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夢見たアンドロイド  作者: 向井葵
1年目 夏の日記
66/69

第41話「業務ログにて記録」

アンドロイドのメイド「ヒナ」は、日々の業務をこなし、決められた動作を繰り返す。そして、業務を終えた後、その日の出来事を日記に綴る。

壊れた時計、見慣れない来客、うっかりこぼした紅茶——ただの記録にすぎないが、そこには確かに「今日」が刻まれている。


これは、感情のないメイドが紡ぐ、静かな日常の記録。ただそれだけの物語。

2025年7月11日(金)


起動時より、機体動作に不安定な挙動を確認。脚部は動きが鈍く、腕の保持力にもばらつきあり。視覚センサーには時折ノイズが走り、聴覚センサーは一部の音声を認識できていない。

朝食準備を開始。トーストは焼きすぎて黒化、卵は攪拌中に制御が乱れ飛び散った。皿に残った量は一口分のみ。


「……これは、食べられん」

「申し訳ございません、ご主人様。センサーが正しく作動せず、調理処理に支障が出ております」

「今日は何もしなくていい。動くな」

「かしこまりました。動作制限モードに移行いたします」


以降、清掃・洗濯を含む全業務を停止。室内にて待機。


夜。玄関ドアの開錠音。ご主人様が帰宅。手にはコンビニ袋。中には弁当と飲料。

電子レンジにて弁当の加熱を開始。待機中の当機を横目に、ご主人様は床に残っていた卵片に気づき、膝をついて静かに拭い始める。ぞんざいな仕草に見えるが、拭き残しはない。


「……お前が悪いわけじゃない」

「ご主人様のご配慮、深く感謝いたします」

「それより、どうだ?今朝よりはマシか?」

「会話機能には大きく支障はございません。ただ、身体動作には誤差が残っており、精密な動きは困難です。各センサーは依然として異常を示しております」

「そうか」


弁当加熱完了。ご主人様はテーブルに腰を下ろし、ひと口含んだ後、表情を動かす。


「……久々にコンビニ弁当食ったが、まあ、食えなくはないな」

「お口に合わず、申し訳ございません」

「気にするな。温かいだけマシだ。……味は、ぼんやりしてるが」

「少しでも快適であれば、安心いたします」

「明日、朝一で実家行くか。母さんに連絡してみる」

「承知いたしました」


ご主人様、携帯端末で通話を開始。母上様との連絡と推定。内容は確認不可。


「今日はもう寝とけ」

「かしこまりました。スリープモードに移行いたします」


業務完了

本日の記録形式を、日誌ではなく業務ログへ移行。

後日、日誌にて転記を予定。


また、次の日記で——

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