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破滅ルート回避?そんなことより推しの「モブ文官」に全力で推し活ですわ!そしたら世界最強の黒幕になっちゃいましたの!!  作者: 逢華 (最後の挑戦)


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第22話 第一発見者 シード・キャメロン

「……四パーセントだと?」


王宮会計監査室


第三文官執務室から持ち込まれた四件の書類を前に、監査官の男は眉を寄せた。


目の前に立っているのは、額の汗を拭いながら、必死の様相で書類を差し出している第三文官執務室の室長だ。


地下から息を切らして上がってきた男の異様な気迫に、周囲の監査官たちも不審そうな視線を送っている。


「落ち着きなさい、室長。紙が数十束、インクが数十瓶消えている程度でしょう? 現場での紛失や、記入漏れ、あるいは経年劣化による廃棄……その程度の誤差は日常茶飯事です。いちいち監査室へ持ち込むような話ではありませんよ」


監査官は呆れたように鼻を鳴らすと、書類を追い返そうとした。


だが、室長は引かなかった。


「だが、四ヶ月連続ですよ! 部署も物品もバラバラなのに、現場へ支給された数量だけが、寸分違わず四パーセントも少ないんです」


監査官はため息をつき、渋々といった様子で手元の書類へ目を落とした。


第一文官室の紙。侍従職のインク。第二文官室の蝋燭。王宮財務局の紙。


確かに請求書と納品受領書の数字は完璧に一致している。しかし、そこに添えられた倉庫管理課の支給記録と在庫記録を照らし合わせると——。


(……ん?)


監査官の視線が、ピタリと止まった。


三ヶ月前、千束に対して九百六十束。差引四十束。


二ヶ月前、五百瓶に対して四百八十瓶。差引二十瓶。


一ヶ月前、二千本に対して千九百二十本。差引八十本。


今回、五百束に対して四百八十束。差引二十束。


(なんだ、この数字は……?)


もし現場の不注意や保管中の破損なら、数字はもっと不規則に振れるはずだ。特定の月だけ跳ね上がったり、あるいはゼロの月があってもおかしくない。


それなのに、どの月も、どの物品も、綺麗に四パーセントの余白を残して消えている。


請求書と納品受領書は一致している。だが、実際の倉庫からは正確に四パーセント分だけ物資が欠損しているのだ。


「……おい、中央倉庫の原簿と、ヴェルデ商会の過去一年分の調達台帳をすべて持ってこい」


監査官の顔から、先ほどまでの軽薄な余裕が消えていた。


それから数時間後。


監査室の大型デスクの上には、積まれた帳簿の山が出来上がっていた。


調べるにつれ、室内の空気は静かに冷え切っていった。


誤差などでは到底なかった。ヴェルデ商会が関わる消耗品の調達において、過去数年分を遡っても、特定の条件を満たす取引のすべてで正確に「四パーセント」の不整合が続いていたのだ。


部署も違い、品目も違い、時期も違う。


単体の書類だけを見ればどれも正常に処理されており、不備などどこにも存在しない。


だが、あまりにも規則正しく切り取られた「四パーセント」が浮かび上がってくる。


「すぐに監査室長へ報告しろ。これは一部署の記載漏れなどではない」


監査官の額を、冷たい汗が伝った。


書類の束は監査室の壁を越え、事態の重さゆえに、静かに王宮の上層部へと引き上げられていった。


——その頃。


アドラー侯爵邸のテラスで、リリアーナは午後の庭を眺めながらハーブティーを口に含んでいた。


「ふふ、お届けした特注の書見台、シード様は使ってくださっているかしら」


リリアーナはカップへ口をつけながら、シードが「使いやすいです」と言ってくれた時の顔を思い出した。自然と頬が緩む。


(少しでも楽にお仕事ができていますように)


そう願いを馳せる少女の視線の先で、風に揺れる庭園の木々が静かに光を返していた。


——そして、その日の夕刻


国王の執務室では、ルイスの帝王学の講義が終わったばかりだった。


教材として使っていた資料を閉じたルイスは、父王の机へ新しく運ばれてきた概要書に目を留めた。


「気になるか?」


父王の問いかけに、ルイスは静かに頷いた。


「はい」


手元へ引き寄せた概要書に目を通す。王宮調達費に関する調査の概要。そしてその末尾に添えられた一行に、ルイスの目が止まった。


『第一発見者——第三文官執務室所属、シード・キャメロン』


「……シード・キャメロン?」


思わず、小さな声が漏れていた。


地下の執務室で、ひたすら書類へ向かっていた十五歳の文官が脳裏に浮かぶ。


「父上」


「なんだ?」


国王は書類から目を離さずに応じる。


「この人は、どうやって四パーセントに気づいたんですか?」


「数日前に処理した別件の記録を覚えていたらしい。それを今回の数字と照らし合わせた、とある」


「数日前の……別の書類?」


「そう書いてある」


ルイスは黙った。


数日前に一度だけ目を通した別の部署の数字を覚えていること。


背景も目的も違う書類が回ってきた瞬間に、その記憶を引き出し、目の前の数字と繋げたこと。


ルイスは手元へ回されてきた概要書へ、もう一度目を戻した。


最初から読み直す。


シード・キャメロンが、どこで最初に手を止めたのか。


それを確かめるために。

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