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不毛な戦争なの

 

 サーバー全体にシステムメッセージが流れる。

 同時に、極寒の浜辺にて発動されていたレイドフィールドも解除された。


 ポツン。

 敵もいなくなり、フィールドのど真ん中に私だけが残される。

 周りにはレイド戦待機のプレイヤー達。

 その全てが、先程のメッセージを見て私に注目している。


 ……これ、終わったのよね?


「「「「「うおおおおおおおおおおおお!!!!!」」」」」

「ぎゃっ!」


 鼓膜が破れんばかりの大歓声に包まれる。

 皆が勝利を讃えようとこちらに駆け寄って……。


「むりムリ無理!! こっちこないでよ!!」


 すぐにログアウトした。






 ………………。

 …………。

 ……ああ、怖かった。


「おや、妹君といい、随分と早いおかえりではないか? 5分もたせるという話だったが」


 リアル世界に帰還すると、そこにはアジトと変わらない姿勢で姫さんが待っていた。

 そういやオフ会の途中だっけ。


「あれ、まだ5分経っていないの?」

「いいえ。既に久我と兄さんを送り込んだ。でも貴方が帰還するのは予想外。まさか」

「ちゃんと勝ったわよ! それにデス子ちゃんったら途中で帰るなんて酷い。あの後大変だったんだから!!」


 先程の決闘レース結果を聞くのは姫さんとデス子ちゃん、そしてクルセさんだ。

 草は買い出しに行ったまま帰ってこないらしい。


「……で、最後はみんな消えちゃったから、全力で突っ込んだわけ」

「スキルで避けれると思っていたそいつらは馬鹿なのか?」

「いや、予想以上にAIが賢かっただけかもしれない」

「そう。兄さんを呼びに行くまでもなかったわね」


 うん。

 あいつら馬鹿なの? とは私も思った。


 デス子ちゃんが流星を呼びに行った理由は至極単純。

 流星が召喚するモンスターで秘策があったらしい。

 MPを大量消費、さらにアイテム使用量もハンパないみたいだがら、結果的には倒せて良かったのだけど。


 良かったのだけど!

 なぜか損した気分になるのはどうして?


「しかしよくやってくれた。これで君も立派なアジシャンだな」

「なった覚えはないのだけど」

「何言っているの。私より速い貴方はアジシャンよ」

「そもそもアジシャンって何なのよ」


 それ勝手に呼ばれているというか、名乗っているだけよね?

 なにはともあれ、これで奴を1回倒した。

 次はいつ出てくるかわからないけど、あと2回……また私が戦う時はくるのかしら。


 とりあえずは流星と久我が戻ってくるまで時間を潰し、ログイン制限の解除を待たないと!


「ふはははは! ただいま帰還したぞ!! 見よ、我のチョイスで熱融解する甘味をくれてやろう!」

「うるさい草」

「近所迷惑だやめたまえ」

「あー、チョコレートな。余った金は小遣いにしろと言ったのに、こんなに買ってくれたのか」


 そういやこんな奴いたわ。

 チョイスといったけど、アカデミアナッツとかゴリラのマーチのチョイスはいいじゃないの。

 でも……これだけは許せない。


「は? 何で『たけのこの村』なわけ? 普通『きのこの川』よね」

「あ? 『たけのこの村』一択だろ。皆に聞いてみろって」


 クルセさんと姫さんは『きのこの川』派。デス子ちゃんと流星は『たけのこの村』派らしい。

 流星はデス子ちゃん情報だからいいとして、この場に久我がいないのが悔やまれる。


「半々ね……草は草らしくキノコヘアーにでもしなさいよ」

「関係ないだろ! それにたけのこは2度美味しいんだぞ! きのこなんてクッキー折れたらおしまいじゃねえか!」

「あ”」


 そんなくだらない議論をしていると、いつしかいい時間も経過してしまった。

 そしてノコノコと帰ってくる久我。


「いやー、白熱してしまいましたね。現場に向かえば時すでに遅し。タカマチ殿が勝利したようでおめでとうございます。ただ私達は消化不足となりましたので、そのまま待機するついでに流星と――」

「「どっち派!!」」


「おおう。2人してどうしたのでしょうか?」


 大げさに驚く久我に、姫さんが机の上を指差す。

 そこには草が買ってきた『たけのこの村』が置かれていた。


「なるほど。実は私、溶かしてから食べる派とでも言うのでしょうかね。チョコレートは別で、クッキー部分と分離させてから食すのが最近のトレンドでして。なのでビスケット部分しか評価できません」

「「邪道!!」」


 まさか久我は道を違えた人だったなんて。


 クルセさんがアヴァロン・トラジティにアクセスし、私と草の言い争いも決闘レースにて白黒つけようとなったとき、流星が戻ってきた。


「おい、ダイブしろよ」

「何かあったの?」

「第二のアカバンの囚人が出たぞ。その報告だ」


 メンバー全員のログイン制限は、久我と流星以外かかっていない。

 今はクルセさんだけがインしている状態だけど、私はしばらくインしたくないし、そうなるとデス子ちゃんと草かな?


「最後に姿だけ確認したが、奴は一筋縄ではいかないらしい」

「え? それってどういう……」

「皆のもの、すまない」


 見ると、先程インしたはずのクルセさんがそこにいた。


「おや、まだ十数分しか経っていないが。夕飯の心配なら久我が変わってくれるというので大丈夫だ」


 そこは姫さんじゃないんかい。


 でも、次に出た言葉は衝撃的な言葉だった。


「アカバンの囚人にやられてしまったよ。あれは初見殺し、そして広範囲一斉BANだ」


「僕たちは一瞬で全員……20人が、全滅したよ」


 第二の敵は、全て消し去ることができる相手……だった。





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