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転生先は悪役令嬢?破滅ルート?そんなことより推し「モブ文官」に全力推し活ですわ!!〜推し活令嬢はハッピーエンドを望まない〜  作者: 逢華
第2章 リリアーナ(11) やっぱり推しは最高ですわ!

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第80話 家族旅行にいきたいですわ!

「お父様、お願いがございますの!」

執務室の扉を開けるなり、リリアーナはアルベルトの机へ駆け寄った。


書類に目を通していたアルベルトが顔を上げる。


「どうしたんだい? そんなに急いで」


「今年のうちに、みんなで旅行へ行きたいのですわ!」


リリアーナは両手を胸の前でぎゅっと握った。

十一歳になってから、毎日があっという間に過ぎていく。


マダム・ヴァレンティノの授業も、王宮への訪問も、シード様への推し活も、どれも大切な時間だ。けれど、来年の春には学園へ入学する。今のように自由に過ごせる時間は、少しずつ減っていくはずだった。


だからこそ、今年のうちにやっておきたいことがある。


「学園が始まる前に、みんなで遠くへ出かけてみたいのです。お父様、お母様と一緒に!」


「旅行か。いい考えだね」


アルベルトは書類を脇へ置き、椅子から身を乗り出した。


「そういえば、家族で泊まりがけの旅行をしたことはなかったな。行き先も日程も、これから相談する必要はあるけれど、私は賛成だよ」


「本当ですの!?」


「もちろん。せっかくの機会だから、みんなが楽しめる旅にしよう」


リリアーナは思わず両手を頬に当てた。


(やりましたわ! 今年の思い出が、また一つ増えますのね!)


「お母様にも、すぐにお話ししてきますわ!」


弾む足取りで部屋を出ようとしたところで、アルベルトが笑いながら声をかけた。


「待ちなさい。廊下は走らないこと」


「……はい。急いで歩きますわ!」


♢


エレノアの部屋では、セシリアが紅茶を用意していた。リリアーナは母の隣へ座ると、旅行の話を一息に伝えた。


「まあ、旅行ですって? 学園に入る前に、みんなで出かけるのね」


「はい! お父様も賛成してくださいましたの。お母様は、どこへ行ってみたいですか?」


エレノアは少し考え、そっと微笑んだ。


「そうね。海の見える町も素敵だし、湖のそばでゆっくり過ごすのも楽しそう。リリアーナが行ってみたい場所も、ぜひ聞かせてちょうだい」


「どちらも魅力的ですわね……!」


候補が増えたことで、リリアーナはますます迷い始めた。その様子を見ていたエレノアが、ふとセシリアへ目を向ける。


「学院ぶりにセシリアと一緒に旅行ができるわね」


セシリアの手が止まった。


「……奥様、私もご一緒してよろしいのですか?」


「もちろんよ。あなたと一緒に出かけられるのを、私も楽しみにしているわ」


セシリアは一瞬、返事を忘れたように黙り込んだ。


やがて、いつもの落ち着いた声で答える。


「……そうですね、奥様。ご一緒できることを嬉しく思います」


「旅行中は昔みたいにエレノアって呼んでね、その方がきっと楽しいわ」


「……かしこまりました」


「マリーも一緒ですわよね?」


リリアーナが振り向くと、控えていたマリーは静かに頷いた。


「はい、お嬢様。お供いたします」


その声はいつもと変わらない。けれど、リリアーナにはマリーの口元がほんの少し緩んだように見えた。


「決まりですわね! あとは行き先を選ぶだけですわ!」


「ふふ。まずは候補を集めてみましょうか」


エレノアの言葉に、リリアーナは大きく頷いた。


♢


自室へ戻ると、リリアーナはマリーと一緒に旅行案内の本を広げた。湖のほとりにある宿、海辺の町、季節の花が咲く庭園。ページをめくるたび、見知らぬ景色が目に飛び込んでくる。


