↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生先は悪役令嬢?破滅ルート?そんなことより推し「モブ文官」に全力推し活ですわ!!〜推し活令嬢はハッピーエンドを望まない〜  作者: 逢華
第2章 リリアーナ(11) やっぱり推しは最高ですわ!

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
64/89

第60話 フェルナー領のお買い物

工房を出ると、リーネ様が次に案内してくれたのは、領主館へ戻る道から外れたところにある広場だった。


「こちらにも、見ていただきたいものがたくさんあるんです」


木工品や布製品を扱う店が集まっているらしい。工房で見た椅子とは違い、普段の暮らしで使う小物が多いと聞けば、行かない理由なんてない。


マリーにも一緒に来てもらい、三人で広場へ向かう。


「工房で作られた小箱や櫛もありますし、向こうのお店には刺繍の小物があります。あちらは焼き菓子のお店で……」


広場へ入ると、右を見ても左を見ても店がある。軒先に木工品を並べた店、その隣には色とりどりの布が揺れていて、さらに向こうからは甘い匂いまで流れてくる。


困った。全部気になる。


「リーネ様、順番に全部見てもよろしいですか?」


「はい! わたしも、たくさん見ていただきたいです」


最初に入った店には、小箱や櫛、髪留め、手鏡などが並んでいた。


同じ木で作られていても、木目の出方が違う。花や鳥が彫られているものもあれば、形を生かして磨いただけのものもあり、眺めているだけでも楽しい。


その中で、淡い木に白い花を彫った髪留めが目に留まった。


「可愛い……」


手に取ってみると、花びらの一枚一枚まで丁寧に彫られている。


自分が使うなら、もう少し色の濃い木も似合いそうだ。そう考えていたところで、隣にいるマリーの髪が目に入った。


赤みを帯びた栗色。


絶対にこちらの方が似合う。


「マリー、こちらへ来てくださいませ」


「はい、お嬢様」


髪留めをマリーの髪へ合わせてみると、淡い木の色が綺麗に映えた。


「やっぱり。こちらをいただきますわ」


「お嬢様がお使いになるのでは?」


「マリーの方が似合いましたもの」


自分用を探していたはずなのに、いつの間にかマリーのものを選んでいた。でも、これを見つけてしまったのだから仕方がない。


店の女性に包んでもらい、マリーへ渡す。


「ありがとうございます。大切に使わせていただきます」


「マリーに似合って、絶対に可愛いですわ!」


マリーの髪に合わせたところをもう一度想像していると、リーネ様が柔らかく笑っていた。


「リリアーナ様は、本当にマリーさんがお好きなんですね」


「ええ。大好きですわ!」


けれど、今日はマリーのものばかり見ている場合ではない。せっかくリーネ様が案内してくださっているのだから、リーネ様のことももっと知りたい。


次に入った店には、刺繍の入った布小物が並んでいた。


花や木の実を刺した袋、ハンカチ、細い布飾り。同じ花でも糸の色や形が違っていて、作った人の好みまで出るのかもしれない。


「リーネ様は、どちらがお好きですの?」


リリアーナが尋ねると、リーネ様は棚の中から白い花を刺した小さな袋を選んだ。


「こういうものが好きです。わたし白い花が好きなんです」


白い花。


「では、わたくしはこちらをいただきます」


「その袋ですか?」


「ええ。リーネ様がお好きな白いお花でしょう?」


今日ここへ来たことを思い出せるものが一つ欲しかった。リーネ様の好きな花なら、ちょうどいい。

包んでもらった袋を受け取ると、リーネ様が嬉しそうにそれを見ている。


手紙だけでは知らなかったことが、今日だけでどんどん増えていく。


白い花が好きなこと。工房だけではなく、この辺りの店にもよく来ること。


もっと知りたい。


店を出たところで、今度は甘い香りが鼻をくすぐった。


振り向けば、籠いっぱいに焼き菓子を並べた店がある。


「リーネ様。あちらは?」


「焼き菓子のお店です」


「おすすめはありますの?」


「あります!」


今まで以上に声が弾んでいる。

店先へ行くと、丸い焼き菓子や細長いもの、砂糖をまぶしたものまで並んでいる。


リーネ様が選んだのは、砕いた木の実を練り込んだ丸い焼き菓子だった。


「わたしは、これが一番好きです」


「では三つくださいませ」


自分とリーネ様とマリーの分を買い、広場の端でいただくことにする。


表面はさっくりしているのに、中は柔らかい。噛むたびに木の実の香りが広がった。


「美味しいですわ!」


「本当ですか?」


「ええ。帰る前にもう一つ買います」


リーネ様の顔がぱっと明るくなった。


自分の好きなものを気に入ってもらえるのが嬉しいのだろう。


リリアーナも嬉しかった。


今日だけで、リーネ様の好きなものをいくつも知れた。工房に白い花、この焼き菓子。ほかにもあるなら、もっと知りたい。


