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破滅ルート回避?そんなことより推しの「モブ文官」に全力で推し活ですわ!そしたら世界最強の黒幕になっちゃいましたの!!  作者: 逢華 (最後の挑戦)
リリアーナ(10) 推しを見つけましたわ!

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第36話 マリーはお姉様

リリアーナが目を覚ましたとき、窓から差し込む光の向きが変わっていた。


ぼんやりしたまま顔を横へ向けると、ベッドのそばに置かれた椅子へマリーが座っていた。膝の上には本が開かれている。


「……マリー」


「お目覚めですか。朝よりお顔の色もよくなっていますね。お水をお持ちしますので、身体を起こしましょうか」


背中を支えてもらい、水を飲む。朝は飲み込むだけでも痛かった喉も、今はずいぶん楽になっていた。


「熱も下がってきていますよ。ですが、今日はこのままお休みくださいませ」


「分かりましたわ。それよりマリー、ずっとここにいてくださったのですか?」


「お嬢様が目を覚ましたとき、誰もいなかったら寂しがられるでしょう?」


からかわれているのに、今日は否定する気になれなかった。


「……ありがとうございます」


「どうされたのですか、急に」


「急ではありませんわ。ずっと言おうと思っていたのです」


王宮へ行きたいと言ったときも、シード様のために椅子を作りたいと言ったときも、マリーは何も言わず付き合ってくれた。


「わたくしが好き勝手に走り回るたび、マリーはいつも助けてくださいますでしょう? 職人を探してくださったり、お菓子を用意してくださったり……わたくし一人では、シード様にしてあげられなかったことがたくさんあります」


「お嬢様のしたいことをお手伝いするのも、わたくしのお仕事ですから」


「それでも、マリーがいてくださって本当によかったですわ」


恥ずかしかったけれど、今度は目を逸らさなかった。


「だから、いつもありがとうございます」


「……お嬢様」


握った手を、マリーが優しく包み返してくれる。

その手の温かさに、リリアーナはふと思った。


「マリーは、なんだかお姉様みたいですわね」


「お姉様、ですか?」


「ええ。わたくしにはお姉様はいませんけれど……きっと、いたらこんな感じなのだと思いますの。困ったときは助けてくださって、わたくしが変なことを始めても最後まで付き合ってくださって、それでいて駄目なことはちゃんと叱ってくださるでしょう?」


マリーは包んでいたリリアーナの手を少しだけ強く握る。


「それでしたら、わたくしはずいぶん世話焼きなお姉様ですね」


「そこがいいのですわ」


今度はリリアーナが笑った。


「ですから、これからもよろしくお願いしますわ。マリーお姉様」


「まあ……」


さすがのマリーも困ったように笑った。


「その呼び方は、少々恥ずかしゅうございます」


「では、二人きりのときだけにします?」


「そういう問題ではございませんよ、お嬢様……

じゃあ、お姉ちゃんからのお願い、身体を壊すほど頑張ることだけはお許ししません」


「……はい。約束しますわ」


マリーが笑う。


その顔を見ていると、胸の奥が温かくなった。



夕方になると、アルベルトが帰ってきた。


「お父様、フェルナー男爵とのお話はどうなりましたの?」


「ちゃんと話してきたよ。工房のことも、これから進められそうだ」


「本当ですの!」


思わず身体を起こすと、アルベルトに「病人が飛び起きるんじゃない」と布団へ戻されてしまった。


「詳しい話は元気になってから聞かせてあげるから、今日は安心して休みなさい」


「では、一つだけ。リーネ様にはお会いになりましたの?」


「いや。今日はフェルナー男爵と仕事の話だけだ。

リーネ嬢に会いたがっていたのはリリアーナだろう?お前が元気になってから会えばいい」


「わたくしが風邪で行けなくなったことは……?」


「もちろん伝えてあるよ」


「よかった……」


今日は会えなかった。

けれど、もう会えないわけではない。


元気になったら、今度こそ自分で会いに行こう。そして今日のことを謝って、ちゃんと話をしてみたい。


「だから今は風邪を治すこと。いいね?」


「はい、お父様」



「明日には治りますかしら」


「そのためにも、今夜はゆっくりお休みくださいませ」


アルベルトが部屋から出て行ったあとも、マリーは変わらずベッドのそばにいてくれた。


「元気になったら、お父様からフェルナー家のお話を聞いて、リーネ様にもお会いしたいですわ。それから王宮にも……」


そこまで言ったところで、もう一人会いたい人が浮かんだ。


「……シード様にも、数日お会いしておりませんわね」


それなのに、ずいぶん長いこと会っていないような気がする。


「シード様はちゃんとお仕事をしていらっしゃいますよ。お嬢様が元気になれば、また会いに行けます」


「そうですわね」


早く元気になろう。

王宮へ行って、第三文官執務室のみんなの顔も見たい。


そして何より、シード様がいつもの席で書類を捌いている姿を見たい。


そう考えているうちに、また瞼が重くなってきた。


「……マリー」


「はい」


「マリーが風邪を引いたら、今度はわたくしが看病いたしますわ」


「まあ。それは心強いですね」


「任せてくださいませ。お粥だって……わたくしが……」


そこまで言ったところで声が途切れ、すぐに小さな寝息が聞こえてきた。


マリーは眠ってしまったリリアーナの手を握ったまま、そっと布団を掛け直した。


マリーは空いた手でリリアーナの髪を撫でる。


「では、元気になったらお粥の作り方から覚えましょうね」


リリアーナは起きる様子もなく、そのまま気持ちよさそうに眠っていた。



娘の様子を見に来たエレノアは、僅かに開いていた扉から部屋の様子を見ていた。


ベッドではリリアーナが安心しきった顔で眠り、その手を握るマリーがそばにいる。


エレノアは二人をしばらく見つめると、何も言わずに微笑んだ。そして起こさないよう、開いていた扉をゆっくりと閉めた。



「リリアーナは?」


声を掛けられて振り向くと、廊下の先にアルベルトが立っていた。先ほど様子を見に来たばかりなのに、どうやらまた気になって戻ってきたらしい。


「眠ったわ。マリーがそばにいてくれているから大丈夫よ」


「そうか」


安心したように頷きながらも、アルベルトの視線は閉じたばかりの扉へ向いている。


「……熱を出したのは久しぶりだからな」


娘の前ではいつも通りに振る舞っていたくせに、やはり心配だったらしい。


「大丈夫よ。あの子、明日にはまた王宮へ行きたいと言い出すわ」


「それはそれで困るんだが」


二人でもう一度娘の部屋を見る。


扉の向こうからは何も聞こえてこない。


今夜くらいは、あの子も大人しく眠ってくれるだろう。


「行きましょう、あなた」


「ああ」


エレノアはそんな夫の腕に自分の腕を絡めた。

二人は娘をマリーに任せ、並んで廊下を歩いていった。


ブックマーク、星、ありがとうございます!

Ptが増えて月間ランキングも徐々に上がってきました(ᐢ ˙꒳˙ ᐢ)ランキングが上がれば作品が見つけてもらいやすくなるので、よろしくお願いします。ポ⃝チ⃝ッ⃝(o'▽')σ՚՚

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