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学校の『王子様』女子を甘やかしてみた  作者: 有明海
5章 11月編

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52 王子様との学校生活


文化祭が終わり、新しい週が明けた。

華への告白も無事に成功し、俺たちは正式に付き合うことになった。


「華、お待たせ」


「大丈夫。……来てくれてありがとう」


付き合い始めてから、俺たちは毎朝一緒に登校する約束をした。

なんでも「学校で堂々と会える回数が少ないから、せめて朝はこうやって会いたい」ということらしい。


 帰りは千代たちのお迎えで一緒に帰ることが多いので、朝イチで会うのは珍しかったりする。


「……」


「ん? ジロジロ見て、どうしたの?」


「なんか、慣れてるなと思って」


「えっと……何が?」


俺が頬を掻きながら尋ねると、華は俺の足元をじっと見つめてきた。


「いつも自然に、車道側を歩いてくれてるから」


「ああ、千代と歩く時もそうしてるしね。これくらい普通だよ」


「……やっぱり、女の子の扱いに慣れてる」


「えぇ……」


「嘘よ。そういう紳士的なところ、やっぱり好きだわ」


 華は付き合ってから、こんな風に好意をストレートに口に出すことが多くなった。

 付き合う前からもアピールは伝わっていたが、今もなかなかだ。


「ありがとう、ほら行こう」


「……うん!」

 

俺が手を差し出すと、華は笑顔でその手を握り返してきた。


すれ違う生徒たちにチラチラと見られていたが、華はお構いなしに楽しそうに話を続けている。


 やがて校門が見えてきたため、俺はそっと手を離そうとした。


「……なんで離すの?」


「いや、ここからは人もいっぱいいるし」


「もう見られてるんだから関係ないわ。行きましょ」


そう言って、華に無理やり手を引かれたまま校門をくぐる。

すると、その奥から鼓膜を揺らすような黄色い歓声が上がった。

ものすごい数の女子生徒たちが、駆け足でこちらへやってくる。


「白鷺さんおはようございます!」


「華ちゃんおはよ!」


「みんなおはよう、朝から元気ね」

 

今までは、はたから見ていたがいざ巻き込まれると圧がすごい。

 華は毎朝こんな風に囲まれていたのか。


「上原先輩もおはようございます!」

 

「大地さんおはようございます」


「大地君おはよう」


 彼女たちは俺にも元気よく挨拶してくれたが、何と返せばいいのか分からず、俺は挙動不審に会釈を返すことしかできなかった。

すると、華が急に俺の腕にギュッと抱きついてきた。


(え……どういうこと!?)


「ごめん大地はもう私の彼氏になったの。だ、だから大地って呼ばないでほしい、な……なんて」


 華が恥ずかしそうに、最後は消え入るような声で呟くと、周りの女子たちから爆発したような歓声が上がった。


「す、すみません!上原さんおはようございます!!」

 

