無理ゲーに対する有効打なの!
流星はアカバンの巨人へと立ち向かおうとして……私と一瞬だけ目が合った。
そしてエンジンを吹かしてターンすると、フリードもろもろを無視してこちらへと走ってくる。
ちょ、そんなことされたら注目されるじゃないの!
「タカマチ、どうしたんだ? お前は決闘中だと聞いたが」
「あ、あとちょっと動けないのよ。放っといてくれる?」
「ああ。あいつらが走ってきたところを見ると、トップはお前らしい。そのまま走り抜けろ」
それだけ言い残して、アカバンの巨人へと向かっていく流星。
けどおかげでアカバンの巨人と『西部劇のロード』の注目を集めているんですけど、どうしてくれるの?
まだ私、動けないんだけど。
「お前の相手はこの俺だ。俺たちの絆がお前を倒す」
【チームワークなど戦いの枷となるだけだ。この俺が証明してやる】
「残念だがもう俺らにできることはねェ……流星、あとは頼んだ」
「お前たちのバトン、確かに受け取った」
【逃さんぞ!】
穴から這い出てきたばかりだというのに、アカバンの巨人はその巨腕を周囲を薙ぎ払うように振るう。
……包囲していたプレイヤーの、3分の1が消し飛んだ。
倒したと油断していたこともあってか、MPがなくなっていた彼らは一瞬でやられてしまう。
「なんて威力なのよ」
「あら、タカマチじゃないの。こんなところで見物して、随分と余裕のようね」
「え、デス子ちゃん?」
気づくとすぐ側にデス子ちゃんがいた。
さっきまでそこそこ離れていたのに、いつの間に。
ご丁寧に待ってくれなくても、そのまま抜かしてくれたらよかったのに。
「ちなみに久我は先にいったわよ。現時点での最下位は貴方かわたしね」
「私が動けるまで待ってくれたの?」
「いいえ。ここでお兄ちゃんの活躍を見届けるわ。何よりも大事なことだもの」
「さいですか……」
すでに私は眼中にないみたい。
その瞳は流星に向いていて、いつものデス子ちゃんで安心した。
私も動けるようにはなったけど、決闘にそこまで興味はないから一緒に見学していようかな。
久我が勝手にゴールするでしょ。
「てめェ! よくも仲間をッ!」
【フハハ! 見たか、これが絕望というものだ!!】
「許せねェ……今からでもありったけのレジスターを使って今すぐコイツを……っ流星!」
「あとは任せろ、と言ったはずだ」
怒りに身を任せ、今にも暴れだしそうなフリード。
それを流星がバイクごと立ち塞がって止めている。
その流星の手には……カードの束が握られていた。
「それはっ!」
「俺たちには勝利の女神がついている。このカードの束がその証明だ」
ちらっと街の方角へ視線を向ける流星。
そこには静かに佇む姫さんがいた。
けどあれって……。
「おそらく草が伝えたのね。それにしても、準備が早すぎるわ」
「事前に買ってあったのかもよ? 姫さんのことだし」
「それにしても、よくあんな大量にストックしてあったわね。さすが姫様だわ」
流星が持っているカード。
それはよくコンビニとかに売っているカード……このアヴァロン・トラジティ運営の会社のCLLカードだ。
レジスターを購入するためにはまずあのCLLカードを使用してチャージする必要がある。
それが束。
ざっと40枚くらいかしら?
