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転生先は悪役令嬢?破滅ルート?そんなことより推し「モブ文官」に全力推し活ですわ!!〜推し活令嬢はハッピーエンドを望まない〜  作者: 逢華
第2章 リリアーナ(11) やっぱり推しは最高ですわ!

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第81話 花の町

「わあ……! 見てくださいませ、お父様! 町のあちこちにお花が咲いていますわ!」


馬車の窓から身を乗り出しそうになりながら、リリアーナは声を弾ませた。


窓の向こうに広がっているのは、色とりどりの花に彩られた町並みだった。石畳の道沿いには小さな花壇が並び、家々の窓辺にも花の鉢が飾られている。風が吹くたび、花びらがひらひらと舞い、町全体が優しい色に包まれていた。


今日のリリアーナは、花の町に合わせた白い旅行用のドレスを着ている。裾には淡い薄紫の刺繍が施され、腰には小さな金色の飾りが揺れていた。腰近くまで伸びた淡い金色の髪は、片側を丁寧に編み込み、白と薄紫のリボンでまとめている。大きなアメジスト色の瞳は、窓の外の景色を映してきらきらと輝いていた。


「ふふっ。リリアーナ、そんなに身を乗り出すと、帽子が飛んでしまうわよ」


隣に座るエレノアが、優しく娘の肩に手を添えた。


深い紫色の長い髪をゆるやかにまとめ、落ち着いた淡い色の旅行用ドレスを身にまとったエレノアは、窓から差し込む光を受けて美しく微笑んでいる。深いアメジスト色の瞳には、娘のはしゃぐ姿を見守る温かな光が浮かんでいた。


「申し訳ありません、お母様。けれど、こんなに素敵な町を見たら、じっとしていられませんもの」


「その気持ちは分かるが、まずは無事に宿へ着こう。花園は逃げたりしないからね」


向かいに座るアルベルトが、穏やかな声でたしなめた。


濃い色の旅行用コートに、きちんと整えたベスト。長身の体に合わせた仕立てのよい服は、侯爵家当主らしい品格を感じさせる。整った顔立ちに浮かぶ表情は落ち着いていたが、娘が楽しそうにしているのを見て、口元には柔らかな笑みが浮かんでいた。


「はい、お父様! わたくし、ちゃんと宿まで我慢いたしますわ!」


「それなら安心だ。もっとも、宿へ着いた途端に飛び出していきそうだが」


「そ、そんなことは……ございませんわ」


リリアーナは胸を張ったものの、窓の外へ視線を戻した途端、また目を輝かせてしまった。


向かい側では、マリーが小さく笑っていた。


栗色の髪を後ろでまとめ、白いエプロンを重ねた侍女服に、旅のための動きやすい上着を合わせている。明るい緑色の瞳は、楽しそうなリリアーナを見ているうちに、つられるように細くなった。


「お嬢様、宿に着きましたら、お帽子もお荷物もきちんと整えますね。お庭へ出るときには、歩きやすい靴にお履き替えになりましょう」


「ありがとう、マリー! お庭にもお花が咲いているかしら?」


「はい。季節のお花を楽しめるお庭があるそうでございます」


「まあ! それは楽しみですわ!」


その隣では、セシリアが静かに窓の外を眺めていた。


白銀の髪は肩のあたりで整えられ、切れ長の灰色の瞳が、町の様子を落ち着いて追っている。黒と白を基調とした侍女服の上には、旅に合わせた上着を羽織っていた。姿勢はいつもどおり美しく、馬車が揺れてもその姿勢は崩れない。


「奥様、宿へ到着するまで、あと少しでございます。お荷物はすでに確認しておりますので、ご安心ください」


「ありがとう、セシリア。あなたがいてくれると、本当に心強いわ」


「奥様のお役に立てるのでしたら、何よりでございます」


「今は奥様でもいいけど、後で昔みたいにちゃんと呼んでね、セシリア」


「わかっております」


セシリアはいつものように淡々と答えたが、エレノアが微笑みかけると、灰色の瞳がほんのわずかに和らいだ。


その様子を見ていたリリアーナは、ふと小さく笑った。


(お母様とセシリアは、やっぱり仲良しですわね。お二人を見ていると、こちらまで嬉しくなってしまいますわ)


やがて馬車は、花壇に囲まれた宿の前でゆっくりと止まった。


♢


「わあ……!こちらのお庭もとっても素敵です!」


宿の扉をくぐったリリアーナは、案内された中庭を見て、思わず声を上げた。


石畳の小道の両側には、白や黄色、薄紫の花が咲いている。中央には小さな噴水があり、その周りを花壇がぐるりと囲んでいた。庭の隅には木製のベンチが置かれ、枝の間から柔らかな日差しが差し込んでいる。


