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光差す道なの!

 

 アカバンの巨人が流星を攻撃しても、代わりに荒野に潜む亡霊が破壊され、流星のAGIが50上昇する。

 しかし、攻撃しなくて10秒後には自動的に消滅し、流星のAGIは50上昇する。


 つまり、召喚が続く限りは流星がやられることもないし、AGIの上昇も途切れることはない……まさに課金の暴力だ。


「でも流星のHP・MPって既に小数点以下じゃないの?」


 たしか亡霊のデメリットとして、ログアウトするまで永続的にHP・MPは半減したはず。

 それが何体分重なっているのかはわからないけど、HPが1以下になった時点で死亡判定になるはずだけど。


「わたしにはわかるわ。お兄ちゃんの装備を見てみなさい」


 言われてステータスを……。


「遠すぎて見えないよ!」

「もぅ……これだからルーキーは。いつもの装備と2箇所違うでしょ? あれはHP回復用の装備よ」


 何でも今の装備セットだと、秒でHPが5回復するらしい。

 普段は秒でMPを8ほど回復しているけど、今回の場合に至っては全てHP回復に変更してあるそうだ。


「こんな遠くからよくわかるわね」

「お兄ちゃんの装備セットは全て把握済みだからね!」

「えぇ……」


 決闘レースに勝つための敵情報として、よね。多分、そうだと思いたい。


 今の流星はHPが減るよりも早く回復……例えHPが小数点以下になろうが、回復量は固定なので半減するHPも固定になる。

 システムの穴をついた作戦だとドヤ顔でデス子ちゃんが教えてくれた。


「ほら、もうすぐお兄ちゃんの課金が止まるわ」

「えっ! あっ、いつの間にか残り5枚まで減ってる」


 相変わらず出てくる亡霊は数体だけど、さっきからずっと一人で荒野に潜む亡霊ばかり召喚していたらしい。

 ちなみにアカバンの巨人は、流星のいる空間……草の残した『ダークネス・デスレイス』の周囲を掘って、流星が身動きを取れないようにしていた。


【ようやく貴様のターンも終わりというわけか】

「ドロー! レジスターをチャージし1000払う! 荒野に潜む亡霊を召喚! そして同じく……」


 たまにドリンクを飲むけど、流星が一人でバンバンやっていた作業も終わりが見えてくる。

 最後の1枚をドローした後、荒野に潜む亡霊が消えたら身代わりがいなくなるけど、ここで勝負を決めるのだろうか。


【これで最後の1枚。俺が薙ぎ払えば貴様などすぐに消え去るわ!】

「ドロー! ……荒野に潜む亡霊を召喚。さらに、3体を召喚する!」


 ブォン。

 荒野に潜む亡霊が3体現れ……先に召喚されていた亡霊は10秒経過ごとに自動消滅する。

 残り、3体。


【ほう。折角だ、30秒待ってやる】

「随分と余裕だな。その選択を航海することになるぞ?」

【神故に、貴様が縋る希望ごと打ち砕いてみせるわ!】


 そして、流星はドリンクを飲む。

 HP回復ポーションにしては色が違うけど、何か理由があるのだろうか?


「教えてデス子ちゃん!」

「知らないわ。それよりも見て! あれ」


 流星の周りにいた荒野に潜む亡霊。

 あろうことか、流星は自動消滅を待たずに身代わり要因を全てパリンッ! と自害させたようだ。

 これで流星のAGIは上昇したけど……攻撃がかすっただけ、下手したら何か当たっただけでも死にそうだ。


【血迷ったか! 30秒待ってやることに違いはない。が、実につまらん終わりだぞ!】

「安心しろ。既に勝利への道筋は見えている」

【何を言っている。貴様のレジスターはゼロ。あと数秒後に貴様は神の拳でこの世界から消え去ることになる】

「フッ……スピードスキル発動『最速狂の魂』!」


「あ、あのスキルはっ!」

「知っているの久我!」


 いつの間にか久我が戻ってきていた。

 これで久我がゴールしたら1位は久我になるけど、彼はそんなつまらないことをする人物ではないだろう。

 現に私たちが周回遅れにならないよう、一歩引いた場所から話しかけてきた。


「あのスキルは自身のAGIを2秒間だけ倍にすることができますが、自身に9999の反動ダメージという捨て身の一撃必殺! しかし妙ですね。使える条件として2%でかかる状態異常『狂信状態』でないと使用できないはずですが」


 狂信状態。

 それはその名の通り、自我を失い一点のみに特化するという状態異常。

 滅多にならない異常だけど、極稀に回復アイテムで罹ることがあるみたい。

 たしか何かのステータスを回復するドリンク……あっ。


「もしかしてお兄ちゃんが飲んでいたのって」

「おそらく狂信状態にかかるための前準備でしょう。あの状態異常は一度死ぬまで解除されません。それに自我を保つにはSAN値、いえMNDが300を越えている必要があります。彼のAGIは既に8000超え、例えアカバンの巨人に半減されたとしてもその攻撃は防がれないでしょう」


 そんな。

 流星のやつ、そこまで考えて……っ!


「これで終わりだ。この一撃……俺自身が光差す道となる! ゴッド……ウインドォォォォ!!!」



 流星のいた場所から一閃。

 私たちには速すぎて捉えきれなかったけど、遥か後方で何か煌めいたのは見えた。


 そして。


【グ、グォォォオオオオオオオ!!!!】


 アカバンの巨人に、風穴が穿たれていた。



 ――大規模レイドボス『アカバンの囚人』の消滅を確認。

 ――イベントを終了します。報酬は次回メンテ明けに。

 ――休暇返上で集計します。

 ――チッ



 おい舌打ちまでアナウンスするな。


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