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転生先は悪役令嬢?破滅ルート?そんなことより推し「モブ文官」に全力推し活ですわ!!〜推し活令嬢はハッピーエンドを望まない〜  作者: 逢華
第2章 リリアーナ(11) やっぱり推しは最高ですわ!

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第64話 グラーツ伯爵家

フェルナー領から戻って数日。

夕食を終えたリリアーナが部屋で本を読んでいると、扉を叩く音がした。


「リリアーナ。まだ起きているか?」


「お父様?」


返事をすると、アルベルトが何枚かの書類を持って入ってきた。


「少し話をしてもいいかな」


「もちろんですわ!」


リリアーナは本を閉じた。

アルベルトが向かいの椅子へ座る。その手にある書類を見て、すぐに思い当たった。


「グラーツ伯爵家のことですの?」


「ああ。少し分かったことがある」


リリアーナは座り直した。フェルナー領から帰る前、アルベルトはグラーツ伯爵家と、その商人について調べると言ってくれた。


リーネと約束したからといって、すぐに全部が解決するわけではない。それでも、何か分かったら知りたかった。


「まず、あの商人が商品を買い付けているのは、フェルナー領だけではなかった」


「ほかの領地からも?」


「ああ。確認できただけで三つある。木工品や布製品、革製品を扱っている小さな領地だ」


アルベルトが書類を一枚、リリアーナの前へ置いた。


「取引の仕方も似ている。長く同じ商人へ商品を売っていて、まとめて大量に買い取ってもらっている。そして、材料費が上がっても買い取り価格はほとんど変わっていない」


「フェルナー家と同じですわ」


「ああ」


リリアーナは書類へ目を落とした。数字だけでは、その領地がどんな場所なのかは分からない。


けれど、フェルナー領なら知っている。


工房で働いていた人たちも、広場に並んでいた商品も見た。もし同じことが、ほかの場所でも起きているのなら。


「その方々も、ほかに売るところがないんですの?」


「一つの領地には確認が取れた。グラーツ伯爵家との取引をやめれば、かなりの商品が売れずに残るそうだ」


「……だから、安くても売るしかない」


「そういうことになるね」


やっぱり似ている。フェルナー家だけが、たまたま不利な取引をしていたわけではないのかもしれない。


「お父様。グラーツ伯爵家は、そんなにたくさん買ったものをどうしているんですの?」


「それを今、調べている」


アルベルトが別の紙を取り出した。


「王都にはグラーツ伯爵家と関係のある商会がいくつかある。だが、確認できた範囲では、仕入れている量と売っている量が合わない」


「合わない?」


「フェルナー領たちから買っている量の方が多いんだ」


リリアーナは首を傾げた。


「残った商品は、どこへ行ったんですの?」


「分からない」


「消えてしまったんですの?」


「そうと決まったわけではないよ」


アルベルトが穏やかに言った。


「別の商会へ売っているのかもしれない。王都以外へ運んでいる可能性もある。今見えている記録だけで、何か悪いことをしていると決めることはできない」


「あ……」


リリアーナは口を閉じた。

原作ではフェルナー家が困っていた。だから、グラーツ伯爵家がその原因なのだと思いかけていた。


けれど、自分が知っているのは未来の結果だけ。


「ちゃんと調べないといけませんのね」


「ああ。分からないことを、分からないまま決めつけてはいけない」


「はい」


リリアーナは頷いた。


「では、どうやって調べるんですの?」


「王宮に残っている記録も確認できればいいんだが」


「王宮?」


「これだけの商品を毎年動かしているなら、運搬や税に関係する記録が残っている可能性がある。侯爵家だけで調べられる範囲にも限界があるからね」


「なるほど……」


王宮には、国中からたくさんの書類が集まる。

リリアーナが普段見ている第三文官執務室にだって、毎日山ほどの書類が運び込まれている。


(……書類)



机に向かい、万年筆を動かす細い指。

一度見た書類の内容まで覚えてしまう人物。


(もしかして、シード様も見たことがあったりして……)


あり得ない話ではない。

でも王宮には文官がたくさんいる。第三文官執務室だけでも、シード一人ではない。


(いえいえ。何でもシード様へ繋げるのはよくありませんわ)


「リリアーナ?」


「はい!」


「どうした?」


「何でもありませんわ!」


アルベルトが不思議そうに娘を見る。

リリアーナは何事もなかったように書類へ視線を戻した。


「王宮の記録を確認すれば、どこへ運ばれたのか分かるかもしれないんですのね?」


「可能性はある。ただ、何年分もあるから、すぐには分からないだろう」


「それでも、どうにかして調べてくださるんですよね?」


「ああ。約束したからね」


その言葉に、リリアーナは笑った。


「ありがとうございます、お父様」


「まだ礼を言うのは早いよ。何も見つからないかもしれない」


「それでもですわ。リーネ様が困ってしまう前に、できることをしてくださっているだけで嬉しいんです」


アルベルトは娘を見てから、書類を揃えた。


「いい友達ができたようだね」


「はい!」


今度はすぐに答えられた。

リーネから次の手紙が届いたら、何が書かれているだろう。また好きなものを見つけてくれているかもしれない。


その時までに、こちらも何か一つでも進んでいてほしい。


「お父様」


「なんだい?」


「何か分かったら、また教えてくださいませ」


「ああ。もちろんだ」


アルベルトが部屋を出たあと、リリアーナは閉じていた本を開いた。


けれど、なかなか文字が頭に入ってこない。


(王宮の記録、ですか……)


誰が見るのかは分からないし、どの部署へ回るのかも知らない。それでも、どうしても一人だけ浮かんでしまう。


(もしシード様のお仕事に関係する書類だったら……)


そこまで考えて、リリアーナは本で口元を隠した。


シード様なら、何に気づくのだろう。そんなことを考えてしまう自分に気づいて、リリアーナは一人で笑った。

この作品が「明日も続きを読もう」と思えるような、日々の楽しみのひとつになれたら嬉しいです!

ブクマや☆で応援よろしくお願いします(⋆ᴗ͈ˬᴗ͈)”


次回《書類の中のフェルナー》ですわ!

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