特殊勝利条件(?)なの!
デス子ちゃんは勝手に走っていったけど、私の目的は彩ちゃんの敵討ちだ。
向こうがタゲ取っている間に私も……。
「って、こっち狙わないで! ちょ、あなた達も攻撃するのはやめて! こいつに魔法は効かないからぁ!!」
敵味方から集中砲火された。
いくら悪人面がターゲット集めるからって、これはあんまりじゃない?
可能ならすぐにでもアバター変更したいくらい。
優先して避けるのはアカバンの囚人による触手攻撃。
さっきまでの戦いでわかったこと。
その触手に触れられたらすぐにログアウトさせられるらしい。
なので前からくる攻撃を交わしつつ、味方の流れた攻撃もできる限り避けて逃げる。
「いつまで遊んでいるの? 勝利条件はあの灯台よ。極寒の浜辺には灯台が両端にあるから、その2つの外側を先に2周したほうの勝ち!」
「今はそんな場合じゃないって! それにアレはどうするのよ!!」
そこにいるのは、攻撃を食らいながらも一直線にこちらを追いかけてくるシマシマ。
6本の腕も足代わりに使って、計8本の足で追いかけてくる。
というか、味方の流れ弾を避けるのが地味に大変なんですが。
「いい障害ね。わたしより速い相手なんてワクワクするかも!」
「ダメだこの子」
いくらAGIが高くても+100される。
そんな相手に逃げ切れるわけがない。
ならどうするか?
どっちかが犠牲になって、リアルファイトするしかないじゃない!
「どうせ追いつかれるなら、私が囮になってアイツを……」
「必要ないわ。今から砲撃戦よ!!」
デス子ちゃんが振り向き様に一発。
ドォン!
と、21センチ(自称)のキャノン砲が放たれた。
着弾!
しかし、奴には効いていないようだ!
「ちなみにアレの推定防御は800。物理攻撃の連撃でも当てないとダメージは通らないみたい」
「それって不可能では?」
いつのまに情報なんて得たのか疑問だけど、そんなの勝てっ子ないじゃない。
でも、レイド戦に誘ってくれたトライアさん始め、メンバーはリタイヤする様子がない。
むしろボスを諦めて、私達に集中砲火しているような気さえしてくる。
何か攻略法があれば良いのだけど。
「何言っているの。方法はあるって!」
「え、まさか攻略法が見つかったの?」
「まず、運営から戦闘で勝てとは言われていないわ」
その言葉にハッ! となる。
振り向けば、メンバーが密集している付近に何やら巨大なアーチが架けられている。
それに攻撃で使われた槍や弓矢は、まさか等間隔状に配置されている……?
「つまり、奴に決闘で勝てば問題ないの!」
「そうか! なるほ……って、どうしてそうなるのよ!」
相変わらず魔法攻撃と物理の弓矢は飛んでくるけど、私にガードスキルはない。
なので避けるけど、その避けた矢がヒュン、ヒュン、ヒュン! と等間隔に刺さっていると、なぜか殺意が芽生えてきます。
「もうすぐUターンよ! 奴をコースアウトさせないように管理するよ!」
「そこはヘイト管理よね?」
こちらが決闘をするといっても、敵はそんなのお構いなしだ。
……ま、こっちが勝手にやっているだけだからそうなのだけど。
なので灯台のこっち側まで引きつけ、Uターンする必要がある。
私とデス子ちゃんは最初の灯台を通り越し、あとはアカバンの囚人が追ってくるのを待つ。
遠くに見えたレイド戦メンバーはすでに観戦モードらしく、ようやく攻撃の雨も止んでくれた。
……が。
「え? まさか。え、ちょっとちょっと、マジなの!」
「どうしたのデス子ちゃ……あれ、そっち?」
予定通りに追いかけてきた。
来たのだけど。
アカバンの囚人はあろうことか、私とデス子ちゃんが通った側とは反対側を通って、灯台のこっち側へ追いかけてきた。
すでに差も縮まっているので、考える猶予はあまりない。
「そんな。このまま引きつけると、わたしたちが周回できない。かといって強行突破すると、今度はアカバンの囚人が周回できないじゃない!!」
「それそんなに重要かなぁ?」
「だって決闘が成立しなくなるのよ! せっかく参加した意味がないじゃない!」
そもそも、コイツに勝てばいいだけでは?
喉まででかかったけど、迫真の表情を見せるデス子ちゃんに言うことはできなかった。
「うぅ……くやしいけど、わたしじゃ無理ね」
「え、何が? 走るなら走ろうよ。くるっと回って、要はアカバンの囚人より多く灯台を一周するだけの話でしょ?」
反対側とはいえ、灯台の周囲なんて20メートルくらいしかない。
それならアイツと交差しても、一緒にグルグル回って同じ方向から進めば良いだけに思える。
地上ならともかく、空なら…………あ。
「ええ。奴の触手に捕まらないことができるなら簡単ね。だから、ね?」
「ちょ、え。デス子ちゃん?」
「大丈夫。5分は持たせてね」
それだけ言って、隣にいたデス子ちゃんは消えた。
消されたではなく、消えた。
「決闘中にログアウトしないでよ!!」
私の叫びに反応する者は1人しかいない。
決闘の参加者は3人。その1人が居なくなったとすると、あとは一騎打ち。
「ちっ」
「……………………」
まずは交差。
高度を上げてアカバンの囚人の頭上を通り抜けるも、思った以上に触手が伸びてきて驚いた。
しかし、これで灯台の手前に誘導はできた。あとは……。
「さあ、私はここよ! ついてきなさい!」
「…………ッ!!」
高度を下げて、敵を挑発するのみ!
そして私がいつまで逃げ切れるかが勝負だ。
コイツに攻撃が効かない以上、私にできるのは決闘で勝つこと!
……お願いだから、他のメンバーも仕事してください。