「え!?独占欲……尊い!!」


「いくらなんでも大好きすぎでしょ」


 次々と飛んでくるからかいの声に、俺の顔まで一気に熱くなってしまう。


「は、華! ちょっと離れよう! 悪目立ちしすぎだって!!」


「……ごめんなさい。恥ずかしくてみんなに顔見せられないわ……っ」


 自分で爆弾を落としておいて、華は俺の腕に顔を埋めてしまった。

そんな彼女のウブな様子が、さらに女子たちの何かしらのツボを激しく刺激したらしい。

校門前は、朝からちょっとしたお祭り騒ぎになってしまった。



「っつかれたー」


「お疲れ様。朝からすごかったな」


 俺はやっとの思いで自分の教室に辿り着いた。

席に着くなり、いつメンの男子たちと、華の親衛隊だった女子陣が俺の机を囲んでくる。


「嘘じゃなかったんだな、白鷺さんと付き合ったの」


「そうだよ……」


「やっぱりあの水族館の男の子も?」


「それも俺だよ……はぁ……はぁ……」


 息切れしながら答えると周りも納得したような反応をしていた。


「この前の文化祭もすごかったけど、今朝もなかなかだな」


 そう、告白をしたあと結局華と回ることになったのだが、周りの人の反応が凄すぎて、騒ぎになってしまった。

 その為デートというデートをちゃんとできずにいた。


「これを毎日続けるのは、相当ハードだわ……」


「まぁ、あの『王子様』と付き合った男の宿命だな。頑張れよ」


 金井と佐々木にそう励まし?をされたが、まさかこんなレベルとは思っていなかった。


「あ! 金井、王子様はもう禁止! 白鷺さんは『卒業』を宣言したんだから!」


女子の1人がそう鋭く指摘する。

 確かに、そんなようなことを華が言っていた気がする。

 どうやら、全校生徒にも知られているようだ。


「ほら、この『白鷺華ファンクラブ』のチャット見なさいよ」


 そう言って『白鷺華ファンクラブ』というチャットページを見せられる。

 メンバーは250人。いくらなんでも多すぎる。

 アイコンは『誰かに』お姫様抱っこをされて幸せそうな笑みを浮かべている写真。

 

「えっと、なになに……。

『ルール1:白鷺さんを王子様とは呼ばないこと』。

『ルール2:彼氏(上原)のことを、下の名前で呼んではいけない』

『ルール3:彼氏成分を補給しているのを邪魔してはいけない』

……って、なんだこれ」


 微妙な沈黙が生まれる。

金井たちが「お前、どんだけ愛されてんだよ」と言わんばかりの凄まじい目で俺を見てくる。やめてくれ!


「上原が猛アピールしてたと思ってたけどそういうわけでもないんだな」


「……まぁありがたいことにね」


やがて予鈴のチャイムが鳴り、みんなが自分の席へ散っていった。

今日の授業は、いつにも増して疲労感でまったく集中することができなかった。


「大地ーバスケ行こうぜ」


 授業終わりの昼休み。

2学期に入ってから、昼休みは決まってバスケ部の連中と体育館に行っていた。

お遊びではなく、バッシュとジャージに着替えて参加するガチのバスケだ。


「ごめん、今週は無理だ。先約があって」


「……彼女?」


「そう。来週、受験があるから一緒にいてほしいって」


「滅茶苦茶愛されてんじゃん!俺たちはいいから行ってやれ!」


 3人に温かく見送られ、俺は華が待つ中庭へと向かった。

チャットで指定された場所に行くと、一際目立った女子の集団が陣取っていた。


「遅くなったごめん、華。それと皆さんもお疲れ様です」


 そう言って女性だらけの輪の中に恐る恐る入っていき、促されるように華の隣に腰をかけた。

 周りの人は、わざわざレジャーシートを敷いて、俺たちの特等席を作ってくれていた。


 (そこまでするのか……)


「鳥羽さん、鶴見さんもお疲れ様です」


「大地君お疲れ様。わざわざありがとうね、きてくれて」


「大地君久しぶりー」


「珍しいですね、いつも皆さん生徒会で食べてませんか?」


「この子達が華とお話ししたいって言うから、今週は中庭で食べることにしたの」


「そうなんですね。まぁ今週天気いいですからね」


「そうそう。……あ、えっと華ちゃんごめんね?」


 鳥羽さんが苦笑いして謝った視線の先では、華がものすごい剣幕で鳥羽さんを睨みつけていた。


「大地のこと取らないで。私の受験前の大地チャージの為に呼んだのに」


「取らないって、ごめんごめん」


 付き合ってからというもの、華はみんなの前でも平気でこんな態度をとるようになった。

以前は生徒会のメンバーにしか見せなかった素顔を隠さなくなったことには、少しだけ寂しさも感じるが……。


そんなことを考えていると、隣に座る華に脇腹をツンツンと突かれた。


「あーんして」


「いや流石に……みんないるって」


「『いっぱい甘やかすよ』って言ってくれた!」


「……言いましたけど」


「して!」


 俺は観念して自分の弁当箱から卵焼きを摘み上げ、彼女の口元へと運ぶ。

華はパクリとそれを咥えると、途端に満面の笑みを浮かべて「美味しいっ」と声を弾ませた。


「次は、ご飯。あーん」


 そう言ってエサを待つ雛鳥のように口を出してくる。

 ふと周りを見渡すと、親衛隊の女子たちが『今か今か』と息を呑みながら、俺たちのイチャイチャを特等席でガン見していた。


……改めて、王子様をやめた彼女との、とんでもない学校生活が幕を開けたのだと実感するのだった。

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