「広場の奥にもお店がありますよ」


「ぜひ見たいですわ」


焼き菓子を食べ終えてから、三人で奥へ向かった。


木彫りの動物を並べた店では、リーネ様と一緒に小さな鳥を見比べた。布製品の店では、マリーが珍しい編み方の袋を見つける。


王都なら、もっと大きくて立派な店はいくらでもある。


でも、ここにはリーネ様がいる。


「あちらは昔からあるお店です」


「この小箱は、さっきの工房の方が作ったものですよ」


そう教えてもらうたびに、ただ並んでいるだけだった品物が、少しずつ身近になっていく。


工房だけ見て帰らなくてよかった。


木彫りの小鳥を棚へ戻したところで、広場の入口から大きな荷車が入ってきた。


一台、その後ろにもう一台。


店の人たちも荷車に気づき、何人かが表へ出ていく。


「大きな荷車ですわね」


「いつもの商人の方だと思います」


「いつもの?」


「はい。フェルナー家と昔からお付き合いがある方です。領内で作ったものを、まとめて買ってくださるんですよ」


リーネ様にとっては見慣れた光景らしい。


荷車から降りてきた男も、店の主人たちと親しそうに挨拶を交わしていた。連れてきた者たちが空の木箱を運び出し、店先の商品が次々と集められていく。


最初は木工品だった。


櫛や小箱に混じって、見覚えのある髪留めが運ばれていく。


「マリー。先ほどの髪留めですわ」


「ええ。同じものですね」


マリーに買ったものと同じ髪留めが、何個もまとめられている。


布製品の方には、リーネ様が好きだと教えてくれた白い花の刺繍もあった。


さっき二人で見ていたものが、木箱の中へどんどん収まっていく。


「こちらは王都にも行きますの?」


「どこへ運ばれるかまでは分かりません。でも、王都で売られるものもあると思います」


それなら、帰ったあと探してみたい。


同じものを見つけたら、リーネ様へ手紙を書こう。


そんなことを考えながら眺めていると、品数の確認をしていた商人と店の主人が代金の話を始めた。


何個でいくら。


こちらはまとめていくら。


聞こえてきた金額に、リリアーナは商人の前に並んだ品を見直した。


(……安くありません?)


まとめてたくさん買うなら、店頭の値段より安くなる。


それでも、差が大きい。


先ほどマリーに買った髪留めと同じものもあるから、余計に分かりやすかった。布製品も同じで、数をまとめているとはいえ、さっき店で見た値段から随分下がっている。


「リーネ様、あの方はいつもこのくらいのお値段で買われるのですか?」


「はい。たくさん買ってくださいますから」


「フェルナー家から王都へ直接お売りすることはありませんの?」


「王都にはお店がありませんし、遠くへたくさん運ぶのも難しいので、昔からあの方たちにお願いしています」


なるほど。


この商人が来れば、領内で作ったものを一度にたくさん買ってもらえる。


店の人たちが親しそうなのも、長い付き合いがあるからなのだろう。


それでも、リリアーナの中に引っかかったものは消えなかった。


今日見てきた品物は、どれも悪くない。職人が丁寧に作っていたし、実際に自分も欲しいと思った。マリーへの髪留めも買ったし、リーネ様の好きな白い花の刺繍も気に入った。


それを荷車二台分も買っていく商人がいるのだから、売れていないわけではない。


原作のリーネ様は、家が金銭的に苦しくなったことで侯爵令嬢リリアーナへ近づいてくる。


けれど、今日自分が見たフェルナー領には職人がいて、店には商品がたくさん並んでいる。それを買うために、荷車を二台も連れてくる商人までいる。


リリアーナは、積み込まれていく木箱を見た。


(もしかして……原作でフェルナー家がお金に困っていたのって、これが原因ですの?)


商品が売れなかったのではなく、作ったものを安く手放していたからだとしたら、今日見たものと原作の話が繋がる。


「リリアーナ様?」


リーネ様に呼ばれて、そちらを見る。


「どうかなさいました?」


「リーネ様。お父様たちは、領主館にいらっしゃいますわよね?」


「はい。お話をされていると思います」


この値段が本当におかしいのか、リリアーナには判断できない。けれど、今日見た品物と取引の金額を伝えれば、お父様なら分かるはずだ。


「わたくし、お父様に聞いてみたいことができました」


「では、領主館へ戻りますか?」


「はい。……あ、その前に焼き菓子を買ってもよろしいですか?」


帰る前にもう一つ買うと決めていた。


リーネ様に教えてもらった焼き菓子を包んでもらい、三人で領主館へ向かうのだった。

この作品が「明日も続きを読もう」と思えるような、日々の楽しみのひとつになれたら嬉しいです!ブクマや☆で応援よろしくお願いします(⋆ᴗ͈ˬᴗ͈)”


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。