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転生先は悪役令嬢?破滅ルート?そんなことより推し「モブ文官」に全力推し活ですわ!!〜推し活令嬢はハッピーエンドを望まない〜  作者: 逢華
第2章 リリアーナ(11) やっぱり推しは最高ですわ!

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第62話 みんなでお風呂 ですわ!

フェルナー領での楽しい時間を過ごし、帰ってきたリリアーナは、夕食を終えて部屋へ戻ると、鏡台の前に座った。マリーが髪をほどき、腰近くまである淡い金色の髪へブラシを通していく。


「今日はほとんど絡まっていませんね。毛先まで綺麗ですよ、お嬢様」


「本当? でしたら、マリーのおかげですわ」


(もっと伸びたら、できる髪型も増えますわよね。新しいリボンも欲しいですし……今度マリーと見に行きたいですわ)


「明日はどうしましょう。編み込みにしますか?」


「それは明日の朝、一緒に決めましょう。それよりマリー、今夜はお母様とお風呂へ入りますの」


「奥様とですか?」


「ええ。夕食のときにお願いしましたの。マリーも一緒に入りません?」


ブラシを持っていた手が止まった。


「私もよろしいのですか?」


「もちろんですわ。お母様とマリーと三人で、ゆっくりお話ししたいですもの」


「それでしたら、喜んでご一緒させていただきます」


「決まりですわね!」


(お父様には申し訳ありませんけれど、今日はお母様をお借りしますわ!)


夕食の席でエレノアを誘ったとき、アルベルトは笑って『ゆっくり温まっておいで』と送り出してくれた。


(お父様とお母様、今でも一緒にお風呂へ入りますものね。書斎でも二人でお茶を飲んでいますし、お庭も二人で歩いていますし……本当に仲がいいですわ)


それを思うと、自然に頬が緩む。


(わたくし、お父様とお母様が仲良しなの、大好きです)


マリーと浴室へ向かうと、脱衣室にはすでにエレノアがいた。


「いらっしゃい、リリアーナ。マリーも来てくれたのね」


「はい、お母様!」


いつもは綺麗に結い上げられている深い紫がかった髪がほどかれ、腰を越えてゆるやかに流れていた。深い紫のアメジストの瞳がリリアーナへ向けられる。


(お母様、今日も綺麗ですわ……。お屋敷にいるときは優しいお顔が印象的なのに、夜会でドレスを着たお母様はまた違ってみえるから不思議ですわね)


「どうしたの、リリアーナ?」


「お母様はいつもお綺麗ですわね」


「嬉しいわ。ありがとうリリアーナ。リリアーナもとっても可愛いわ」


「ふふ、お母様に褒めていただくのは何度でも嬉しいですわ」


そのとき、エレノアの隣に立つ人影に気づいた。

エレノアの隣にはお母様の侍女であるセシリアも控えていた。


「セシリアも一緒なのですか?」


「ええ。わたくしから誘ったの。久しぶりに一緒に入りたくなってしまって」


「奥様のお誘いでしたので、ご一緒させていただきます」


「まあ! では四人ですわね」


隣を見ると、マリーの背筋がぴんと伸びていた。


(あら?)


着替えを始めても、マリーはいつも以上に丁寧に服を畳んでいる。視線は何度もセシリアへ向かっていた。


(ふふ。やっぱり緊張していますわね。セシリアのお話をするとき、いつも嬉しそうですもの)


リリアーナも着替えを進めながら、何気なくエレノアへ目を向けた。


(お母様、すごいですわ)


「…………」


もう一度見た。


(いえ、知っていましたけれど! お母様が綺麗なのはずっと知っていますけれど!)


ドレスも宝石もない母を前にすると、視線の置き場に困る。


(これが大人の女性……!)


深い紫がかった長い髪に白い肌。そして、成熟した女性らしい豊かな身体つき。


慌てて視線を外した先で、今度は侍女服を脱いだセシリアが目に入った。


「…………」


いつもの侍女服ではすらりとして見えていたのに、印象がまるで違う。


(細いのに、ちゃんと大人ですわ……!)


思わずマリーを見る。


目が合った。


「……お嬢様」


「……マリー」


どうやら同じことを考えていたらしい。マリーも十分に女性らしい体つきをしている。それでも今は、エレノアとセシリアを交互に見ている。


「わたくしは、これからですわ!」


「お嬢様っ」


マリーが口元を押さえた。


「どうしたの?」


「何でもありません、奥様」


(五年後ですわ。五年後のわたくしに期待します!)


浴室へ入り、身体と髪を洗って湯船へ浸かる。


「あぁ……気持ちいいですわ」


「今日は昼間も冷えていたものね。熱くない?」


「ちょうどいいです」


リリアーナはエレノアの隣まで寄った。


「リリアーナ、髪を見せて」


「はい?」


エレノアが淡い金色の髪を手に取った。


「やっぱり伸びたわ。毛先も綺麗ね」


「マリーにも同じことを言われましたわ」


「毎日丁寧にお手入れしてもらっているのね。ありがとう、マリー」


「私もお嬢様のお髪を整えるのが好きですので」


「わたくしも、マリーにしていただくのが好きですわ。明日の髪型も一緒に決めるんですの」


リリアーナは肩まで湯に浸かり、隣のマリーを見る。


さっきより落ち着いている。

けれど、またセシリアを見ていた。


「マリー」


「はい?」


「セシリアのこと、そんなに気になりますの?」


「えっ」


「ずっと見ていますわよ」


「お嬢様……!」


マリーが恥ずかしそうに俯いた。


「だって、憧れている方と一緒にお風呂へ入るなんて思っていませんでしたから」


「そんなにセシリアが好きなの?」


「はい。とても尊敬しています。何があっても落ち着いていらっしゃいますし……私もいつか、お嬢様をあんなふうに支えられたらと思っています」


セシリアが口を開く。


「マリー」


「はい!」


「あなたはもう、十分にリリアーナ様を支えていると思いますよ」


「えっ」


「リリアーナ様があなたを信頼していらっしゃるのを見れば分かります。ですから、わたくしを真似る必要はありません」


(そうですわ! そこはわたくしも言いたかったです!)


