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まほカン  作者: jukaito


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第131話 福神! 少女の幸福と不幸は表裏一体! (Bパート)

 翌日、かなみは学校に行き、授業が終わると、会社へ行く。

 昨日からずっと福の神と自分の不幸について考えていた。

「福の神ねえ……」

 そのことを先に出社していたみあに話した。

「みあちゃん、その顔信じてないの?」

「だって、福の神なんて……」

「いるなんて信じられないって?」

「あんたの願望が作り出した幻なんじゃないの」

「そんなわけないわよ。コウちゃんが連れてきたんだし、ミドリやマニィ、リュミィだって一緒だったんだから」

「確かに昨日福の神がきたよ」

 マニィが証言してくれる。

「それだったら本当ね。で、その福の神が来て、なんかいいことあった?」

「何も、無かったわ……」

 かなみはため息交じりに答える。

 かなみは貧乏神が自分の不幸を取り払おうとして、失敗して弾き飛ばされたことを。

「アハハハハ!!」

 それを聞いたみあは、昨日の貧乏神のように大笑いする。。

「やっぱりそんなにおかしい」

「おかしい! おかおかしいにきまってるでしょ!! 福の神が裸足で逃げ出す不幸って!? アハハハハ!!」

「裸足かどうかはわからないけど……そんなに私って不幸なのかしら?」

「そんなに借金があってなんとも感じてないあんたが相当異常だと思うけどね」

「私って異常なの?」

「自分が異常だと思ってないのが何よりも異常だと思うのよね」

 みあがしんみりと言う。

「みあちゃんが言ってること、時々わからないわ」

「わからない方が幸せなことだってあるんだよ」

 マニィが言う。

「どういうこと?」

 かなみはますます意味がわからなかった。

「それこそわからなくていいのよ」

 みあは言う。

 かなみは、なんだか自分が子供で、みあが大人のように思えてきた。

「でも、私、自分にどのくらい不幸なのかわかっておきたいわ」

「それで後悔しない?」

「しないわ」

 かなみは断言する。

「だったらいいけどね」

「帰ったらコウちゃんにそのあたりきいてみたいわね」

「儂を呼んだか?」

「わあ!?」

 突然、煌黄の声がした方を見ると、立っていた。

「も~コウちゃん、来るなら来るって言ってよ。いつもいきなり出てきてビックリするんだから」

「ホホホホ、かなみをビックリさせるのが儂の生きがいなんでな」

「嫌な生きがいね」

 かなみは眉を顰める。

「あんたもいい加減慣れなさいよ」

「突然出てこられるとおばけみたいでビックリしちゃうの」

「あ~なるほど、そりゃ慣れないわけね」

 みあは納得する。

「それで、あんたは何の用で来たわけ?」

「かなみにどうしても会いたい者がおってな」

「私に、会いたい、者?」

 かなみは嫌な予感がした。

 このタイミングで、煌黄が言う「会いたい人」というのはロクなものじゃない、という予感がしてならない。

「私です」

「フクちゃん!?」

 煌黄の右肩から福の神が姿を現す。

「俺もいるぞ」

「ミドリも!?」

 煌黄の左肩から貧乏神が姿を現す。

「あ~、いつかの貧乏神ね。それで、あんたがウワサの福の神ね」

 みあは即座に状況を理解する。

「はい、福の神でございます。神ゆえに頭が高いですが、顔を上げても構いませんよ」

 福の神は自己紹介する。

「なんかこの神、エラそうね……」

「え、ええ……」

 みあのコメントに、かなみは苦笑する。

「またお会いしましたね、かなみさん」

「は、はい……私に会いたかったって……?」

「先日は醜態をさらしてしまいました。どうか忘れていただきたいです」

「あ、はい……」

 それは難しいそうね、と、かなみは思った。

「コホン、それでは本題に入ります」

 フクは咳払いして、それらしく偉ぶった態度で続ける。

「先日、かなみさんの不幸を取り除く術を失敗しましたが、このまま見逃したとしたら、福の神の名折れです!」

「名折れ……? それで何をするつもりなの?」

「再挑戦いたします!」

「再挑戦!?」

 フクは有無を言わさず、かなみの首筋に飛び移る。

「フフフ、今度こそ成功させてみますよ。不幸退散(ふこうたいさん)の術! せいぃぃぃぃぃぃぃッ!!」

 昨日と同じ裂帛の気合とともにフクへ首筋へ手を掛ける。


バァァァァァァン!


