第10話 補給士官としてのお仕事
お待たせしました!
夜間戦闘が終わり残敵掃討も終えた後はまた通常運行に戻っていく。この戦闘が最後ではない数ある小競り合いの一つに過ぎないのだから。
第3/73機械化歩兵大隊戦闘団は後方に戻り休養に移り第117歩兵連隊臨時歩兵中隊戦闘群は戦闘群体制を解き第二中隊として原隊に復帰した。
第2中隊と増強のために麾下に入れられていた第7中隊第2小隊、対戦車小隊、機動戦闘車小隊と段列部隊の人員は数日の休暇を与えられ、更に戦闘の疲れを癒すために2日後方で休暇を過ごすことが許された。もちろん緊急時に戦力を低下させないように交代交代にだが。
その人員を送り出すために輸送小隊がトラックを用意し兵士たちは荷台の中で何をしようかと話し合っていた。やれ酒を飲みたい腹一杯飯が食いたい女を抱きたいなどその欲を隠そうとしない。
普段一般では不謹慎だ隠すべきだと言われそうな者だが、戦場を潜り抜き死を踏み越えた者達に不謹慎だという者達こそ物を知らない薄弱者だ。彼等は生き延びたからこそ、そういう俗な言葉を話せるのだから。
そんな車列を見送る者がひとり。先の戦闘で臨時中隊戦闘群を指揮した117th iRの4科長である夜島覚少佐である。
「とりあえず休暇の第2陣は送り出したか……」
彼も本来なら休暇できる身分ではあったが、臨時中隊戦闘群の人員達の休暇計画を組み、輸送小隊の手配と足りない車両の手配、今回の戦闘報告書と損害報告書、消耗した武器弾薬の手配など仕事が山積みで休む暇はなく、休みという休みは戦闘が終わったあと半日泥のように眠ったぐらいで、起きた後は仕事が待っていた。
彼のいまの役職は第117歩兵連隊の4科長。つまりは補給担当士官であり平時にしろ戦時にしろ、これの戦場は机の上だ。山の様にくる書類を片付け、部隊が万全に戦える様に物資を枯渇させない様にする。それが彼の職分だ。
と言っても彼は好き好んで補給担当という部署にいるわけではない。彼はバリバリの野戦指揮官であるのは疑いようがない。その実力は先の戦闘で部隊内に示された。
「さて次は損失したUAVの補充書類を書かないと……」
元町役場が置かれていた建物に入り4科に割り当てられた場所に戻る。と言っても町役場の職員達が使っていた一区画をそのままつかっているだけだが。戻ると科員が書類の山に埋もれながら手を動かしている。一番奥に置かれた科長の机にも山の様な書類が溜まっていた。この世は文書主義、すべての事例は文書にしたためる必要があり、また何かを要望する時は必ず文書を作成しなければならない。煩わしいことこの上ないがこれも世の流れ、ルールなのだから守らなくてはならない。それに文書を作ることによってスムーズに要望を伝えたり物事を判別できるのだから一概に悪いとは言えない。
「科長、弾薬の消耗補給の書類ができました」
「ん……小銃弾、機関銃弾、軽迫の数字はこれだけ増やすのと中多と重迫のはこれだけ追加してくれ。名目は『先ガ戦闘ニヨリ弾薬ヲ想定ヨリ消耗シタタメ』でいい」
さらさらと追加分の数字を書いたメモと書類を部下にかえす。彼は分かりましたと言って席に戻る。
「科長、情報小隊の《天鳥》が二機損失したそうでその補充と追加に4機欲しいって言ってく来たのですが……」
「補充分はなんとかねじ込むが追加かぁ……損耗を抑えるためにローテーションを組むという名目でやってみるが期待しないでくれと情報小隊に伝えてくれ。あ、あと4科は打出の小槌じゃないともな」
小型UAVは砲兵の着弾観測から先攻偵察、監視など使用用途は多岐に渡る。そしてその使い勝手の良さに比例するかの如く損失率が高い。撃ち落とされるのほ勿論だが、鳥に当たったり木々にぶつかったり、突風にあおられて操縦不能で墜落など理由は様々だ。悪い言い方たがラジコン飛行機の延長線場にある代物だから仕方ないとも言える。
元々小型UAVは消耗品みたいなものだから失うのは想定の範囲内、しかし現状どこの戦線でも小型UAVは大人気、頑張って消耗分は持ってこれても追加は望み薄だろう。
「科長、第四中隊から人員補充の要望が……」
「それは4科じゃなくて1科の仕事だ。一走りいって書類渡しに行ってくれ」
そんなこんなで書類を捌いているとある書類を部下から手渡された。
「科長……第1歩兵旅団から新規の野戦病院と補給デポの設立に関する協力要請が来ています」
科員からはまたこれですという態度が見て取れた。
「またこっちかこういうのは第4軍に送るもんだぞ……分かった書類はもらっておく。俺は連隊長に会ってくるから後は頼む」
夜島少佐がそういうと席を立ち連隊長室へと向かう。科員達は自分達の長がある程度まで離れたのを見越して話し始めた。
「ふぅー疲れた……なんで1th iBの連中はこっちばっかりに案件を……というか夜島少佐に持ってくるんですかね」
一人の若い軍曹がぼやいた。こういうことは今に始まった事じゃない。
「ん?ああ……お前は知らないのか」
そう答えたのは長年4科にいる兵卒上がりの准尉だった。
「准尉は何かしってるんですか?」
「知ってるというかなんというかな有名な話だ。我らが4科長と第1歩兵旅団の旅団長閣下の確執をよ」
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