第65話 書類の中のフェルナー
[日間]異世界転生/転移〔恋愛〕 - 連載中 48位になってました!もう二度とないと思うからすっっごく嬉しかったです!応援ブクマ、評価、ありがとうございました!
数日後、第三文官執務室へ商務局から大きな書類箱が二つ運び込まれた。
「今度は何ですか、室長」
ニールが嫌そうな顔をすると、室長も負けずに嫌そうな顔で蓋を開けた。
「グラーツ伯爵家と関係商会の記録だ。過去三年分の運搬記録と税務記録を照合してほしいとさ。全部調べろって話じゃない。向こうが指定した商会と品目だけだ」
「それでも二箱あるじゃないですか」
「俺に言うな。ほら、分けるぞ」
木工品、布製品、革製品。室長が机ごとに束を分けていき、シードの前には木工品の記録が置かれた。
「キャメロン、お前はこれだ。量が多いから今日中じゃなくていい」
「承知しました」
シードは一枚目を取り、運搬日、品目、数量、申告価格、税額の順に確認していった。数字が合えば確認済みの印をつけ、次の紙へ進む。しばらくして隣のニールが肩を回した頃には、シードの右側には確認を終えた書類がすでに一束できていた。
「相変わらず早いな。こっちはまだ半分も終わってないぞ」
「急いではいませんよ」
「それでそれなら聞かなきゃよかった」
ニールが自分の書類へ戻る。
シードも次の一枚を取った。グラーツ伯爵家と関係する商会。搬入元はフェルナー領。
そこで、紙をめくる指が止まった。
「……フェルナー」
数日前、リリアーナ様が楽しそうに話していた場所だった。友人に工房を案内してもらい、そこで文官向けの椅子まで作られていたという。
シードはそのまま数字へ目を移した。
木製品、百二十七点。搬入先は王都西区の倉庫。税額にも計算にも問題はない。
確認済みの印を押しかけて、止めた。
「……この倉庫」
「どうした?」
「以前、別の書類で見たことがあります」
シードは立ち上がると、室長の机へ向かった。
「室長。この商会の過去の倉庫使用申請を確認してもよろしいでしょうか」
「今の書類に何かあったのか?」
「数字は合っています。ただ、記憶にある倉庫の規模と、ここへ運び込まれている量が合わない気がします。確認してから報告します」
室長は手を止め、シードが持ってきた書類へ目を通した。
「……分かった。記録庫から持ってこい」
(勘弁してくれよ、何にもありませんように!)
「はい」
記録庫から戻ったシードは、三年分の倉庫使用申請を机へ並べた。倉庫の場所も規模も変わっていない。それに対して、今年の搬入記録を横へ置いていく。
一枚、二枚、三枚。
途中からニールも覗き込んできた。
「何かあったか?」
「倉庫は三年間同じです。ですが、今年に入ってから搬入量が増えています。今確認できる分だけでも、前年の一・四倍ほどです」
「倉庫を増やした申請は?」
「ありません」
ニールが眉を寄せた。
「じゃあ、入れた端から別の場所へ運んでるとか?」
「私もその可能性を考えています」
シードは今年の搬入記録をまとめ、その横に倉庫使用申請を置いた。
「ですから、倉庫から出た後の運搬記録を確認できれば分かります」
「ああ、なるほど。それがあれば……」
「室長」
また呼ばれた室長が、今度は露骨に嫌そうな顔をした。
「今度はなんだ」
「追加で確認したい記録があります」
「お前、さっき記録庫から戻ってきたばかりだろ」
「記録庫にはありませんでした」
「もっと面倒なやつじゃないか!」
執務室の何人かが笑った。
シードは気にせず、二種類の書類を室長の机へ並べる。
「この商会へ入っている商品の量が増えていますが、使用している倉庫の規模は三年間変わっていません。すぐ別の場所へ運んでいるのであれば問題ありませんので、その記録を確認したいです」
「……商務局から頼まれた範囲は?」
「入っていません」
「だろうな!」
室長は頭を掻いたが、シードが示した数字を順に追ううちに手が止まった。
「これ、今年だけか?」
「今のところは。ただ、まだ全て確認していません」
「分かった。俺から商務局へ確認を取る。お前は先に頼まれた分を終わらせろ」
「ありがとうございます」
シードが自分の席へ戻ると、ニールがまだ倉庫の書類を見ていた。
「なあ、キャメロン。もし運び出した記録がなかったらどうなるんだ?」
「分かりません」
「気にならないのか?」
「気にはなりますよ」
シードは万年筆を取り、途中だった書類を手元へ戻した。
「ですが、それを確認するために室長へお願いしたんです。今は、こちらを終わらせます」
さらさらとペン先が動き始める。
ニールはしばらくシードを見ていたが、やがて自分の机へ戻った。
その日の午後、室長の机に商務局から一通の返事が届いた。
次の話は11時頃に更新いたします。
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