表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
破滅ルート回避?そんなことより推しの「モブ文官」に全力で推し活ですわ!そしたら世界最強の黒幕になっちゃいましたの!!  作者: 逢華 (最後の挑戦)


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
30/32

第27話 わたくしのお父様

月間280位、日間195位になってました!

ヤタ───ヽ(˶'▽'˶)ノ───ッ!!

ありがとうございます!では、本編をどうぞ

「では本日は、王国の貴族制度について学んでいきましょう」


午前の授業が始まってしばらくした頃、家庭教師のマダム・ヴァレンティノはそう言って、一枚の紙をリリアーナの前へ置いた。


アドラー侯爵邸に勤めて長い彼女には、会計や財政だけでなく、貴族社会について教える役目もある。


紙には、上から順番に五つの爵位が書かれていた。


公爵


侯爵


伯爵


子爵


男爵


「我が国で正式に認められている爵位は、大きく分けてこの五つです。リリアーナ様も、ご存じですね?」


「もちろんですわ」


侯爵令嬢として十年も暮らしているのだから、それくらいは知っている。けれど、改めて上から順番に並べられたものを見る機会はなかった。


リリアーナは二番目に書かれている文字へ目を落とす。


侯爵


つまり、自分の家だ。


「公爵が五爵の中では最上位。その次が侯爵、伯爵、子爵、男爵と続きます。ただし、爵位がすべてというわけではありません。同じ爵位でも、治める領地や財力、王家との関係によって影響力は異なります」


「では、男爵家より伯爵家の方が必ず豊か、というわけではありませんのね?」


「その通りです。非常に裕福な男爵家もあれば、領地の経営に苦労している伯爵家もあります。ただ、爵位そのものが示す家格では伯爵家が上になります」


「なるほど……」


知っているつもりでも、こうして聞いてみると意外と知らないことがある。


マダム・ヴァレンティノはリリアーナが理解したのを確認すると、紙の二段目を指した。


「そしてアドラー家は侯爵家です。五爵では公爵家に次ぐ上級貴族となります」


リリアーナは改めて「侯爵」の文字を見る。


「わたくしの家、かなり上なのですね」


マダム・ヴァレンティノが一瞬、言葉に詰まった。


「ご存じなかったのですか?」


生まれたときからリリアーナ・ヴァン・アドラーだったため、自分の家を他家と比べて考える機会がなかったのだ。


マダム・ヴァレンティノは小さく咳払いをすると、次の資料を取り出した。


「では、ご自身の家についても学んでおきましょう。アドラー家の歴史は、およそ百五十年前まで遡ります」


「百五十年……」


「現在のアルベルト・ヴァン・アドラー侯爵は、六代目の当主にあたります」


「初代から侯爵家だったのですか?」


「いいえ。そこが本日の大切なところです」


マダム・ヴァレンティノがアドラー家の系譜を広げた。


一番上には、今まで名前しか知らなかった初代当主がいる。


「初代アドラー卿は、北部で発生した大規模な魔物災害から三つの街を守り抜きました。その功績を当時の国王陛下に認められ、領地と伯爵位を賜ったのがアドラー家の始まりです」


「最初は伯爵だったのですね」


初代から侯爵だったものだと、なんとなく思っていた。


マダム・ヴァレンティノの指が、系譜の二代目へ移る。


二代目は、父から受け継いだ領地の発展に力を尽くした。


荒れていた農地を開き、街道を整備し、商人が安全に行き来できる環境を作る。初代のような華々しい武功こそなかったものの、その治世によってアドラー領は大きく豊かになったという。


そして、三代目。


ここでアドラー家の歴史が大きく動く。


「当時、王国北部を大飢饉が襲いました。三代目当主は自領の食糧庫を開放するだけでなく、周辺領主や商会と協力し、各地へ食糧を届ける仕組みを整えました」


「自分の領地だけを助けたのではないのですね」


「ええ。その結果、周辺地域だけでなく、王都への食糧供給まで維持することに成功しています。その功績を国王陛下が認め、アドラー家は伯爵家から侯爵家へ昇爵しました」


リリアーナは系譜に描かれた三代目の名前を見つめた。


「爵位というのは、途中で上がることもありますのね」


「あります。ただし、簡単なことではありません。王国へ長く貢献したり、国を左右するほど大きな功績を残したりした者が、その働きを国王陛下に認められて初めて昇爵するものです」


「では、三代目はとても頑張った方なのですね」


「ええ。もちろん三代目だけではありませんよ」


そこから四代目は、侯爵家としての立場を生かし、北部と王都を結ぶ物流網の発展に尽力した。


五代目は王宮で長く国政に携わり、他国との交易や領地間の税制を整えた。


そして、そのすべてを受け継いだ六代目が現在の当主。


リリアーナの父、アルベルト・ヴァン・アドラーである。


「こうして聞くと、お父様ってすごい家の当主なのですね」


「リリアーナ様も、その『すごい家』のご令嬢なのですよ」


「……そうでしたわ」


マダム・ヴァレンティノに言われて、リリアーナは自分の胸元を見る。


アドラー家に生まれて十年。


侯爵令嬢、侯爵令嬢と呼ばれ続けてきたけれど、その言葉の後ろに百五十年もの歴史がくっついているなんて、これまであまり考えたことがなかった。


(六代目ですか……)


授業が終わったら、父に話を聞いてみるのも面白いかもしれない。


肖像画でしか知らない初代から五代目の話も、父ならもっと知っているだろう。


リリアーナは系譜の一番下に書かれた、父の名前を指でなぞる。


アルベルト・ヴァン・アドラー。


いつも屋敷で顔を合わせている「お父様」と六代続くアドラー家の当主。


同じ人なのに、今は違って思えた。


(……お父様のお話も、聞いてみたいですわね)


こうしてその日の授業が終わったあと。


リリアーナはいつもより弾んだ足取りで、父のいる場所へ向かうことにした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