「こちらの湖は、船に乗れるそうですわ! 水の上から景色を眺めるなんて、きっと素敵ですわね」


「海辺の町には市場もあるようですよ。お嬢様がお好きな焼き菓子のお店も見つかるかもしれません」


「それは見逃せませんわ!」


リリアーナは勢いよく次のページを開いた。すると、膝の上に積んでいた本が傾き、何冊かが床へ滑り落ちた。


「あっ!」


慌てて押さえようとしたものの、最後の一冊までぱたんと床に落ちてしまう。


マリーが本を拾い上げながら、くすりと笑った。


「お嬢様、候補を増やす前に、まずは本を一冊ずつご覧になりませんか?」


「……おっしゃるとおりですわ」


リリアーナは頬を赤くしながら、床に散らばった本を受け取った。それでも、ページをめくる手は止まらない。


(あら? この辺り、見た覚えがありますわ……)


地図に載った山あいの町を見て、リリアーナは指を止めた。


ゲームの中で、ある珍しい魔石が手に入る場所として登場した地域だ。


(もしかして、あの魔石が見つかる場所も近いのではありませんこと?)


今すぐ確かめたい気持ちが湧いてくる。

けれど、今回の旅行は魔石を探すためのものではない。みんなで過ごす時間を大切にするための旅だ。


(もし行き先が近くになったら、そのときに考えればいいですわね)


リリアーナは地図の端に小さな印をつけ、案内書を閉じた。


それから、もう一冊の本を手に取る。こちらは王都の文具店や工芸品店を紹介したものだった。


(そうですわ。シード様にも、旅先で何かお土産を探したいですわね)


机の上で使える実用的な品なら、きっと役に立つ。

華やかな飾りよりも、毎日の仕事やお家で使えるものがいい。シード様が手に取るたび、少しでも仕事がしやすくなるような品を見つけたい。


リリアーナは旅行案内の本の隣に、文具の本を並べた。


「マリー、旅行先の工芸品も調べておきたいですわ。使いやすくて、長く大切にできるものがあるといいのですけれど」


「お嬢様のお土産選びは、ずいぶん慎重なのですね」


「当然ですわ。大切な方への贈り物ですもの!」


リリアーナは胸を張った。


♢


その頃、アルベルトは執務室でヴィクトルと向かい合っていた。


「ヴィクトル。旅行の間、私の仕事を頼めるだろうか」


「承知しました。期間と、優先して処理する案件をお知らせください」


「助かるよ。急ぎの決裁は出発前に済ませるつもりだ。私がいない間に判断が必要なことがあれば、君に任せたい」


ヴィクトルは手帳を開き、必要な項目を書き留めた。


「旦那様がお戻りになるまで、責任を持って対応いたします。どうぞ安心してお出かけください」


「ありがとう。君がいてくれるから、こうして家のことにも時間を使える」


アルベルトの言葉に、ヴィクトルは穏やかに頭を下げた。


「私にできることをお任せいただけるのは、ありがたいことです」


アルベルトは机の上の書類を揃えた。


仕事を任せられる相手がいるからこそ、今しかできない時間を大切にできる。旅行の日程が決まったら、早めに準備を進めよう。

そう考えながら、次の書類へ手を伸ばした。


♢


数日後、アルベルトとエレノア、リリアーナは、旅行の候補をまとめた紙を囲んでいた。


湖の町、海辺の町、花の庭園がある地域。


リリアーナが調べた場所には、それぞれ違った魅力がある。


「どこも素敵で、なかなか一つに絞れませんわ……!」


「急いで決める必要はないよ。移動にかかる時間や宿の空きも確認してから、みんなで相談しよう」


アルベルトが候補の紙を手に取る。


「まずは私が日程と移動手段を調べておく。エレノアは宿の希望をまとめてくれるかい?」


「ええ。リリアーナも、行ってみたい場所をもう少し考えておいてね」


「かしこまりましたわ!」


リリアーナは返事をすると、候補の紙を自分の前へ引き寄せた。まだ決まっていない場所の欄には、空白が残っている。


そこへ、行きたい場所を一つずつ書き足していく。


湖の町も、海辺の町も、どちらも捨てがたい。


けれど、どこへ行くことになっても、みんなで過ごす時間が待っている。リリアーナは羽根ペンを握り直し、空白の欄に小さく書き込んだ。


『みんなで行きたい場所』


その文字を見つめてから、次のページを開いた。


旅行の準備は、まだ始まったばかりだった。

今回の話も読んでくださりありがとうございます!

もうすぐブックマークの数が100に届きそうでちょっとドキドキしてます(* ॑ ॑* )

読んでて面白い、キャラクターが可愛い!と思ってもらえるような物語にできればいいな!

では、また次回もよろしくお願いします、ですわ!

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