トドメのローテーションなの!
ようやく1周したこともあってか、街の入口から手を振っている姫さんが見えた。
『ここは私たちに任せるがいい。何、奴の足止めくらいはしてみせよう』
「それ死亡フラグ!」
飛んできたギルドメッセージにつっこみつつ、私と久我はデス子ちゃんの後を追っかける。
……アカバンの巨人は木偶の坊みたいにつったっているけど、これ抜かしても問題ないの?
「おっ、どうやら準備が整ったようですよ。姫様が足止めすると言ったのはどうやら事実のようですね」
「えっ?」
いつの間にか、街の外にはプレイヤーが溢れていた。
私たちがアカバンの巨人を引き連れて一周しているうちに、随分と賑やかになったものだ。
【ほう……この俺に歯向かうというのか】
「さっきの打ち合わせどおりだァ!! 俺ら『西部劇のロード』に協力した奴らには勝利と貢献度をくれてやるッ! 勝利はこの手に!!」
「「「「オオオォォォォオ!!」」」」
まるで包囲殲滅するかのように、奴を中心にして大勢のプレイヤーがその周囲を埋める。
【雑魚が何人集まろうが、所詮雑魚だ】
すでに私たちはアカバンの巨人の眼中にないみたい。
ちなみに私たちが包囲から抜ける際は、ドン引きというレベルでただ避けられた。
「どうやら彼らはここで勝負に出るらしいですね。それには我らが姫様も協力しているらしいです」
「私たちも協力したほうがいいんじゃない?」
「? 何をおっしゃるので? 我々は決闘の最中ですよ」
「あんたこそ何言っているのよ」
さも不思議そうにする久我はともかく、デス子ちゃんも走りを止める気はないみたい。
「レイドボスにかまけて決闘を中断するなど言語道断です。そもそも、我々の行うライディングバトルとは障害が多ければ多いほど盛り上がる決闘ですよ? その障害ごときに邪魔されたからといって負け惜しみするのは――」
「先に行くわよ」
語っている久我や包囲している人々は無視だ。
どう戦うのかは気になるけど、さすがに私たちがもう1周する間には進展しているわよね……?
街の半周を周った頃、アカバンの巨人がいる辺りで光の柱が昇った。
それは細い柱となり何本も昇り、光の檻となって閉じ込めるようにアカバンの巨人の周囲を狭めていく。
「あれは何なの?」
「説明しましょう! あれこそ『西部劇のロード』率いる精鋭軍団が成すスキル、光明の罠です。しかしあれはまだ序の口。この調子ならちょうど我々が着くタイミングでフィニッシュでしょう」
「何なのよそれ……聞くより行ったほうが早いわ!」
「ああっーとぉ!! ここでタカマチ選手、マジカル・フルバーストを発動したぁ!! どうした、ご乱心かァァァ!!」
「お先ー!」
どうせ周回することには変わりない。
なら、今は全力で駆け抜けてその光景を見逃さないようにしなきゃ!
途中でデス子ちゃんも抜かし、暫定トップで街の周囲を2周した。
動けなくなることも加味して、そこは慣性でカーブするように調整する。
そうして、アカバンの巨人を取り巻く光景が再び見えてきた。
【ええい! 小賢しい雑魚どもめが!】
「団長、もうすぐ2人の準備も完了です!」
「さって、いっちょやるかァ!!」
どうやらアカバンの巨人は光の檻に閉じ込められ、身動きが取れないらしい。
けれどそれは『西部劇のロード』も同じ。
スキルを発動するために十数人がかりだし、何よりステータス半減もあってか圧倒的に火力が足りない。
お互いに決定打がないので、このままではジリ貧だ。
【ふははは! 全力全開DA!】
「オラァ!! 一番手はいただくぜ……サテライト・ブラスタァー!!」
団長フリードが叫んだ。
そして、天空より光の柱が降り注ぐ!
【うわああああ!】
「まだ終わらねェ!! 行け、ミカS!」
「はい、団長。サテライト・ブラスター」
団長のスキル、光の柱が途切れた……と思った時、間を置かずに2人目の光の柱が放たれる。
あともう1人待機しているってことは……まさか。
「そして僕も、さてらいと・ぶらすたぁー!」
【ぐっ……この程度に屈する俺ではないわ!!】
ランチャー職でも最上位のスキル、サテライトブラスター。
ATK依存のスキルでもあるけど、その最大の特徴は相手のDEFを無視したダメージにある。
いくらステータスが半減といっても、DEF無視攻撃を何度も耐えられるほど奴はかたく……ない、はず。
それを使えるってことは3人ともレベルがカンストしているってことよね。
久我が言っていた3人の指揮人って、この人たちのこと?
彼らの攻撃はまだ終わらない。
「じゃ、2周目いっとくか。サポートサンキューな。サテライト……ブラスタァァァ!!!」
【き……効かぬわ!】
「次は私ですよ。サテライト・ブラスター」
「さてらいと・ぶらすたぁー!!」
……えぐい。
3人でローテーションを組むことにより、絶え間なく攻撃することに成功している。
通常レイドでは人数的に実現不可能なこの動作。
それもこれも、光の檻で一箇所に固定できる人数。そしてそれをサポートするMP回復役のみなさん。
さらにサテライト・ブラスターを撃つためにクールタイムを半減している成果だろう。
あれれー……課金アイテムであるレジスターが消費されるエフェクト、なぜか大量発生しているけどなんでだろうなー。
そうして、ローテーションが5周した頃には光の柱も収まったらしい。
課金アイテムが切れたのか、サテライト砲台の3人と包囲殲滅檻の人員は肩で息をしているようだ。
「ハァ……ハァ……やったか!」
まだ光の残光が多く、アカバンの巨人の姿は見えてこない。
やがて、少しずつその全貌が現れてくる。
「い、いない……?」
「まさか本当に」
「やった……のか?」
攻撃に参加した人々が安心し始めたその時、地面が大きく振動した。
【ふぅん。俺をここまで追い詰めたことは賞賛に値するぞ。褒美に死を持って償わせてやる!】
奴の巨大な全身が穴の底から這い上がってくる。
……腕が垂れ下がったままなのに、どうやってでてきたのかしら。
その姿に絶望したのは、誰が最初だっただろう。
「バカな!! この攻撃を受けて無事なモンスターはいないはずだ!!」
【俺はモンスターではない。神だ!】
本当の神(運営)は休暇取ろうとしてますよ、自称神さま。
多くのプレイヤーがその姿に絶望する中、街の方から聞き慣れた音が響いてくる。
それは、エンジンを吹かすような雑音で。
しかし、絕望に包まれたこの空間を吹き飛ばすかのように近づいてきた。
「フリード、よく持ちこたえた。後は任せてくれ」
「りゅ、流星!」
え、団長さんとも親しいなんて、流星って実は凄い人?
ブックマーク、評価ありがとうございます!
いきなり増えて驚きですが、更新は……週2でキープさせてください。




