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一人ぼっちの決闘なの!

 

 奴を周回させることには成功したけど、あとはこのまま距離を保って追いつかれなければいいのよね?

 レイドメンバーというか、観客がいるアーチの方角へ走っているけど、ここで普通に追撃してくれないかしら。


 その時、私の願いが通じたのかメンバーから大規模な魔法が発動される。


「奴が近づいてくるぞ! 皆固まれ!!」

「えっ、こっちには撃たないでよ!」

「「「ステルス・プロテクション!!」」」


 その瞬間、私の前からメンバーが全員消失した。


「え? 嘘っ」


 ビュン!

 と勢いよく側を通り抜けるも、あるのは巨大なアーチのみで初めから誰もいなかったように皆消え失せる。

 アカバンの囚人も広範囲に触手を伸ばしていたようだけど、横薙ぎに払った攻撃も空振りしたようだ。


 すぐさまスキルを検索……検索……あった!



 ステルス・プロテクション

 必要SP:30

 前提条件:DEF 500


 使用者の半径10メートル以内にいるプレイヤーは10秒間行動不能。

 効果を受けたものは、8秒間敵に見つからず攻撃も受け付けない。

 ――やったか!?



「あっ」


 ちょうどアーチの真横を通過し、6秒は経過している。

 なら、少し先に見える北の灯台にたどり着く頃には、彼らも。


 そう思って後ろを見ると、ちょうど霧みたいなものが晴れてメンバーが現れる場面だった。

 動けないので2秒のフルボッコタイムがあるはずだけど、肝心のボスは私が引きつけているし、AGI700越えの速度で大きく離れている。


 なるほど、こういった場面では有用なスキルね。

 難なく北の灯台も周回し、彼らが用意してくれたアーチをくぐる。

 まずは1周!


 アカバンの囚人は……ちゃんとついてきているわね。

 ちなみにメンバーは再度同じスキルで回避だ。

 そして2周目。


 ここを制したものが決闘レースの勝者!

 私のAGIは700あるけど、アカバンの囚人は700+100だ。

 追いつかれないためには、奴の攻撃が届かない上空で走るしかない。


 ずるい?

 コース内だったら空もアリよ!


 それもこれも、アカバンの囚人が私を追いかけてくれるおかげだ。

 直線上の決闘レースなら勝てないけど、奴がこっちを狙っている限り、最後の一瞬のみなら出し抜ける!


 初めに周った南の灯台も同じようにクリア。

 あとは北の灯台を回って、アーチを潜るのみ。


 が。

 最後のポイント、北の灯台へ向かう途中でアカバンの囚人が減速した。




「え? なんでそこで止まるの……まさか!!」


 慣れたものだ。

 メンバーは私が走り去る前にスキルを発動。

 既に8秒のカウントダウンは開始している。


 だが。

 プレイヤーを何人もハメてきたAIはその行動パターンも学習してしまったらしい。

 私を追いかけてくるものだと思っていたけど、まさかメンバーが消えた場所で減速するなんて!


「今から急ブレーキで方向転換……いいえ、空中ターン!」


 空を飛べるものにだけ許されたUターン。

 姫さんはインメルマンターンとか言っていたっけ。


 いくら観戦していただけとはいえ、レイド戦メンバーが危ないならレースよりも優先するっ!!


「お願い、間に合ってっ!! いや、ここは『マジカル・フルバースト』して『ゴッドウィンド』を発動するしか……ッ」

「待て! 早まるな!」


 私がスキルを発動しようとした時、どこからか声が聞こえた。

 もう彼らのスキルが切れるまで2秒しかないけど、これは……トライアの声かしら?

 動けないだけで、チャットや音声入力は可能なようだ。


「君は決闘レースに集中したまえ! なあに、こっちは実験も兼ねているのだ。奴が気づいたというなら、存分にデータを提供してもらおう!」

「でも! もし決闘レースで勝っても何もなかったら!」

「そのときはサレンダーだな」


 そこで彼らの8秒が経過した。

 ゆっくりと霧のように、メンバー全員の姿が現れる。

 行動不能デメリットは、残り2秒。


 すぐ横には、他のメンバー全員を捉えたアカバンの囚人がいる。

 そして、動けない彼らを触手で包み込むように覆い……。


「頼んだぜ、僕ら……いや、アジシャンの希望ホープ

「トライア! 他のみんな!」


 完全に、食われた。

 ……私も空中で動くことができず、アカバンの囚人もその場でじっとしている。


 彼らは完全に消えてしまった。

 トライア以外の名前は知らなかったけど、アーチを設置してくれたり矢で距離を測ったりしてくれた協力者が、皆。

 ……ま、人にだけ走らせてジュースを飲んでくつろいでいた姿はムカついたからざまぁと思わなくもないけど。




 レイド戦、残ったプレイヤーは私のみ。

 私が倒れたら外で待機している他のプレイヤーが参戦するだろう。

 実験。実験ねぇ……。


 考えていた時、アカバンの囚人がこっちを向いた、気がした。


「くっ、今がチャンスなら、やるしかないじゃない!!」


 元から決闘レースが勝利条件に入るかも不明だった。

 そんなくだらないことのために消えていったメンバーのためにも……結果は出したい。いや、出さなければならない。


 アカバンの囚人は動かない。

 なら、私は一足先に北の灯台を周回して、アーチに突っ込む!


 無事に北の灯台も周り、あとはアーチをくぐり抜ければ私の勝利だ。

 しかし、アーチの前にはラスボスが立ち塞がっている。


「フッ、メンバー全員を食った場所で向かい受けようってわけ? いいわ、突っ込んであげる!!」


 奴は決闘レースを放棄したらしい。

 初めから決闘レースなんてやってなかったかもしれないけど、ルールはルール。

 ……運営は認めてくれるかしら?


「これが私の全力全開!! 『マジカル・フルバースト』かーらーの……『ゴッドウィンド』!!」


 そして。

 全速力でアカバンの囚人もろともアーチへ突っ込む!


 奴は触手で包み込むようにしてくるけど……遅いッ!


「はぁぁぁぁあああああっ!!」


 速さに速さを重ねた暴力。

 そしてゴッドウィンドによる攻撃力。

 相手も同じステータスが上がったとしても、加速した・・・・速度までは消せるわけがない。

 故に、私が押し勝つッ!!



 ピロン。

 ――アカバンの囚人との戦闘にて勝利。

 ――事前の取り決めにより、戦闘以外の勝利条件を確認。片方は条件を満たしていないためにゴールが無効となり、プレイヤー側の勝利。


 ――アカバンの囚人、残機:2。


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