金額にすると……恐ろしくて考えられない。
【そんなクズカードの集まりで俺を倒せると思うのか?】
「お前に教えてやろう。ゲームバランスの崩れた敵を倒すのは不可能ではない。バグでも対抗手段はある」
【それがお前の言う絆というやつか。面白い、やってみるがいい!】
そうして再びアカバンの巨人から腕が振るわれる。
しかし、流星は既に走り出しており、奴の射程内から抜けることに成功していた。
フリードたちも流星が敵をひきつけているうちに撤退したらしい。
なのでフィールドには、流星ひとり。
離れた場所に私とデス子ちゃん、どこかに久我がいるだけだ。
【どうした。逃げているだけではないか】
「ああ。おかげで見つけたぜ。さっき言ったな、バグにも対抗手段はあると」
【それがどうした?】
「見せてやる。これが、金の暴力だ!」
そうして、流星はある場所で立ち止まると勢いよくカードを引いた。
「ドロー! 俺はCLLカードを1枚使い、レジスターを4500チャージ!」
てっきり最高額だと思ったけど違ったらしい。
あんなに大量なら、最高額のほうがお得だと思うのだけど。
「そしてレジスターを1000使うことによって、このペット専用ガチャからモンスターを召喚することができる!」
【クズしか出てこないガチャに興味などないわ】
「ドロー! 荒野に潜む亡霊を召喚! このモンスターがいる限り、プレイヤーのAGIは50上昇する!」
ブォン。という音とともにモンスターがあらわれる。
けど薄くて、影がぼやっとみえるだけだ。本当にいるのかな、亡霊さん。
しかもいつかのトリさんみたいな効果なので、ハズレかもしれない。
「さらにレジスターを1000払い、ドロー! 俺は荒野に潜む亡霊を召喚する!」
ブォン。
流星の側にぼんやりとした影が増えた。
二連続で引くなんて、ツイていないかも。
いや、AGIが上がることを考えたら……憑いている?
「さらに1000払い、ドロー! 荒野に潜む亡霊を召喚! ドロー! 荒野に潜む亡霊を召喚!」
「よ、4連続同じモンスター?」
「いくらお兄ちゃんでも、そんな引きが悪いなんて」
デス子ちゃんがいうには、あのモンスターはAGIを50上昇させるかわりに、プレイヤーのHP・MPを半減させるらしい。
単体でなら良いけど、他のモンスターと同時に出てきたときは逃げろ、と言われるくらい厄介なモンスターだ。
例え召喚だとしても、プレイヤーのHP・MP半減はデメリットとして発動するはずとのこと。
「というか、4連続同じモンスターって、あれガチャでしょ?」
「ええ。☆3以上のモンスターしかでないはずだけど、☆4はともかく、同じ属性だけというのもおかしいわ」
確率的にも低いはず……そう、通常通りなら。
【フハハハ! 絆などと言っておきながら、出てくるのは雑魚ばかりではないか。クズを集めたところで俺に勝てるわけがないだろう】
「そいつはどうかな?」
【何?】
不敵に笑った流星は、カードを構えながら何かのアイテムを飲んだ。
「俺が引くのは荒野に潜む亡霊のみと決まっている。俺たちのスターライト・ロードは既に完成した」
【小賢しい!】
微動だにしない流星に、アカバンの巨人の拳が炸裂する。
「お兄ちゃんっ!」
「流星!」
しかし……そこにいた流星は、先ほどと変わらない笑みで奴を睨みつけていた。
「無駄だ。コイツらは召喚後10秒経てば消失する。そしてプレイヤーが攻撃された時、身代わりとして自身を破壊することができ、ステータスのメリットとデメリットはプレイヤーがログアウトするまで永続的に反映される」
【なるほど。しかし何度もソイツが召喚されるとは限らないぞ】
「さっきも言ったが、そいつはどうかな?」
流星が繰り返す。
そして、同じように荒野に潜む亡霊が4体召喚された。
これで、8連続。
【バカな! ありえんありえん! 非、科学的だ!】
「ここがどこだか忘れたか? この……黒い空間を」
流星が立っている場所。
そこは草がアイツにやられた場所で、半径1メートルのみ黒く変色していた。
てっきり草の中二スキルに侵食され場所ごと腐ったのかと思ったけど、流星いわく意味があったらしい。
「アイツが俺たちに残したスキル『ダークネス・デスレイス』は、この空間にとどまる限り亡霊モンスターを呼び寄せることができる。さらに」
【死ねぇぇぇ!!】
続ける流星を無視して攻撃するアカバンの巨人。
しかしその拳は流星まで届かず、代わりに荒野に潜む亡霊が1体、パリンッ! と消滅した。
「さらに、ペット専用ガチャから排出される亡霊は1種類のみ。☆3の唯一の闇モンスター……来い! 荒野に潜む亡霊!!」
……さらに、4体追加される。
流星の周囲がユラユラ揺れて不気味だけど、破壊されるたびに彼のAGIは次々に上昇していく。
「神だといったな? 俺たちの絆の前に、紛い物など不要だ」
【おのれぇええええええ!!!】
流星、やってくれるじゃないの。




