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破滅ルート回避?そんなことより推しの「モブ文官」に全力で推し活ですわ!そしたら世界最強の黒幕になっちゃいましたの!!  作者: 逢華 (最後の挑戦)
第1章 リリアーナ(10) 推しを見つけましたわ!

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第35話 今日だけは甘えさせてくださいませ


朝食は、いつもの半分も食べられなかった。


厨房で作ってもらった柔らかな粥なら食べられると思ったのに、いざ目の前にすると食欲が湧いてこない。それでも薬を飲むためには何か入れた方がいいと言われ、リリアーナはベッドの上で身体を起こした。


自分で食べるつもりでスプーンを持ったものの、数口食べたところで腕が重くなってくる。


「マリー。病気というのは暇なのに、何もしたくなくなるのですね。いつもなら暇があれば何かしたいと思うのに、不思議ですわ」


「それだけお身体が休みたがっているのでございますよ。今日はお勉強も王宮のことも忘れて、何も考えずにお休みくださいませ。もちろん、シード様のこともです」


最後にとんでもない条件が足された。


リリアーナはマリーを見る。


「シード様のことまで考えないのは無理ですわ。そこだけは別のお話でしょう?」


あまりにも真顔で返されたものだから、マリーはとうとう笑ってしまった。


そのまま主人の手からスプーンを受け取り、器を持ち直す。


「では、せめてお嬢様が元気になってから考えてくださいませ。今は食べることだけに集中なさってください」


熱があるだけなのに、何をするにも普段より時間がかかる。数口食べるだけで身体を起こしているのがつらくなり、食べ終える頃にはまた横になりたくなっていた。


マリーに背中を支えてもらいながら枕へ身体を預けると、冷たい布が額へ置かれる。


それが気持ちよくて、リリアーナは目を閉じた。


(何もしなくていいと言われると、逆にいろいろ考えてしまいますわ)


フェルナー家で父は今頃何を話しているだろうか、リーネは自分が来なかったことをどう思っているだろう。


それから第三文官執務室では、シード様が今日も書類に向かっているはずだ。


「……シード様、ちゃんと休憩されているでしょうか」


額の布を替えていたマリーの手が止まった。


「今、一番休まなければならないのはお嬢様でございますよ。ご自分は熱を出して寝込んでいらっしゃるのに、まだシード様のお仕事を心配なさるのですか?」


言われてみればその通りだった。今日は自分の方がベッドから出ることすら許されていない。

それなのに、シードが無理をしていないか気になっている。


「……わたくし、人のことを言えませんわね」


自分でもおかしくなって、布団の中で笑った。マリーもつられて笑いながら、頬にかかった髪を耳へ避けてくれる。その手つきが優しくて、リリアーナの瞼が重くなってきた。


いつもなら、まだいくらでも話していられるのに。


眠りに落ちる前、リリアーナはベッドのそばにいるマリーへ手を伸ばした。


「マリー……わがままを言わせてください。わたくしが眠るまで手を握っててほしいのですわ」


今だけは、一人になるのが嫌だった。


マリーは伸ばされた手を迷わず握った。


「もちろんでございます。お嬢様がお休みになるまで、ここにおりますから安心してください」


その言葉を聞いて、リリアーナはようやく身体から力を抜いた。


握っていた手の力がだんだん弱くなり、しばらくすると小さな寝息が聞こえてくる。


マリーは手を離さなかった。


眠っているリリアーナの頬には、まだ熱が残っている。いつもなら朝から元気に屋敷の中を歩き回り、王宮へ行けばシードのために何かできないかと考えている主人が、今日はこうして大人しくベッドに横になっている。


コンコン、と控えめに扉が叩かれたのは、そんな時だった。


マリーが振り向くと、扉がわずかに開き、屋敷の侍女が顔を覗かせた。


「マリーさん、少しよろしいですか?」


声を抑えて呼ばれたものの、マリーは立ち上がらなかった。


眠っているリリアーナへ目を向けてから、握られたままの手を見る。


「急ぎのご用件でしょうか?」


「いえ、急ぎではありません。あとでも大丈夫です」


「でしたら、申し訳ありませんが後ほど伺います。今はお嬢様のおそばにいたいので」


侍女はベッドで眠るリリアーナを見て事情を察したのか、静かに頷いて扉を閉めた。


再び二人きりになった部屋で、マリーは眠っている主人へ向き直る。


頬にかかっていた金色の髪をそっと避けると、リリアーナは気持ちよさそうに眠ったまま、握っている手へ頬を寄せてきた。


その姿に、マリーの頬が自然と緩む。


王宮へ行けばシードのことばかり考えて、何か思いつけばすぐに動き出す。最近ではアルベルト様から将来について聞かれ、今度はフェルナー男爵家のことまで気にかけていた。


十歳なのだから、もう少しくらい何も考えずに遊んでいてもいいのに。


それでも、この子は誰かのためとなると一生懸命になってしまう。


「本当に、頑張り屋さんなんですから」


眠っているリリアーナに聞こえないよう、マリーは小さな声で呟いた。


そして、握っている小さな手を両手で包む。


「早く元気になってくださいね、お嬢様」


この作品が「明日も続きを読もう」と思えるような、日々の楽しみのひとつになれたら嬉しいです!


次の話は11時に更新予定です。



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