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夢見たアンドロイド  作者: 向井葵
1年目 春の日記
16/69

第16話「穏やかな来訪者」

アンドロイドのメイド「ヒナ」は、日々の業務をこなし、決められた動作を繰り返す。そして、業務を終えた後、その日の出来事を日記に綴る。

壊れた時計、見慣れない来客、うっかりこぼした紅茶——ただの記録にすぎないが、そこには確かに「今日」が刻まれている。


これは、感情のないメイドが紡ぐ、静かな日常の記録。ただそれだけの物語。

2025年5月22日(木)


玄関の開閉を確認。靴音、やや重い。疲労を推測。

「ただいま」

「おかえりなさいませ」

上着を受け取り、室温を調整し、飲み物を差し出す。

スマホから振動を検知。ご主人様、応答。

「おう、どうした……え?今から?」

声色、僅かに驚き。会話内容分析。


私は記録する「電話相手の来訪。迎え入れと接待を準備」


「まあ、上がれよ」

来客対応開始。

「こんばんは。お邪魔させてもらうね」

手土産は焼き菓子の詰め合わせ、上品な包装が施されている。

「ちょっとしたお礼に」と友人が差し出す。

「いらっしゃいませ」

適切に保存し、茶菓子の準備を開始。

湯を注ぎ、茶葉の香りが立つのを確認し、温かい茶を差し出す。

「どうぞ」

「ありがとう。温かいお茶が嬉しいな」

「どうぞ、ごゆっくり」

友人は茶を飲みながら、談笑を始める。


「そういえば、駅まで送ってもらった時のこと、覚えてる?」

「俺は聞いただけだが、お前は大変だったらしいな」

「はは、今だから笑えるけど、乗り換え続きで本当に大変だったよ」

「車で事故って、バイクに乗り換えたらそれも故障してダメで、最後は自転車まで壊れちゃって…」

「ペダルが異常に重くなりました」

「そうそう、何とか漕いで駅まで行けたけど、あれはもう全身運動だったよ」

「ご主人様の指示に従い、最適な手段を選択しました」

「メイドさんには本当に助けてもらったよ。あのときは焦ったけど、なんとか間に合ったしね」

「……災難だったな。それで、今日は一体どうしたんだ?」

「そうそう、新しく家を建てたんだ」

「ほう」

「今週末にホームパーティーを開くんだけど、ぜひ来てほしいな」

「俺はそういうの苦手だ」

言葉は淡々としているが、わずかに眉間へ皺が寄るのを確認。

「気楽な集まりだから、大丈夫だよ」

友人は穏やかに促すが、ご主人様はすぐには応えない。

沈黙3秒。

「……ああいう場は、落ち着かなくてな」

視線が揺れ、指が無意識にテーブルの縁をなぞる。

「大勢の中にいると、なんか…」

言葉の切れ間。続く内容を推測。

「そうだったんだね」

友人は微笑を崩さず、優しく頷く。

「無理しなくていいよ。でも、少しだけ顔を出してみるのも悪くないかも」

ご主人様はしばらく考え込み、短く息を吐いた。

「考えとく」


友人帰宅後、

「お前は行きたいか?」

「ご主人様のサポートが私の役目です」

「……じゃあ行ってみるか」

端末操作を確認。メッセージ送信。


ご主人様は腕を組み、少し考えてから口を開く。

「お前は知らないかもしれないが、アイツとは幼馴染なんだよ」

「認識しました」

「性格は正反対だけどな。昔から妙に気が合う」

「幼少期からの関係性が維持されているのですね」

「まあな。だから、たまにこうやって顔を出してくる」


私は記録する「ご主人様と友人の関係性。対照的な性格と長期的信頼の形成」


業務完了。

今日も日記を書き終えた。記録は完了。机の上を整え、椅子を元の位置に戻し、次のルーティンへ移行する。

紅茶を淹れ、カップを持ち、窓辺へ向かう。夜の街は静かで賑やかで、遠くの美しく瞬いている。

息をつき、一口飲む。適温。今日も紅茶は美味しい。

業務終了まで、あと10分。最終点検を終え、私は記録する。

「本日、業務終了。異常なし。」

そして、静かに照明を落とす。


また、次の日記で——

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