閑話 人物紹介
【リリアーナ・ヴァン・アドラー】
年齢:10歳
身分:アドラー侯爵家令嬢
淡い金色の髪と、宝石のようなアメジスト色の瞳を持つ少女。
腰近くまで伸びた髪は、光を受けると柔らかな金色に透ける。普段は一部を編み込み、白や薄紫のリボンでまとめている。
顔立ちはまだ十歳らしい幼さを残しているものの、侯爵令嬢として育てられただけあって整っており、黙って立っていれば人形のような愛らしさがある。
特に印象的なのが、大きなアメジストの瞳。
嬉しいことがあるとすぐに輝き、シードのことになると隠しきれないほど表情へ出てしまう。
服装は白を基調に、薄紫や金の装飾を取り入れた上品なドレスを好む。侯爵令嬢らしい品の良さと、十歳の少女らしい可愛らしさを両立した装いが多い。
小柄で華奢だが、姿勢や立ち居振る舞いには幼い頃から受けてきた貴族教育が表れている。
ただし、シードを前にするとその完璧な令嬢らしさは崩れる。
「未来の婚約破棄……どーでもいいですわ!!破滅?そんなこと知りませんわ。そうなる前にアドラー侯爵家の有り余る財力を使って、シード様を全力で推して、貢いで、推し活いたしますわ!!」
【シード・キャメロン】
年齢:15歳
所属:王宮・第三文官執務室
身分:平民出身の下級文官
少し長めの黒髪と、黒に近い落ち着いた瞳を持つ少年。
前髪は目元にかかるほど長く、仕事中も特に気にすることなくそのままにしている。服装も王宮から支給された文官服が中心で、自分の見た目にはほとんど頓着していない。
そして、彼の印象を大きく地味にしているのが、いつも掛けている安物の眼鏡。
飾り気のない細いフレームで、少し野暮ったい。長めの黒髪と眼鏡が顔立ちを隠しているため、普段のシードを見ても「地下で働いている地味な若い文官」という印象しか残らない。
だが、その眼鏡を外すと印象が一変する。
隠れていた目元は涼しげで、鼻筋もすっと通っており、十五歳とは思えないほど整った顔立ちが現れる。
実は、とんでもない美少年。
本人だけが、そのことにまったく興味がない。
髪を整えることもなければ、眼鏡を買い替えようともせず、今日も大量の書類へ向かって淡々と万年筆を走らせている。
ゲームの中では、名前こそ設定されているものの、物語の中心には立たないモブ文官として登場する人物。
「こんな俺を認めてくれたリリアーナ様を、失望させたくない……」
しかし実際には、背景キャラクターとは思えないほど細かな設定が作り込まれていた!
驚異的な記憶力と計算能力を持ち、一度目を通した書類の数字や内容をかなり正確に記憶している。さらに優れているのは、覚えた情報を別の書類や出来事と結びつけられること。
【マリー・フローレン】
年齢:16歳
所属:アドラー侯爵家
役職:リリアーナ付き侍女
柔らかな栗色の髪と、明るい緑色の瞳を持つ少女。
髪は胸元まで届く長さで、仕事の邪魔にならないよう後ろでまとめている。きっちりと整えられた侍女服に白いエプロン、髪には小さなホワイトブリム。派手な装飾は身につけず、清潔感のある可愛らしい姿をしている。
顔立ちは親しみやすい可愛い系。普段は穏やかな表情をしており、笑うと少し垂れた目元がさらに柔らかくなる。
リリアーナの予定を把握し、身支度を整え、お茶を用意し、外出時には必要なものを先回りして準備する。仕事は丁寧で、頼まれたことを途中で投げ出すこともない。
そんな真面目さと働きぶりを評価され、リリアーナの母から直々に指名され、専属侍女となった。
本人も今の仕事をとても気に入っている。
そして何より。
マリーはリリアーナのことが大好きである。
嬉しいことがあればすぐ顔に出て、シードの話をすると瞳を輝かせ、シードのためなら次々と新しいことを思いつく。そんなリリアーナを一番近くで見守ることが、マリーにとって毎日の楽しみになっている。
「マリー、聞いてくださる? 今日、シード様が……!」
「はい、お嬢様。もちろんでございます」
【ルイス・フォン・グランヴェール】
年齢:10歳
立場:グランヴェール王国 第一王子
陽の光を受けると淡い金色に輝く、さらりとした金髪。前髪は自然に額へかかり、王家の血を感じさせる深い青色の瞳がある。
まだ十歳ながら顔立ちはすでに整っており、すっと通った鼻筋と涼しげな目元が印象的。笑えば年相応の少年らしさが覗くものの、黙っていると実年齢より少し大人びて見える。
華奢さの残る少年の体つきだが、立ち姿や所作には幼い頃から王族として教育されてきた品がある。派手に着飾らなくても自然と目を引く、「将来、とんでもない美男子になる」と誰もが想像できる少年。
頭の回転が非常に速く、一度教えられたことはすぐに理解する。帝王学をはじめとする教育も順調に修めており、大人たちの会話から相手の意図を読み取ることも得意。
その一方で、周囲から「第一王子」として扱われ続けてきた。
現在は身分を隠し、「ルイ」という下級貴族の少年として王宮内を見学中。
偶然出会ったリリアーナが、自分の立場ではなく、一人の人間として接してきたことで興味を持つ。
ゲーム本編では成長後、誰もが羨むほどの美貌と知性を兼ね備えた第一王子となり、悪役令嬢リリアーナへ婚約破棄を告げる人物である。
しかし現在のリリアーナは、目の前にいる「ルイ」がその第一王子本人だとは、まだ気づいていない。
【第三文官執務室・室長】
年齢:42歳
立場:王宮・第三文官執務室 室長
丸みのある顔に、少しふっくらとした体つき。きっちり撫でつけた焦げ茶色の髪と、小さな丸眼鏡が特徴の中年男性。
頬や腹回りにはそれなりに貫禄があるものの、どこか憎めない愛嬌のある顔立ちをしている。驚けば目を丸くし、焦れば額いっぱいに汗を浮かべ、怯えれば頬まで引きつるため、感情がとにかく顔へ出やすい。
リリアーナが第三文官執務室へ来る以前は、決して褒められた上司ではなかった。
部下が優れた仕事をしても、その成果を自分の指導によるものとして上へ報告する。特に立場の弱い若手文官の成果は利用しやすく、シードの仕事も何度となく自分の手柄として扱ってきた。
しかし、アドラー侯爵令嬢であるリリアーナがシードを気に入り、頻繁に第三文官執務室へ足を運ぶようになったことで状況が一変する。
侯爵令嬢が見ている前で、以前と同じことなどできるはずがない!
(まずい。非常にまずい。このお嬢様の前で下手なことをすれば、私の首が飛ぶのでは……?)
そう考えた室長は、悪事からあっさり足を洗った。
改心して聖人になったわけではない。単純に、自分の身が一番かわいいからである。小狡く、保身に走りやすく、良いところがあるとするならば、愛嬌があって憎みきれないところくらい。
それ以降はシードの成果を横取りすることもなくなり、部下の仕事をそのまま上へ報告するようになる。結果として皮肉にも、以前よりずっとまともな室長になっている。
リリアーナが第三文官執務室へやって来たことで、本人の意思とはまったく関係なく少しずつまともな上司になっているのであった。




