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覚悟完了なの!

 

 ご丁寧にも運営から『はよ倒せ』と催促がきた。

 ま、まあプレイヤー側からするとそんなゲームもうやらん! となるわけだが、それは正規のプレイヤーだ。

 図書館サーバーの利用者は体感時間をただ倍にしたいだけの利用者が多い。


 つまり、時間に追われている人が多いわけで、急にそのシステムが使えなくなると言われて黙っている人は少ない。


「なんだと!? 報告書が終わらなくなるではないか!」

「連休中にあのシリーズを読破する予定だったのに……」

「お、おい……休み中何をやればいいんだ」

「トラジティ時間発生した」


 そんな喧騒の中、街にはプレイヤーが次々に集結してきた。

 見たことがない装備の人や、そんな格好で大丈夫? といった人々が多い。


「ほう。図書館サーバーにも影響が出ると知って、住人たちも参戦するらしい」

「でも彼らって戦えるの?」

「壁くらいにはなるだろう」


 酷い言い草だ。

 私たちも普段戦っているのかと問われたらハテナなのに。


「で、我々はいつ仕掛けます? やはりエースの世代交代ともなると、本人抜きで行なっても面白みにかける決闘レースとなってしまうでしょうし」

「ふむ。だが待機していることもそろそろ限界のようだ」


 周りを見ると、プレイヤーが増えて……あれ?


「さっきよりも減っていない?」

「気づくのおっそーい! もうみんなでていったわよ」

「え?」

「まったく。協力するという気がないのか無謀な連中らだ」


 街の外を見ると、アカバンの囚人最終形態と思われし周囲に飛び交う人々が見える。

 あれって戦っているのよね? 攻撃を避けるのに何度も成功していることから、かなりやり手のようだ。


「おやおやぁ? そこに集っているのはもしかしてアジシャンズのメンバーではないかい?」

「遅いぞ。我々だけで始めようかと思っていたところだ」


 ニヤついた顔で現れたのは、肩にマスケット銃を乗せたキザな男性だ。

 姫さんの好みとは180度どころか、クルセさんに似ても似つかないけど、何やら親しそうな仲だ。


「そういうなよ。うちらだってこれだけの人数で作戦会議をしたんだ。それなりに時間はかかる」

「ほう。後ろにいる十数人が全てお前の部下か」

「ハッ、連携でいうなら俺らの右に出るものはいないさ」

「……その言葉、もしや貴方は『西部劇のロード』団長、フリード様ではないですか?」

「ああ。というかプレイヤー情報くらい勝手に見ろよ。俺はいつでもフルオープンだぜ?」


 トップギルドに数えられる『西部劇のロード』というギルド。

 軍隊のようなメンバーに、将軍代わりのギルド長、副ギルド長、サブマスターの3人が指揮をとる軍隊だ。

 普段は和気あいあいと楽しんでいるが、レイド戦でのみ役割分担で仕事をし、各自ベストを尽くすというパーティ。


 絶対に入りたいとは思わないけど、その勝率は実に9割を誇るとかなんとか。

 それもこれも、全部ギルド長の為せる技らしいけど……そんな人たちがなぜ声をかけてきたの?


「他の2つはどうした?」

「連絡取れると思うか? 生き残りはいるが、漁夫の利でも狙ってんのか全然でてこねえ。俺らでやるしかない」

「なら討伐は任せたぞ」

「ああ。お前さんたちはいつも通り好き勝手やってくれたら良い。こちらはそれも踏まえて作戦を立てたからな」


 意味深な会話のみして別れる2人。

 そのまま姫さんの後ろに付いて、私たちは街から出る門の前まで来る。


「あの者はさっきチャットしていた1人でな。お互いの予定を確認して干渉しないことを約束した」

「さすが姫様。まさかフリード様と知り合いでしたとは驚きです! そもそもあの方はギルドメンバー以外では……」

「で、お兄ちゃんは抜き?」


 ここに集ったのは流星を除くメンバー。

 草はいじけていたけど、ちゃんと付いてきたようだ。


「ああ。今回のコースは……そうだな。街の周囲を3周にしよう。私はここからカウントするので、存分に走ってくるが良い」


 何度も走り慣れたコースだけど、今回は瞬殺されそうなこと、AGIやその他ステータスが半減していること、そして文字通りBANをかけた命がけという条件が追加されている。


 姫さんは走ってもビリなのが確定しているため、審判役を買って出るようだ。


「皆のもの、準備はできたか?」

「ある程度は予想できたけど、それだけなの?」

「ああ。私たちが走り出せばさっきの奴らも動く。さてはてどのような活躍をしてくれるのか実に見ものだ」

「………………」


 見学しているだけの人はいいですね。


「あの巨人に群がっている最後の1人が倒れたら開始だ。スタートダッシュに遅れないためにも、よく見ているが良い」

「最後って、どんどん加勢したら誰が最後なのかわからなく……」


 そんなことはなかった。

 追加されると思っていた人々は地面陥没アースクエイクに為す術もなく飲まれ、宙に飛び交って躱して攻撃し続けた最後の1人も消え去る。


 同時に。

 私と並んでいたアジシャン達の姿も消え去る。


「おっ先ー!!」

「いいでしょう! エースの次席である私に勝てるとは思わないことです。それくらいの距離はハンデとして差し上げても問題ありません」

「俺だってやるときはやるんだからな! この瞬間、世界は闇に包まれ……ブラック・アジシャンと呼ばれた我の実力を発揮する瞬間ときは来た!」


「タカマチ、随分と余裕だな?」

「……ああもうっ! やればいいんでしょやれば!!」


 私はこれでも一応、アジシャンと認定された(?)メンバーだ。

 挑まれた決闘レースから逃げることは、許されないんだからっ!





寝不足で不満足時代に突入です。

サティスファクションしたいと切に思います。

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