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タゲの取り合いなの

 

 ワンテンポ遅れてスタートした私だけど、思ったより差は開いていない。

 というのも、進行方向にドでかいアイツが邪魔しているからだ。


【クク、雑魚どもが】


 アカバンの囚人……もう巨人でいいか。奴が立ちはだかるせいで、デス子ちゃんや久我は攻撃を避けながら大回りをしていた。

 その点、草だけは違った。


「うおおおおおおおっ!!」


 何か猛スピードでペダルを漕いで、迂回せずに奴の股ぐらを通過しようとしている。

 確かに成功すれば大きくリードできるだろうけど、正面突破とか正気なの?


「全力でいくぞ!! シャドウを走れゴレンダァァ!!」


 シャドウを走れ。

 草の持つスピードスキルで、夜限定でクールタイムがなくなるというスキルだったはず。

 何でも進行方向に影の道を作成してスピードを上げるらしいけど、ステータス半減でそこまでのスピードは……って。


【何度やっても同じ……何ィィ!!!】


 ステータス半減。

 そのデメリットを物ともせず草は加速した。

 そしてそれはアカバンの巨人、さらに私たちの予測を裏切り……奴が足で蹴り飛ばす前に股ぐらを走り抜ける!


「おせーな……いや、俺がはえーのか」

【貴様ぁ!! 許さんぞォォォ!!!】


 この時点で、草がトップに躍り出る。

 そして同時に、ターゲットが草に集中したことによってデス子ちゃんと久我、遅れて私も草の後を追う。


「今のどういうことなの!!」

「ほう! 雑草から評価を改めないといけませんね。まさか私たちも気づいていなかった弱点を見抜いていたとは」

「何何、教えて!」


 どうやら久我は何かに気づいたみたい。

 私たちになくて、草にだけあるもの……邪気眼かしら?


「あのアカバンの囚人が使うステータス半減。あれには発動まで若干のタイムラグがあるらしいですね。まあシステム上仕方のないことなのですが、その弱点を上手くついた作戦のようです。そもそも――」

「わかったわ!! クールタイムね」


 草のスキル、影を走れ。

 あれは夜限定でクールタイムがなくなる。

 つまり、アカバンの巨人が使うスキルよりも早く重ねがけができるということだ。

 ラグといっても1秒未満。その時間に5回も重ねがけを成功させたとしたら……奴の行動予測を上回ったのも納得できる。


「あいつよく気づいたわね!」

「でも私たちは参考にできないわ……」


 現状クールタイムを短縮できるアイテムは所持していない。

 あとは、草がヘイトを集めているうちにどれだけ距離を稼げるか、だけど。


「ちょっとまって。これ何人でレース?」

「勿論5人よ。何言っているの?」


 前にいる草。

 私、久我、デス子ちゃん。

 最後の1人は……。


「遅れてくる流星のことよね?」

「目の前にいるじゃない」


 ドシン! ドシン! と音を響かせて歩くアカバンの巨人がいる。

 その顔は怒りに染まっているようで、ちょこまかと動き回る草にどうにかして攻撃を当てようと追いかけているらしい。

 巨人な分、一歩で進む距離が多く、私たちは付かず離れずの距離を保っていた。


 あー……。


「ま、今は草に集中しているみたいだから、距離を稼がせてもらおっと」

「おおーっと!! ここで草選手、MP切れかぁ! 今まで影で作っていた道が途切れてしまったぁー!!」

「っ……うるさいわね!」


 いきなり叫びだした久我に釣られて前を見ると、ちょうど草が一周めを達成したところだった。

 そして、アカバンの巨人が使う地面陥没アースクエイクや踏み降ろしの衝撃を緩和していた影の道が途切れ、デコボコになった荒野にチャリで放り出されたところだったらしい。


 当然、そんな地面で上手く走れるわけもなく転倒した草


「うがぁ! ポーションも切れたしコントロールできねぇ!!」

「終わった」

「終わったわね」

「終わりましたね」


【ふぅん……よくやった、と褒めてやる】


 そうして、世界樹ほどありそうな腕を構える。

 え、確実にオーバーキルだけどヤっちゃうの?


【死ねぇぇぇぇえ!!】

「だが、タダでは終わらん!! ダークネス・デ」


 草が潰された。

 最後になにか発動しようとしていたみたいだけど、私たちに思い当たるスキルはない。

 ……草、あんたよくやったよ。

 私たちを安全に1周させてくれたから。




【ふはははは!! 強靭! 無敵! 最強!!】


「奴が止まっている。いまがチャンスね!」

「だけど今前に出たらターゲットにされるよっ」

「ふっふーん。あなた臆病ね。おっ先ー!!」


 草を潰してご満悦な巨人を抜き、今度はデス子ちゃんがトップに躍り出る。

 当然、それを見逃すアカバンの巨人ではない。


【ほう。まだ雑魚が残っていたか】

「わたしだって、やるときはやるんだから!」


 デス子ちゃんには有力なスキルがなかったはず。

 それに久我と私はいいけど、あのウイングシューズ? は地面の影響を少しは受けるはず。

 地盤沈下ばかりのフィールドで上手く走れるとは思えない。


【消え去れぇぇ!!】

「はっ!」


 巨人が拳を振り下ろす。

 そのタイミングを見計らったように、デス子ちゃんは真下へとキャノン砲をブチかました。

 さながらジャンプするように、前方で一回転して奴の拳を回避する。

 同時に、まだアカバンの巨人の後ろにいる私たちは、大きく引き離された。


「威力は落ちても、勢いは変わらないんだからっ!」

「さあレースも中盤に差し掛かりました! トップは代わって妹様です! ここから私たちは、いったいどう追い上げるのでしょうかぁー!」

「……あんた楽しそうね」


 あと2周。

 さっき話した『西部劇のロード』組はまだだけど、もう棄権してもいいかしら?



罠カード、運命の分かれ道にハメられました。

引き継ぎ次第ですが、せめて週2で更新できるようにします。

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