 しかし、その直後にフクは吹っ飛ばされて、天井へ叩きつけられる。

「ブギュッ!?」

 カエルが潰されたときのような声を上げて、ヘナヘナと落ちる。

「……え?」

 みあは呆気にとられた。

 対する煌黄は、「またか」と呆れ顔になる。

「えっと、結果はどうなったの?」

 かなみはなんとなく察しつつも、一応状況を確認した。

「火を見るよりも明らかじゃろ」

「え、どういうこと?」

「つまり、ダメだったってことよ」

 みあがなんともいえない気持ちで言った。

「それで、フクちゃんは?」

 みあは無言で床を指を差す。

 そこに倒れて微動だにしないフクの姿があった。

「あ、あの……?」

 かなみは恐る恐る声をかけた。

「う、うぅ……!」

 フクはすすり泣く声がする。

「大丈夫?」

「大丈夫、ではありません……うぅ……」

 泣いていた。

 福の神が、あの「神ゆえに頭が高い」と豪語していた福の神が、情けなく泣いていた。

「私は福の神だというのに、かなみさんの不幸を取り払うことができませんでした。福の神の名折れです……」

「ガハハハハハハッ!!」

 ミドリは大笑いする。

「あんなエラそうにしてた福の神様が、アハハハハハ!! 福の神の名折れだって、アハハハハ!!」

「そ、そんなに大笑いすることないじゃない。ねえ、みあちゃん、なんとかいってよ」

「貧乏神の気持ち、ちょっとわかる……」

 みあは口元を手でおおって、答える。

 多分、笑いを抑えている。

「みあちゃん……仕方ないんだから……ねぇ、フクちゃん、大丈夫?」

 かなみは声をかける。

「う、うぅ、うわああああああッ!!」

 フクは、かなみの声を無視し、泣き出して走り出していく。

「ハハハハハハハ、逃げていきやがった!!」

「そんなに笑うことないじゃない」

「ハハハハ、これが笑わずにはいれるかってのかよ!」

「しかし、笑いすぎじゃのう」

 煌黄はミドリを窘める。

「仮にも神様なんじゃから節度をもってほしいものじゃ」

「ククク、すまねえ」

「かなみ、騒がせてしまったのう」

「それはいいけど、フクちゃんは大丈夫?」

「大丈夫じゃろう。ただ下手をするとまずいかもしれぬのう」

 煌黄は深刻そうに言う。

「まずいって、どうまずいの?」

「福の神は人を幸せをすることが存在意義じゃ。それがお主の不幸をとり払えなかった。存在意義が揺らぐような出来事じゃ」

「存在意義が揺らぐとどうなるの?」

「神としての格が落ちる。最悪消滅するんじゃ」

「最悪? 消滅?」

「消滅、つまり消えてなくなるということじゃ」

「説明しなくてもそのくらいわかるわよ。消えてなくなるってことは、死ぬってことでしょ? え、待ってよ、死ぬって? フクちゃん、死んじゃうの!?」

 かなみは言いながら気づいて慌てふためく。

「最悪の話じゃ」

 煌黄は否定しなかった。

「神様って、そんな簡単なことで死ぬの?」

 みあは興味を持って訊く。

「神は不老不死じゃ。簡単には死なん。ただ存在意義が揺らげば例外じゃ。存在意義、自分はどうしてここにいるのか、なんのために生きているのか。ようは心の()(よう)じゃ。フクは今その存在意義が揺らいでいる」