「お嬢様、まずはお部屋でお荷物を置かれてはいかがでしょうか。お庭は逃げませんから」


マリーが、先ほどアルベルトが言ったのとよく似た言葉を口にした。


「まあ、マリーまでお父様と同じことをおっしゃるのね!」


「ふふっ。旦那様のおっしゃるとおりでございますから」


「二人とも、わたくしを子供扱いしていませんこと?」


そう言いながらも、リリアーナの顔には笑みが浮かんでいた。


部屋へ荷物を運び終えると、リリアーナは歩きやすい靴に履き替えた。白いドレスの裾を軽く持ち上げ、庭へ出る準備を整える。


エレノアも帽子をかぶり直し、長い紫色の髪を肩の後ろへ流した。アルベルトは上着の襟元を整え、マリーとセシリアもそれぞれ身支度を確認する。


「それでは、少しだけお庭を歩きましょうか。長旅のあとですもの。無理はしないようにね」

エレノアの言葉に、リリアーナは嬉しそうに頷いた。


「はい、お母様。一緒に参りましょう」


庭へ出ると、花の香りがふわりと鼻をくすぐった。

リリアーナは小道の脇に咲く花を見つけては、足を止めた。


「お父様、こちらのお花をご覧になって! 花びらの先が少し丸くなっていますわ!」


「本当だな。こちらは色の違う花が一緒に咲いているようだ。植えた方が工夫されたのだろう」


「お花にもいろいろな楽しみ方があるのですね!」


アルベルトは娘の隣で足を止め、花壇を眺めた。

エレノアも微笑みながら、リリアーナの編み込まれた髪をそっと整える。


「リリアーナ、リボンが少し緩んでいるわ。せっかく綺麗に結んでもらったのだから、直しておきましょうね。白と薄紫の組み合わせが、今日のお洋服によく似合っているわ」


「本当ですか? お母様にそう言っていただけると、とても嬉しいですわ!」


そのとき、花壇の上を一匹の蝶がひらひらと横切った。


薄い羽を広げた蝶は、リリアーナの目の前を通り過ぎ、少し離れた花の上に止まる。


リリアーナは声を潜め、そっと近づいた。

大きなアメジスト色の瞳が、蝶の羽の動きを追いかける。淡い金色の髪が肩から滑り落ち、薄紫のリボンが風に揺れた。


「お嬢様、あまり近づきすぎますと、飛んでいってしまいますよ」


マリーが小さな声で注意すると、リリアーナは足を止めた。


「分かっていますわ。驚かせないように、そっと見ているだけですもの」


その言葉どおり、リリアーナはしばらく蝶を眺めていた。やがて蝶が羽ばたき、花の向こうへ飛んでいくと、リリアーナは名残惜しそうにその姿を見送った。


「行ってしまいましたわね。でも、明日は大きな花園へ行けるのですもの。きっと、もっとたくさんの蝶に会えますわよね」


「そうだな。明日は花園をゆっくり見て回ろう。ただし、疲れたら休むこと。約束できるね?」


アルベルトが念を押すと、リリアーナは元気よく頷いた。エレノアが笑うと、リリアーナは少し照れたように頬を染めた。


♢


夕暮れが近づくころ、五人は宿の庭をあとにした。


部屋へ戻る途中、リリアーナは何度も振り返って花壇を眺めた。白いドレスの裾が歩くたびに揺れ、編み込んだ金色の髪が背中で柔らかく弾む。


「お嬢様、明日は朝から花園へ向かう予定でございます。今夜は早めにお休みになってくださいませ」


マリーが優しく声をかける。


「ええ、分かっていますわ。明日は今日よりもたくさんのお花を見られるのですもの!」


「リリアーナ、あまり夜更かしをしてはいけませんよ。せっかくの旅行なのだから、元気な姿で楽しみましょうね」


エレノアの言葉に、リリアーナは素直に頷いた。


「明日は家族みんなで楽しもう。お前が見たいものを、ゆっくり見て回ればいい」


「ありがとうございます、お父様!」


リリアーナは満面の笑みを浮かべた。


花の町で迎える、初めての夜。


窓の外では、夕暮れの光が花壇を優しく照らしていた。


(明日もみんなと一緒に過ごせる時間を、い〜っぱい楽しみたいですわ!)


リリアーナは胸の前で両手を重ね、明日への期待に瞳を輝かせた。

この作品が「明日も続きを読もう」と思えるような、日々の楽しみのひとつになれたら嬉しいです!

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