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転生先は悪役令嬢?破滅ルート?そんなことより推し「モブ文官」に全力推し活ですわ!!〜推し活令嬢はハッピーエンドを望まない〜  作者: 逢華
第2章 リリアーナ(11) やっぱり推しは最高ですわ!

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第68話 同じ場所へ集まる商品

翌日の午後、アルベルトの執務室へヴィクトルが一枚の書類を持ってきた。


「旦那様。昨日の住所について確認が取れました」


「早かったな。それで、誰の建物だった?」


アルベルトは読んでいた書類を閉じ、向かいの椅子を示した。


「名義上の所有者は、ハロルド・ケインという商人です。ただ、ケインは六年前に店を畳んでおり、現在は所有する建物を貸して生活しているようです」


「グラーツ伯爵家の所有ではないのか」


「はい」


ヴィクトルが持ってきた書類を机へ置く。そこには建物の所在地と所有者、それから過去数年の貸し出し先がまとめられていた。


アルベルトは上から順に目を通し、一つの名前で指を止めた。


「借りているのは……この商会か」


「はい。グラーツ伯爵家と長く取引している商会の一つです。フェルナー男爵家から商品を買い付けている商人とは別ですが、双方に取引があります」


「なるほど」


アルベルトは椅子へ深く座り直した。


フェルナー領から商品を買う商人。その商品が、申請されていない住所へ運ばれる。建物を借りているのは別の商会だが、どちらもグラーツ伯爵家と繋がっている。


線は見えてきた。けれど、それだけで不正と決めるには早い。


「この建物を倉庫として使っていること自体に問題は?」


「商品を継続して保管する倉庫として使用しているのであれば、届け出が必要です。ただ、先方が一時的な荷の受け渡し場所だと主張する可能性はあります」


「実際にどう使っているかを確認しないと判断できないか」


「はい」


アルベルトは書類を指先で二度叩いた。


「なら、そこを調べよう。出入りしている荷と商人、それから建物を借り始めた時期も確認してくれ。ただし、向こうに気づかれるようなことはするなよ。今の段階では、不正をしていると決まったわけじゃない」


「承知しました。それと、もう一つございます」


ヴィクトルが別の紙を取り出した。


「先日確認した三領のうち、二領から取引記録の写しが届きました。どちらも同じ商人と五年以上取引を続けています」


アルベルトは差し出された紙を受け取り、材料費、買い取り価格、取引量の順に目を通した。


フェルナー家で見たものとよく似ている。


「こちらも値段が上がっていないな」


「はい。片方の領地は四年前に値上げを求めていますが、断られています」


「理由は?」


「売れ行きが悪い、と」


アルベルトの指が止まった。


「売れ行きが悪い?」


「記録にはそう残っています」


売れ行きが悪いから、買い取り価格を上げられない。それだけなら、おかしくはない。


アルベルトは机の上に二つの資料を並べた。


「ヴィクトル。この領地から買い取った商品も、例の住所へ運ばれていたな?」


「王宮から届いた報告では、一部が同じ住所へ運ばれています」


「買い取り量は?」


「減っておりません」


「……そうか」


売れないから値段を上げられない。


けれど、買い取る量は減っていない。その商品は、申請されていない同じ場所へ運ばれている。


アルベルトは二枚の書類を重ねた。


「調べるべきことが、はっきりしてきたな」


「はい」


「売れ行きが悪いという説明が事実だったのか。それから、あの建物へ集めた商品をどうしていたのか。両方確認してくれ」


「承知しました」


ヴィクトルが資料を揃えて立ち上がる。


まだ答えは出ていない。


けれど、次に見るべき場所は決まった。


♢


その頃、リリアーナは自室の机に向かっていた。

目の前にあるのは、リーネから届いたばかりの手紙。


『リリアーナ様へ。


先日は本当にありがとうございました。


工房のみんなが、リリアーナ様が椅子をとても気に入ってくださったことを喜んでいます。


それから、新しく好きなものを見つけました。


今度お会いした時に、お話ししたいです。』


「新しく好きなもの……!」


リリアーナは手紙を両手で持ち上げた。


「マリー! リーネ様が見つけてくださいましたわ!」


「はい。書いてありますね」


隣で衣類を畳んでいたマリーが笑う。


「何でしょう。お菓子かしら。それとも、また工房の何かでしょうか」


「次にお会いした時までのお楽しみでは?」


「そうですけれど、気になりますわ!」


聞きたい。


今すぐ聞きたい。


でも、次に会った時に話したいと書いてある。


リリアーナは手紙をもう一度最初から読み、最後の一文でまた頬を緩めた。


あの日、自分はリーネ様に言った。次に会う時は、困ったからではなく、会いたいから来てほしい。


「お返事を書きますわ!」


「今からですか?」


「もちろんです!」


リリアーナは便箋を取り出し、ペンを握った。


何から書こうか迷う。フェルナー領から帰ってきてからのこと。家族のこと。


それから。


(あっ!)


ペン先が勢いよく動き始める。


『リーネ様へ。


お手紙ありがとうございます。


新しく好きなものを見つけたと読んで、とっても嬉しくなりました。次にお会いした時、絶対に教えてくださいませ!


それから、フェルナー領で買った焼き菓子をシード様にもお渡ししましたの。


美味しいと仰っていましたわ!』


そこまで書いて、リリアーナは満足げに頷いた。


「完璧ですわ」


「まだ三行ほどしか書いていませんよ、お嬢様」


「一番大切なことは書けましたもの!」


マリーが堪えきれずに笑った。


リリアーナは気にせず、その下へ続きを書き足す。


『次にお会いしたら、今度はわたくしの好きなものもたくさんご紹介しますわ!』


王宮。


本屋。


お気に入りのお菓子のお店もいい。


リーネが喜びそうな場所を思いつくたび、便箋の端へ小さく書き足していく。


「本屋でしょう? それから、お菓子のお店と……王宮にもご案内したいですわね。あっ、マリー。この前のお店も!」


「お嬢様」


「はい?」


「それ、お手紙ですよね?」


リリアーナは便箋を見下ろした。


手紙だったはずの紙には、いつの間にか次にリーネと行きたい場所までびっしり書き込まれている。


「……もう一枚使えば問題ありませんわね!」


マリーの笑い声を聞きながら、リリアーナは新しい便箋へ手を伸ばした。

この作品が、「明日も続きを読もう」と思えるような、日々の楽しみのひとつになれたら嬉しいです!ブクマや☆で応援よろしくお願いします(⋆ᴗ͈ˬᴗ͈)”

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