「それって大変なことじゃないの?」

「大変じゃ……ゆえに、フクもこのままでいられまいよ」

「いられまいって?」

「何とかしようとするということじゃ。あやつはなんとしてでもお主の不幸をとり払おうとするじゃろうな」

「ありがたいことじゃないの?」

 みあはからかうように言う。

「そりゃありがたいことだけど……でも、フクちゃんが死ぬかもしれないんだったら……」

 かなみはどうにも乗り気にはなれなかった。

 福の神が二日続けて失敗した自分の不幸。それを無茶して取り払おうとしたら、もっとろくでもないことが起きる予感がしてならない。

「じゃが、あやつとて福の神。人や妖精の(くらい)を超え、さらには仙人や精霊の(くらい)を超えた神様なのじゃ。このままで済ませるとは思えんぞ」

「済ませるとは思えんぞ……って、何をするつもりなの?」

「さあ、そこまではわからん」

「期待せずに待てばいいだろ、ククク」

 ミドリはからかうように言う。

「待てばいいの?」

 かなみは不安げに、みあに訊く。

「あたしに訊かないで」

 みあは投げやりに答える。




 翌日、かなみは仕事を終えてオフィスを出た。

 時刻は日付が変わりそうな夜遅くの時間。オフィスを出ると煌黄がやってきた。

「一緒に帰ろう」

 と提案して、断る理由はなく、一緒に帰ることになった。

「かなみさん!」

 かなみを呼び止める声がした。

 声がした方を見ると、フクが立っていた。

「フクちゃん、どうしたの?」

「そろそろ来る頃と思っておったぞ」

 煌黄は悟ったように言う。

「来る頃って、コウちゃん、わかってたの?」

「なんとなくな。仙人のカンというやつじゃ」

 煌黄は自慢げだった。

「それでフクちゃん、あの……何の用かしら?」

 かなみは予想はついているものの確認のため問う。

「かなみさんの不幸をとり払うためにきました! 三度目の正直です!!」

 と答えるかと思った。

「どうか力を貸してください!!」

 しかし、実際の返答は違っていた。

「え? ちから? かす?」

 かなみには意味が分からなかった。

「ここではなんじゃ。話は広い場所でしようではないか」

 煌黄の提案で、かなみ達は人気のない空き地にやってくる。それに、煌黄が人に寄り付かなくなる人避けの結界を敷く。

「さて、これで準備よし」

 一仕事した煌黄は一息入れる。

「人避けまでする必要あるの?」

「それは、フクの頼み事次第じゃな」

 そう言われて、かなみ、煌黄、リュミィ、マニィ、そしていつの間にかやってきたミドリの視線がフクへ集中する。

「頼み事って何なの?」

「はい、かなみさん。あなたの力をお借りしたいのです。甚だ業腹なものですが」

「そういう本音は言わぬが花だと思うけど」

「それは以後気をつけます」

「それで私はどう力を貸せばいいの?」

「おお、貸してくれるのですね」

 フクの返答を聞いて、かなみは「しまった」と思った。

 せめて、内容を聞いてから答えるべきかと反省する。

「あなたの不幸は普通の人間とは比べ物にならないくらい強大で、私の手に負えないほどです」

「そういうこと言われるとキツイんだけど……」

「それでそんな不幸を常にまとっているあんたもまた尋常ではありません。あなたには不幸と戦える力があると思います」

「え、戦う?」

「あなたにはあなた自身の不幸と戦ってもらいます」

「不幸と戦う? どうやって?」

「私が不幸の具現して、その不幸と戦って倒すだけでいいのです」

「なるほど、そうきたか」

 煌黄は感心する。

「どうきたの?」

「つまり、お主はお主自身の不幸と戦うということじゃ」

「だから、意味がわからないけど」

「不幸具現の術じゃ。不幸が実体をもって襲い掛かってくるのじゃ」

「き、危険じゃないの!?」

「おお、危険じゃ。お主の不幸じゃからさぞ強力じゃろうからな。結界も強力なものにしておいたがもつかどうか正直不安じゃ、ハハハ」

「笑い事じゃないと思うけど……」

 かなみは嫌な予感がする。

「ねえ、もしその不幸が襲って、結界が破られて、周りの建物とか壊されたら……」

「――君が弁償する」

 マニィは即座に断言する。

「やっぱり!」

「しかし、成功すれば君の不幸はとり払える。やる価値はあると思うよ」

「不幸ね……私、そんなに不幸なのかしら?」

「そうは思えんがついとらんなと思うときはかなりある。いやあれで不幸だと思えないのは凄いことじゃな。仙人の素質があるぞ」

「ストップ! そういう勧誘は今度にして!」

「うむ、では今度にしよう」

 本当にするつもりだ、と、かなみは思った。

「それでは、かなみさん。準備はいいですか?」

「準備って何すればいいの?」

「特にありません。不幸と戦う心の準備です」

「心の準備なら大丈夫よ。いつでもやっていいわ」

 それを聞いて、フクは驚いた顔をする。

「なるほど。それはありがたいことです。それでは始めましょう」

 フクは浮いて、かなみの顔の前に移動する。

「あれ、首筋じゃないの?」

「この術は対象の人間の正面にいる必要があるのです」

「なるほど……」

 かなみはそう言われると、これから術をかけるのだと緊張する。

「それではいきます。――(こう)!」

 フクは術名を叫ぶ。

 すると、かなみは突風で吹き飛ばされたような感覚が起きる。

 しかし、それが錯覚だったと認識する。

 吹っ飛ばされたのは自分の中にあった『なにか』だと気づく。

 かなみは振り向き、その『なにか』を何だったのかを確認する。

 それは真っ黒な影だった。

 直立していて、こちらを見ている。真っ黒で目がないはずなのに、何故かこちらを視ているのが直感で認識した。

 その影は徐々に光が当たったように色を形成して、輪郭がはっきりしていた。

 頭はネズミ、背中には蝙蝠の翼を生やした悪魔に相応しい容姿をしていた。

「これが、私の不幸?」

「まさしくお主の不幸が実体となって顕現(けんげん)した姿じゃ」

「どうして、こんな姿に?」

「お主が不幸をもたらすイメージがあの姿を形成したんじゃ」

「あれって、ちょっとボクに似てるんじゃないかな?」

 マニィが言う。

「き、気のせいでしょ!? あんた、あんなに立派な体してないじゃない!!」

「普段、君がボクをどういう目でみてるか、わかった気がする」

 マニィはジト目でそう言った後、かなみからそっぽを向く。

「わー! むくれないで! 私の財布の管理、いつも感謝してるから!!」

「ボクのことより、君は自分の不幸に()つことだけ考えてればいいんだよ」

「あ、そう! じゃあ、話はあとでね!」

 かなみは不幸と向き合う。

「不幸とも言いづらいじゃろうから、かなみの不幸ということで、カフコとでも名付けようか」

「適当な名前……」

「なあに、すぐ片をつけるんじゃ、そのくらいでええじゃろ」

「すぐ片をつける……ええ、そうね」

 かなみはそう答えてコインを取り出す。

「マジカルワーク!!」

 コインを放り投げる。

 放り投げられたコインから光が降り注ぐカーテンを形成する。

「愛と正義と借金の天使、魔法少女カナミ参上!」

 黄色の魔法少女が人気のない深夜の空き地に降り立つ。

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