「何がお好きで、何を大切になさって、どんなときに喜ばれるのか。それを知っているのは、いつもお傍にいるあなたでしょう」


(……それなら、マリーは大丈夫ですわ)


「マリー」


「はい、お嬢様」


「マリーは、わたくしの好きなものをたくさん知っていますもの。わたくしだって、マリーの好きなものをもっと知りたいですし」


マリーの緑の瞳がリリアーナへ向いた。


「だから、もっとすごい侍女になるのは大歓迎ですけれど、マリーのままでいてくださいませね」


「……はい。ありがとうございます、お嬢様」


(うん。やっぱりわたくしの専属侍女はマリーがいいですわ)


セシリアが湯船の傍らへ手を伸ばし、水の入った器をエレノアへ差し出した。


「奥様、お水をどうぞ」


「あら、ありがとう。ちょうど喉が渇いていたの」


(……言う前に出てきましたわ)


リリアーナはセシリアを見る。


「セシリア」


「はい」


「お母様のことなら何でも分かるのですか?」


「長くお傍におりますので」


「どのくらいですの?」


考えてみれば、物心ついた頃にはもうセシリアは母の傍にいた。


「お母様とセシリアは、いつからのお知り合いなのですか?」


「あら。リリアーナには話したことがなかったかしら?」


「ありませんわ」


「学院に通っていた頃からよ」


「学院?」


リリアーナはエレノアとセシリアを交互に見た。


「セシリアも、お母様と同じ学院に通っていたのですか?」


「ええ。同い年なのよ」


「では、お友達だったのですか?」


「そうよ。セシリアは昔からとても優秀だったの。先生方からも一目置かれていてね」


「奥様。昔のことでございます」


「『氷の才女』と呼ばれていたのよ」


「氷の才女!」


(白銀の髪に灰色の瞳で、何があっても動じないセシリア……似合いすぎですわ!)


「格好いいですわ!」


隣ではマリーまで目を輝かせていた。


「昔からすごかったんですね、セシリアさん」


「呼び名だけのことでございます」


「では、お母様は?」


「わたくし?」


「絶対に何かありましたでしょう?」


「さあ、どうだったかしら」


「学院の紫薔薇でございます」


セシリアが答えた。


「セシリア」


「事実でございますので」


(自分の『氷の才女』は流したのに、お母様の方は一瞬でしたわね)


リリアーナはエレノアを見た。


深い紫のアメジストの瞳。


濡れた深い紫がかった長い髪が、肩から背中へ流れている。


(学院の紫薔薇……)


夜会で父の隣に立つ母の姿が浮かんだ。


「お母様にぴったりです!」


「リリアーナまで」


「だって本当に綺麗ですもの。今だってこんなに綺麗なのに、学院に通っていた頃のお母様なんて、絶対に目立っていたでしょう?」


「わたくしより美しい方はいくらでもいたわよ」


「いいえ」


セシリアが答えた。


早い。


「少なくとも、わたくしは存じません」


「セシリア?」


「……失礼いたしました」


(ん?)


セシリアの顔はいつも通りだった。


「それで、お二人はどうやって仲良くなったのですか?」


「最初はね……」


「奥様」


セシリアが静かに止めた。


「そのお話でしたら、また今度ゆっくりなさいませんか?」


「あら、どうして?」


「リリアーナ様がのぼせるといけませんので」


「それもそうね。短く話せることでもないもの」


「では、今度絶対に聞かせてくださいませ!」


「ええ。約束するわ」


(氷の才女と学院の紫薔薇が、どうやってお友達になったんでしょう。気になりますわ!)


「それにしても、こうして四人で入るのも楽しいわね」


「わたくしもです。お母様、また一緒に入りましょう」


「もちろんよ」


「マリーもですよ」


「はい。ぜひ」


リリアーナはエレノアの肩へ頭を預けた。


「お母様」


「なあに?」


「もう一度、髪を撫でてくださいませ」


「ふふ。甘えん坊ね」


「今夜くらいいいでしょう?」


「今夜だけじゃなくてもいいのよ」


エレノアの指が、濡れた淡い金色の髪をゆっくり撫でていく。


(気持ちいいですわ……)


目を閉じると、お母様の指先の感覚がよく伝わってくる。今夜はまだ、もうちょっと話していたかった。


お母様と。


マリーと。


それから、さっきから『学院の紫薔薇』という言葉が出るたびに、ほんのちょっとだけ嬉しそうに見えるセシリアとも。


(……やっぱり気になりますわね)


氷の才女と、学院の紫薔薇。


(今度ゆっくり全部聞かせていただきますわ!)

ブックマークが50人になりました、すっごい嬉しいです!!一人でも多くの方に読んでもらえるように、これからも一生懸命書いていきますので、リリアーナ達の成長を一緒に見守ってください(˶' ᵕ ' ˶)

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