災害の巨人兵なの
戻ってきた流星によると、アヴァロン・トラジティの世界は世紀末真っ只中らしい。
「奴に近付こうとした者は腕の一振りで瞬殺される」
「でも全員じゃないんでしょ?」
「ああ。しかし奴に辿り着いても、あまりダメージを与えられないまま次々とログアウトさせられる」
さすがステータス半減、真っ向勝負じゃ倒せないってことよね。
「後は任せた。俺も1時間後に合流しよう」
「それまで我らが持てば、だが」
姫さんがニヤリ、と笑う。
ログインするのは先ほどと同じメンバーだ。
草は叩き起こしたけど、何やら準備があるとかで未だに出てこない。
「何、そのうち合流するから気にするな。むしろ我らがリードする距離で十分引き離せるだろう」
「それは何の心配?」
「決まっているだろう?」
私は無視した。
ゲームにログインすると、そこはまさに世紀末だった。
……いや、正確には街の外が、だ。
「うげぇ」
「可愛げのない声」
「いや、これは私も同感だ」
「え?」
今までのレイドボスでも20メートルほどしかなかったのに、ソレはざっと50メートルはありそうな巨人だった。
ドラゴンを片手で振り回せそうな敵って反則じゃない?
「上半身のわりに、下半身は貧弱そうね」
「奴も所詮は創造された物ということか」
世界樹の太さくらいありそうな腕に、城が動きだしたかのような身体。
それでもって、ソレらを支える足はいつかみた灯台くらいの太さしかない。
いくら流行りだからって、逆Aラインを意識しすぎじゃない?
「あれ下半身を狙ったら倒せそうね」
「すでに実行しているグループはいるみたいだな」
『奴はデザインミスか、下半身が弱点に見える! 皆、集中狙いするぞ!』
『俺は投擲で援護するッ! 切り込み隊長は任せた!!』
『6方向から攻めるぞ!』
『切り込みロックで行くぜぇええ!!』
皆が皆メガホンで会話するからか、関係ないここまで会話が響いてくる。
よくもまあ課金アイテムをじゃぶじゃぶ使う気になれますね。
ソードマスター、レンジャー、バーサーカーなどの近接職が奴を囲うように一気に攻める。
6方向から3人ずつ駆け出しているので、いくら攻撃が来たからといっても誰かはダメージを与えられるだろう。
だかしかし。
【消えろ、ザコ共!】
地の底から這い出てきたかのような声が響き渡る。
そして……奴の周囲にあった地面が、一瞬で陥没した。
「へ?」
「おいおい、瞬殺ですよ」
「ふむ。今回のあ奴は会話できるようだな。どれ、決闘の申込みでもしてこようか」
「いやいや、危ないでしょう!?」
私たちは安全圏の街にいるけど、遠目で見ているだけでも次々と殺戮が繰り広げられていく。
街のすぐ近くから攻撃していたランチャー、ウィザードはレーザービームで一瞬のうちに蒸発され、不意をついて近づいたシーフやストライカーは、奴の合図一つで発生する暴風に巻き込まれ地面に叩きつけられる。
これ、もうレイド戦どころか災害級じゃない……。
【フハハハ……ワーッハハハハハ!!】
「あの高笑いは癪に触るわ」
「同感ね。わたしもそう思う」
「ふむ。どこかの雑草を思い出さなくもないが、私もそう思うぞ」
『皆、足を狙え! いくらステータスが半減していても、押し倒してフルボッコできたらこっちのモノだ!』
『え、アイツを押し倒すなんてできるのか?』
『できらぁ!!』
いつの間にかファイターと思われしムキムキのマッチョたちがアカバンの囚人の足に張り付いていた。
片足のみだけど……よくあの地面陥没を躱してたどり着けたものだ。
『気合を入れろォォ!!』
『『『『押忍!』』』』
そして、前に歩こうとしていたアカバンの囚人の足が片方、地面に固定される。
元から身体のバランスが悪いだけあって、そのまま前進しようとした勢いで倒れ……るかと思いきや。
【ふぅん……狙いは悪くない。だが、甘いぞ!!】
『『『『『うおおおおおおおおお!!!』』』』』
思いっきり蹴飛ばすかのように、抑えられていた足を前へ進ませた。
あぁ……暑苦しいファイターさんたちは星になっちゃった。
戦闘範囲は街以外の全フィールド。
だけど、街から少しでも出るとすぐにアイツのターゲットだ。
1 VS 大多数
けど、まるで勝てる気がしない。
こんなのがイベント? ただの無理ゲーじゃないの。
「ど、どうするの姫さん……この前の姫さんのスキルで」
「街ではスキルを使用できない。あ奴から30秒逃げ切れる自信があるか?」
「う……久我と協力してなら、可能性はっ」
「万が一成功したとして。あ奴の身体はスキルの有効範囲外だな」
「そんな……」
運営もあんなに巨大な敵は想定しなかったらしく、範囲系のスキルは効果適応外だということもわかっているという。
自分たちで作ったくせによく言うわ。
「ならどうしろっていうのよ」
「ログインする前にも言ったが、我々の役目は決まっているだろう。いまは彼を待っているだけだ」
こんなの飛び出ても一瞬でやられそうだけど。
唯一誇れるAGIも半減だし、逃げ切れる自信がない。
「……と、噂をすれば来たようだぞ」
私たちがログインして1時間は経過しただろうか。
そろそろ攻撃パターンや、奴の死角なども予測できた。
そしてようやく、目の前に私たちアジシャンのエースが……。
「フハハハハハ! 皆の衆、待たせたな!!」
「違う、アンタじゃない」
「お兄ちゃんを寄こして」
「まだ寝ていても大丈夫だぞ? ゆっくりしたまえ」
「どうやら草さんの出番は終了のようですよ。ほら、特攻隊長は他の方が請け負ってくれていますので」
「辛辣ぅ……」
来なかった。
――ピロン。
――運営(AI)の保有するプレイヤーIDが総数の半分を越えそうです。
――本日中に討伐が確認されなかった場合、この運営はGWに入りますので長期メンテに入ります。
――あしからず。
……クソ運営!
シャチョーさんは災害級。




