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学校の『王子様』女子を甘やかしてみた  作者: 有明海
5章 11月編

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58 王子様とSNS

ヒーローショーを楽しんだ、あの遊園地デートから週が明けた。

 あと一週間もすれば冬休み。俺たちは生徒会室で、次の代への引き継ぎに向けた準備を進めていた。


今はひとまず仕事が落ち着き、休憩の時間だ。


「上原くん、休憩中? 何見てるの?」


不意に菊池さんがやってきて、俺のスマホの画面を覗き込んできた。


「あ、いえ。華たちがやってる写真を投稿するやつ……SNS、始めてみようかなって思って」


以前、華が水族館の写真をアップしていたあのアカウントを思い出していた。昨日の遊園地で撮ったたくさんの写真を眺めながら、どこか形に残る場所に思い出を残しておけたらな、と考えたのがきっかけだ。


「え、大地くんがアカウント作るの?」


PCのキーボードを叩いていた鳥羽さんも、タイピングの手を止めてこちらに顔を向けた。


「せっかく華と付き合えたわけですし。……それに、来年俺は受験ですから」


俺がそう答えると、鳥羽さんは何かを察したように、ニヤニヤと意地の悪い笑みを浮かべてこちらを見てきた。


「あー。写真を上げておけば、華ちゃんを狙ってる男の子たちへの『牽制』にもなるもんね?」


「……っ、まあ、それもあったり……しますけど」


あまりに図星で、変な声が出てしまった。確かに、その理由は否定できない。


華と同じ学校で過ごせるのも、残り3ヶ月を切っている。卒業すれば俺たちは別の道を歩み、物理的な距離も開く。


今のうちに俺のアカウントを作っておけば、彼女に良からぬ下心を持って近づく奴も減るんじゃないか――そんな独占欲が、俺の中には確かにあった。


「いいと思うよー。華ちゃん、絶対に喜んで即フォローしてくるだろうし」


そんな話をしていると、席を外していた華が戻ってきた。


「楓、大地と近すぎ。離れて。……なんの話してたの?」


「大地くん、華ちゃんみたいに写真投稿しようか考えてたんだって。アカウントを作ろうとしてたところなのよ」


鳥羽さんがそう言うと、華はパァッと表情を明るくしてこちらに歩み寄ってきた。


「私が作ってあげる。メアド、ここに打って」


華は嬉しそうに自分のスマホで操作を促してきた。


言われるがままメールアドレスを入力して渡すと、彼女は菊池さんと楽しそうに頭を突き合わせて設定を始めた。


「そもそも、これって何をあげればいいんですか?」


「それもわからないのね。人それぞれだけど、日常の風景とか、旅行の写真とかを上げるのが一般的かしら。中には見るだけで何も投稿しない人もいるけど」


「遠藤くんとかは、バスケ部のみんなとの写真を上げてるよ」


菊池さんが自分の画面を見せてくれる。そこには確かに、躍動感のある遠藤の姿が写っていた。

 スクロールしていくと、ストバスの時の動画も出てきた。


「あ、ここで流れていたのか」


全世界に発信されているようで、コメント欄も賑わっていた。遠藤や若葉についての感想に加え、俺の正体についての考察までされている。


「面白いですね、こういうの」


「ユーモアのある投稿もあって退屈しないわよね。……ちなみに、華ちゃんの投稿も見てみたら?」


鳥羽さんに言われるがまま、華の顔写真がアイコンになっているアカウントをクリックした。

 ――フォロー:10、フォロワー:800。


うちの学校の全校生徒が600人程度だと考えると、その多さに驚愕するしかない。


「投稿してるもの、全部大地くんに関係してるでしょ?」


指摘されて見返すと、見事にすべてが身に覚えのあるものばかりだった。

一応、俺の顔にはモザイクがかかっているが、知っている人間が見れば一瞬でバレバレだ。


「華さん、上原くん以外との思い出は上げないんですか?」


「大地と、あとはたくまとしか休日は出かけないもの」


「……まあ、そんなことだろうと思いましたけど。他に趣味の写真とかはないんですか?」


「ないわね。私の趣味は大地だもの」


なぜかドヤ顔で言い切る華に、俺は苦笑いするしかなかった。


「どうするのよ来年。大学生と受験生で、どうしても会えない時間が増えるじゃない?」


そう、来年の今頃は今の鳩ヶ谷さんたちのように、俺は忙しい時期。

自然と会える時間も少なくなるだろう。

その間、彼女をほったらかしにしてしまう。


「それは、毎日大地をお迎えに行くから大丈夫よ」


何が大丈夫なのかは全く分からなかったが、とりあえず華からアカウントを教えてもらい、自分のスマホにもアプリをインストールした。

まずは生徒会のメンバーや南さん、いつもの面々をフォローしていく。


「何か投稿した方がいいわよ。大地だって分かるように」


「確かに。でも、何がいいかな」


「なら、私が上げてあげる。待ってて」


よく分からないので、投稿作業は華に丸投げしてしまった。

その間、俺は検索機能を使って友達やクラスメイトを探してみる。

俺以外はほぼ全員がアカウントを持っているらしく、改めて自分の世間知らずさを痛感した。


すると、ある一つのアカウントが目に留まった。

 元カノである和香のアカウントだ。

一応フォローした方がいいのか、と思ったが、なぜかフォローボタンが見当たらない。


「あれ? フォローできない……」


「あ、言い忘れたけど。米原さんのアカウントは、こっちでブロックしといたから。外したら駄目よ? ……はい、スマホ見てみて」


いつの間に。というか、和香のアカウントをよく特定できたな……。

言われるがまま、自分の初投稿を確認した。


そこには、一度に15枚もの写真がアップされていた。

 しかも、そのすべてが俺と華のツーショット写真や、2人で食べたご飯の写真ばかりだった。


「さすがにこれは……」


「え……だめ?」


上目遣いでそういわれ、俺は否定できなかった。


「う……いいよこれで」


「大地くん、華ちゃんに甘過ぎよ」


鳥羽さんたちにそんな冷たい目線を向けられながら、俺たちは仕事に戻っていった。


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