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破滅ルート回避?そんなことより推しの「モブ文官」に全力で推し活ですわ!そしたら世界最強の黒幕になっちゃいましたの!!  作者: 逢華 (最後の挑戦)
第2章 リリアーナ(11) 推し活は王宮を動かし始める

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第47話 聞いたことのある名前

オスカーが第二文官執務室へ戻ってきたのは、席を外してから二時間ほど経った頃だった。


抱えていた書類を近くの文官へ渡し、自分の席へ向かう。その途中でシードのいた場所へ目を向けると、椅子は机の中へ戻され、最初に渡した資料だけが綺麗に置かれていた。


「キャメロン君は?」


「第三から来てた子なら、少し前に帰ったぞ。仕事が終わったので失礼しますって」


「……帰った?」


確かに、終わったら帰っていいとは言った。


だが、シードへ渡したのは臨時人員配置表だ。通常業務に必要な人数を残しながら、受付や案内へ人を割り振り、休暇や勤務時間まで確認しなければならない。第二へ来たばかりの新人が、二時間程度で終わらせられる仕事ではない。


(ベテランでもこんな早く終わらないぞ。まさか、分からなくなって途中で諦めたんじゃないだろうな)


そう思ったものの、オスカーはすぐに眉を下げた。


最初の仕事をあまりにも簡単そうに終わらせるものだから、意地になって難しいものを渡したのは自分だ。しかも、分からなければ聞けと言っておきながら、その直後に二時間も席を外している。


(……俺が悪いな)


明日キャメロン君が来たらちゃんと謝って、もう少し簡単なところから教えよう。

そう考えながら自分の席まで戻ったオスカーは、机の上に置かれている書類を見て足を止めた。


「……ん?」


見覚えのある表紙だ。手に取ってみると、自分がキャメロン君へ渡した臨時人員配置表だ。一番上には小さな紙まで添えられている。


『ご不在でしたので、こちらへ置かせていただきます。ご確認をお願いいたします。 シード・キャメロン』


「終わったのか?」


オスカーは椅子へ座ると、すぐに中身を確認した。


必要な人数はすべて配置されている。休暇予定者の名前はなく、通常勤務との時間の重複もない。受付や案内には経験者が最低一人ずつ入り、そのうえで各部署に残すべき人数まできちんと確保されていた。


一通り確認しても間違いは見つからない。

最初から確認する。何度見ても結果は同じだった。


「……本当に全部合ってる」


思わず声が漏れた。

だが、驚いたのはそれだけではない。

配置表の最後に、シードが書いた短い補足があった。


『西側受付のみ、過去三回の配置では午後の来訪者が増えているため、交代要員を一名追加しております。不要であれば通常配置へ戻してください』


「過去三回?」


オスカーは思わず資料棚を見た。


確かにシードには、過去の配置表もそこにあると教えた。だが、あれは分からないところがあった時に参考にするためのものだ。三回分すべて確認しろとは一言も言っていない。


気になって過去の記録を取り出してみると、シードの補足通りだった。三回とも午後から西側の来訪者が増えており、そのうち一度は予定していた人数では足りず、別の受付から一人回している。


オスカーは記録と配置表を並べたまま、しばらく動けなかった。


今日初めて第二文官執務室へ来た新人が、手順をまとめた資料を読み、最初の仕事を終わらせ、そのあと二時間も経たないうちに過去の記録まで調べて、この配置表を完成させた。


そして、自分が言った通りに終わったから帰った。


「……嘘だろ」


「さっきから何を一人で驚いてるんだ?」


向かいの席から声をかけられ、オスカーは顔を上げた。


同僚の文官が、不思議そうにこちらを見ている。


「今日、第三から応援に来た若い子がいただろ」


「ああ。それがどうしたんだ?」


「これ、あいつに渡した仕事だ」


オスカーが配置表を差し出すと、相手は軽い調子で受け取った。


「お前、これを渡したのか。来たばかりのやつにこれは……って、進んではいるみたいだが、途中までか?」


「全部だ」


「全部?」


「俺が席を外してる間に完成させて、帰った」


同僚は一度オスカーを見たあと、冗談だと思ったのか小さく笑った。だが、配置表を確認し始めると、その表情が少しずつ変わっていく。


「休暇の確認も終わってるな。勤務時間も……合ってる。経験者もちゃんと入れてあるじゃないか」


「最後も見てみろ」


言われた通り補足まで読んだ同僚が、今度こそ黙った。


「これ、過去の記録まで確認したのか?」


「ああ。俺もさっき確かめた。全部合ってる」


「……今日初めて来たんだよな?」


「俺も朝、本人に聞いたよ」


二人でもう一度、机の上の配置表を見る。


最初に渡した簡単な仕事なら、覚えが早い新人で納得できた。だが、これは違う。普段から第二で働いている者でも、条件を一つずつ確認しながら作る仕事だ。


「名前、なんて言った?」


「シード・キャメロン」


答えたところで、オスカーは自分の口にした名前に引っかかった。


どこかで聞いたことがある。


第三文官執務室の新人。


最近、その条件に当てはまる名前を聞いたような気がする。


「シード・キャメロン……キャメロン……」


記憶を辿っているうちに、少し前に王宮内で話題になった出来事へ行き着いた。


「……ヴェルデ商会」


「え?」


「思い出した。ヴェルデ商会の件で、最初に数字の食い違いを見つけた新人だ」


複数の書類に残っていた数字のずれ。その共通点に気づき、確認を上げたことで監査へ回るきっかけを作った新人文官。


その名前が、シード・キャメロンだった。


「ああ! 第三にいるっていう、あの新人か!」


同僚も思い出したらしく、驚いた顔で配置表を見る。


噂を聞いた時、オスカーは数字に強い新人がいるらしいとしか思っていなかった。第三で毎日似たような書類を扱っているうちに、偶然違和感に気づいた可能性だってある。


だが、今日の仕事に偶然はない。


初めて来た部署で、初めて見る書類を渡され、必要なことを自分で調べて、ここまで仕上げて帰ったのだ。


「……なるほどな」


オスカーはようやく、第三の室長がシードを応援に寄越した理由が分かった気がした。


朝はよりによって新人を寄越してきたと思った。

今はもう、そんなことは思わない。

むしろ気になるのは別のことだった。


机の横には、人手不足のせいで後回しになっている仕事がまだ残っている。今日渡したものより確認項目が多く、手をつけるだけでも時間がかかる書類もある。


オスカーはその束を見てから、シードが使っていた空席へ目を向けた。


応援は、あと二日。


「……明日は、どこまで任せてみようか」


先程までもう少し簡単なことを教えればいい、と考えていたのとは違う。


明日、シードが来るのをオスカーは楽しみにしているのだった。

ここまで読んでいただきありがとうございます!

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続きを読んでもいいなと思ってくれたら是非、ブックマークや星での応援をよろしくお願いします、ですわ!

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