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学校の『王子様』女子を甘やかしてみた  作者: 有明海
4章 学園祭後編

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50 王子様と文化祭2日目(前)


「みなさんそろそろ交代の時間ですよ」


迎えた2日目のお昼すぎ。

他の実行委員に声をかけられ、俺たちのシフトは終了の時刻となった。


この後は鳥羽さんと華の劇があるということで、俺はホールへと向かった。

そこには2人目当てであろう大勢の生徒が押し寄せており、席はほぼ埋まっていた。

立ち見になるかと思い困っていると、他の先輩たちが声をかけてくれて、何故か最前列の特等席へと案内された。


「俺たちここでいいんですか?」


「いいのいいの。ほらそろそろ、始まるよ!」


先輩に促されて席につくと同時に、舞台の幕が上がった。


タイトルは、『氷の王子様とお姫様』。

隣国の氷の国の王子様がお姫様に恋をし、数多の障害を乗り越えて結ばれるというラブロマンスらしい。


王子様に扮した華が登場した瞬間、客席の女子たちから割れんばかりの黄色い歓声があがった。

その凛々しい立ち振る舞いと通る声、そして圧倒的な演技力で、瞬く間にホール内の観客を魅了していく。


烏羽さんがあがると男性からの大きな歓声があがる。

生徒会の時とは違い、とても雰囲気があり、いかにも守ってあげたくなるような女の子だった。

俺も思わず見惚れそうになっていた。


続いて、お姫様役の鳥羽さんが舞台に上がると、今度は男子生徒たちから野太い歓声が沸き起こった。

いつもの生徒会での凛とした姿とは打って変わり、いかにも守ってあげたくなるような可憐な女の子の雰囲気を纏っている。


最初は鳥羽さん演じるお姫様との、テンポの良い掛け合いに会場からも笑いが起きていた。


しかし、物語が核心に触れるにつれ、ホールの空気はしんと静まり返っていく。


「……私の手は、触れるものすべてを凍らせてしまう。この忌まわしい血が流れている限り、私は誰も愛してはならないのだ」


華の震える声がホールに響く。

それは演技のはずなのに、俺には彼女がこれまでに何度も、一人で夜に抱えてきた本音のように聞こえた。

客席で見ている生徒たちは、その迫真の演技に息を呑んでいる。


「王子! 呪いなど恐れないで。私は、凍てついた貴方の心ごと愛しているわ。何があっても私はあなたのすぐそばにいる」


鳥羽さん演じるお姫様が、華の手を取る。

いつもは奔放な鳥羽さんが、今は慈愛に満ちた表情で華を見つめていた。

華は一瞬、戸惑うように視線を彷徨わせる。そして、吸い寄せられるように、客席の最前列にいる俺と視線がぶつかった。


声には出さない。けれど、彼女の唇が確かに俺の名前を呼んだ気がした。

華の瞳から、一筋の涙が頬を伝い落ちる。


「……あたたかい。私の氷を溶かすのは、地位でも名誉でもない。ただ隣にいて、私を『私』として見てくれる、貴方のその眼差しだったんだな」


そして少しこちらに目を向けたあと続けた。


「もう、仮面はいらない。私は……一人の人間として、貴方と共に歩みたい」


その瞬間、舞台の照明が一段と明るくなり、割れんばかりの拍手がホールを包み込んだ。

劇は大成功。


エンディング。

鳥羽さんをお姫様抱っこした華が出てくると、

みんなスタンディングで拍手し始める。


幕が降りる直前、華はほんの一瞬だけ、いたずらっぽく笑い、俺にウィンクをしてみせた。


「ねね、どうだった?ヒヨリも華ちゃんもすごかったでしょ」


「そうですね……感動しました。衣装も良かったです」


「ふふん!褒めてくれてありがとうね。この後ってさ、時間ある?」


「……?はいありますよ」


「ならさ生徒会室で待っててくれない?ちょっとこの後頼みたいことがあって」


「わかりました」


そう先輩達に頼まれて、俺は生徒会室に行くことにした。

いつも先輩達が独占しているソファーに腰をかける、どっと疲れが湧いてきた。


昨日の急遽の仕事や、イレギュラー対応が多く大変だった。

俺はソファーで少し横になり、目を瞑ったら。


どれくらいたっただろうか。

耳元から声が聞こえる。


「――大地起きて」


そう言って瞼を開くと、そこには華がいた。


「おはよ、やっぱり疲れてる?」


「まぁそうだね」


そう言って起き上がって華を見ると制服を着ていなかった。

先ほど鳥羽さんが着ていた衣装のような、白色のワンピースを着ていた。


「?あーこの服のことね、可愛いでしょ。ヒヨリの衣装を作る時に私のも既製品のアレンジで作ってもらったの」


そう言って少し恥ずかしそうに、満面の笑みで言ってきた。


「うん。とても綺麗だし――可愛いよ」


「あ、ありがとう!」


少し緊張したように彼女は俯きながら答えた。

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