのに」

「ああ、行ってきますの時ね。すっごい可愛い笑顔でドキッとしたよ」

「そう言うのは本人に言いなさいよ」

「何だよ話振ってきたのそっちのくせに」

「そうだけどね……はぁ。あんたのことだから他意はなくてただ感謝とエールを伝えたかっただけなんでしょうね」

「他意?」

「……あんたってホント恋愛ビギナーよね。もっと精進しなさい」

「???」

「はぁ……………………」クソデカため息

 

 

お読みいただきありがとうございます。

毎朝6時更新頑張ります。


一旦リナが離脱です。

もちろんまた登場するので少々お待ちください。


またお越しいただけたら幸いです。

よろしくお願いします。

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