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第9回 皇国最高会議

おまたせしました!

 


「……時刻0625をもって敵の大隊規模勢力の撃滅を第117歩兵連隊臨時中隊戦闘群と第3/73機械化歩兵大隊戦闘団が第4軍へ報告致しました」


 重厚な扉に閉ざされた地下会議室。そこには円卓が据えられ制服姿の高級士官や背広姿の者達が詰めていた。背広の者達は黄金の菊が意匠されたバッジを付けていた。


「少し前線が揺らいだが持ち直したか取り敢えずは崩壊の心配は無くなったか。那古屋を奪われると兵器生産が滞るからな」


 そう発言したのは皇国の経済産業大臣だった。ここは皇国、首相官邸の地下指揮センター。今現在ここには政府上層部が集まっていた。


「那古屋だけで10式戦車改が月産60両、F-35が月産12機、21式小銃は2000丁にほかetc……濃尾平野の農業生産もあるから奪われると更に勝利が遠のく」


 那古屋、皆が知る名古屋を中心とする中京工業地帯はいまや二十四時間体制で兵器を始めとする工業生産物を生産し、某車会社を頂点とした王国と揶揄された生産体制は凄まじい勢いで品物を工場から吐き出している。


「部隊の損害としては其々中隊戦闘群が64名、大隊戦闘団は34名程の損害です。戦線全体では第1歩兵旅団隷下の一個歩兵大隊が戦闘能力を喪失、輸送ヘリが4機と無人機が12機撃墜されました」


「やはり戦線は小康状態か今の内に壊滅した第3軍の再編と失地回復のための打撃部隊を抽出しなければなりませんな」


 戦況図を見る限りでは確かに戦線は小康状態を維持していた。相手が部隊を再編させているのかそれとも新たな攻勢の前ぶりか。


「まぁ前線の話はこれぐらいにして全体の話に移りましょう。産業大臣、現状報告をお願いします」


 そう口を開いたのは皇国内閣総理大臣臨時代理の長谷川達郎だった。現在の皇国は立憲君主制を採用しているから実質上の国のトップである。


「閉じた鉱山の再稼働、試験採取だった海上資源採掘場の本格稼働を進めておりますが、元々取れなくなって閉めた鉱山ですからね採掘量は雀の涙です。海上採掘場は技術的にまだまだ難しい様ですが、少しづつ改良を進め僅かながら採掘量が増えてると報告がありました。」


 現在皇国は慢性的な物資不足に陥っていた。軒並み物資を軍事方面に回しているのが理由ではあるが、その物資を作りあげる原材料がない。原材料を輸入に頼っていたツケが回ってきたというよりはそもそも国内でとれる量が少なく。仮に採掘するにしても売り上げよりも経費が多く赤字だ。


「前々からの貯蓄……仮にまた世界大戦でも起こったら輸出入が滞り原料が無くなるのを危惧して政府主導で貯めてた資材がまさか異星人との戦争で使うことになるとわな」


 今皇国の産業に使われている資材の多くは政府備蓄で蓄えられていた物だった。例えば石油であったりレアメタルなどが挙げられる。鉄などはどうしているかと言うと鉄鉱石から加工して鉄インゴットとして海外などに輸出されるのを港や倉庫などで待っていた品物を買い上げた。


 ぶっちゃけると強制的にそれは行われた。それしか皇国には道が無かった。それに海外に輸出なんてできないのだから倉庫の肥しになるよりは使わないと無駄でもあった。


 それでも足りなくなるのは明白だったので国中の屑鉄の買い上げや採算が取れなく閉めた鉄鉱山を再稼動させてなんとかしようとしている。


「電気に関してはほぼ全ての火力発電所は停まっています。今は水力と再稼動させた原子力、それと少ないですが風力などの再生可能エネルギーです。火力に関しては炭鉱の再開と海上石油採掘場から供給が始まり次第再稼動の予定です」


 石油関連は現状、軍事と産業に振り向けられ国民は車に乗るガソリンすら枯渇していた。しかしそうでもしなければ軍はその足を折られ、産業はなにもできずに腐り落ちてしまう。物流は主に鉄道を主軸に地方自治体が各地の物流会社を統制し物を運ぶ。


「火力の再稼働と並行して燃料を物流関係に回す様にしてください」


 物流は国を動かす血液だ。無くしてしまうとすぐに末端から腐る。故に国もそれを承知だからこそ貴重な燃料を各社に分配していた。


「食料関係は完全配給制で全国で配給してます。しかし首都を含めた都市部では不満の声は段々と増えてます」


 人間の三代欲求はいつどんな時代でさえ人々の根底から離れない。特に人の生存に直結する食欲は。配給制が始まると自由な食事はなくなる飽食を享受していた国民には辛い物だろう。


「放棄された田畑の再開拓などに補助金を出して仕事が無くなった者達に仕事を与えよう食料増産は責務だ。そうえばだ九州はまだ持ち堪えているのか?」


「防衛ラインを熊本、宮崎まで下げて徹底抗戦するそうです」


 異星人達の母船が西方……中国地方に不時着し皇国は二分された。南方、九州に配置されている一個軍だけでは防ぎきれず九州は福岡、佐賀、大分を奪われ、長崎も陥落寸前だ。


「長崎は落ちるか」


「はい、現在第1海兵師団及び第3騎兵旅団の残存部隊が民間人脱出と物資積み込むの為に防御戦闘中です。長崎の地形を使い上手く攻撃を避け避難は計画通りに推移しております。撤退後は海兵部隊と防空部隊の一部が五島列島に他部隊は鹿児島を経由して九州防衛線に合流。佐世保の艦艇は一先ず鹿児島湾に退避する予定です」


 長崎が落ちるということは、佐世保が落ちるということだ。舞鶴も落ちているから、皇国海軍の鎮守府は横須賀と大湊の2つを残すのみとなった。それは即ち日本海の制海権が失われたということに等しい。


「そうか、日本海は危ういが太平洋はまだ制海権を保持している。補給や支援を欠かさぬようにして頂きたい」


 エビと呼ばれる異星人共の戦力がどれほどあるか、その全容は未だ分かっていない。ただ桃太郎県から内海を跨がりうどん県を覆う程の巨大な母船から考えるに10万は必ず以上はあるだろうと考えている。九州戦線が未だ保持しているからこそ敵は二正面作戦をするしかなく。それは戦力の分散を意味しそれ故に皇国は劣勢を膠着まで持ち込めることができていた。


「さて次は治安状況を確認しようか法務大臣現状報告をお願いします」


 会議は進み議論は加熱する。前線から遠く離れた安全な場所ではあるが、ここも国政という戦場の最前線であるのは違いなかった。






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