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学校の『王子様』女子を甘やかしてみた  作者: 有明海
4章 学園祭後編

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44 王子様と暴走

学園祭まで1ヶ月。

鳩ヶ谷さん・鶴見さんの受験もあり、俺たちも手が回らなくなってきた。

そんななか――


「先輩達のクラスは何かやるんですか?」


学園祭は体育祭と違い、生徒会もクラスのイベントには必須参加。

俺たちが忙しいのは、このクラスにも関わらないといけないからというのもある。


「私たちのクラスは小さい劇をやるわ。推薦組の要望でそうなったの」


3年生のこの時期になると推薦と一般と受験方法で分かれるらしい。

鳥羽さん、華は学内推薦をもらってる関係上、劇に参加するらしい。


「面白そうですね。何か役やるんですか?」


「私がお姫様役でその相方の王子様役が華ちゃん」


2人にドンピシャな役割で俺は笑ってしまった。


「大地君達はなにをやるの?」


「なんかフランクフルト売るそうです。俺は、宣伝係として回れと言われています」


うちのクラスの売店はフランクフルト。

今回仕切ってるのが金井達というのもあり、俺はある程度楽な仕事に回してもらった。


「いいわね楽しそうで。3年生になると受験とかで、クラスメイトと一緒にいれるのは、一瞬だから楽しんでね」


そう10月になり今学期も残り少なくなってきた。

つまり先輩達と一緒にいれるのも残り少ないというわけだ。


(華に思い伝えるべきかな)


そう華を見てると急に手を振ってきた。


「どしたのぼっとして疲れた?」


「いやそういう訳じゃないよ。華たちといられるのも残り少ないなと思ってね」


そう照れながら言うと華は不思議そうな顔をしていた。


「?なんで私とは、これからもずっと一緒にいられるじゃない」


「「え?」」


俺と鳥羽さんの声が重なった。

手に持っていた資料が、指先から滑り落ちそうになる。


「……華、それってどういう意味?先輩たちは3年生で、もうすぐ卒業だろう?」


「ええ、そうよ。私は女子大だけど、大地の希望する大学と同じ最寄り駅だから将来的には一緒に帰れるはずよ。それに、たくまもあなたの家にお邪魔することもあるだろうから……」


「華ちゃん、それ、実質的な……その、ストレートすぎるっていうか……!」


鳥羽さんが顔を赤くしながらいうが、当の華は不思議そうに瞬きを繰り返す。


「事実を言ったまでよ。私は、大地と離れるつもりなんてないもの」


さらりと、とんでもないことを言う。

彼女の瞳には一点の曇りもなくて、その真っ直ぐな視線に俺の心臓はまた激しく脈打ち始めた。


「……そっか。そう、なのか」


「ふふ、わかればいいの。……さあ、作業を続けましょう。学園祭を成功させないと、ゆっくり打ち上げもできないわ」


「いやぁ……え?いいの大地くんは?」


「……俺に拒否権ってあるの?」


「ある訳ないじゃない」


「だそうです」


「えぇ……」


いつも茶化してくる鳥羽さんもこれには驚きっぱなしのようだ。


「お疲れ様ー、みんな!」


明るい声と共に、南先輩と3年生らしき女子生徒たちが数人、教室に入ってきた。


「南先輩、どうされたんですか?……それにそちらの方々は?」


「あー、ごめんごめん。この子たちは3年の学祭実行委員だよ。忙しそうな生徒会を手伝いにきたの」


どうやら南先輩が、頼もしい助っ人を連れてきてくれたらしい。

俺は改めて挨拶を済ませると、先輩たちと一緒に山積みの資料をまとめ始めた。


「君が上原君だね、初めまして」


作業中、一人の先輩が親しげに話しかけてきた。


「初めまして。……あの、俺のこと知ってるんですか?」


「知ってるも何も、有名人だよ? お姫様に王子様、それに生徒会の『ナイト君』だもん」


「いや、そんなものじゃ……」


「3年の間じゃ話題だよ?女子だらけの生徒会に飛び込んだ、2年の男の子ってね」


茶化すような先輩の言葉に、改めて生徒会という組織の注目度と、自分の立場の特殊さを実感する。


「はぁ……ありがとうございます」


よくわからないなりにお礼を言っておく。

その直後、背後から突き刺さるような鋭い視線を感じた。


「上原君。打ち合わせで確認したいことがあるから、少しこっちに来てくれる?」


華に呼ばれ、俺は指示された彼女の隣の席に座った。

すると彼女はPCの画面を操作しながら、机の下で俺の膝にそっと手を置いてきたのだ。


(えっ、なに……?)


俺が小声で尋ねると、華はあえて周囲に聞こえるような事務的なトーンで告げた。


「上原君、この説明は大事だから集中して聞いて」


それと同時に、机の下で手のひらを見せて催促してくる。……これは、手を繋げということか。


(流石にまずいよ、他の先輩もいるんだから……)


(……見られないから大丈夫。それに、大地が他の子と楽しそうに話すから。……甘えさせなさい)


必死の小声での抗議も虚しく、俺は観念してその手を握った。

すると、彼女は待ってましたと言わんばかりに指を絡め、深い恋人繋ぎをしてくる。


皆がすぐ傍で作業している中で手を握り合っているという背徳感で、華の説明が全く頭に入ってこない。


すると、PC画面の右下にチャットのポップアップが表示された。


『ヒヨリ:私の席からは、バッチリ見えてるんだけど?』


「…………っ」


思わず鳥羽さんの方を見ると、彼女はニヤニヤとした笑みを必死に隠しながら、こちらを伺っていた。

俺の手を離さないまま、華は右手で見事なブラインドタッチを始めた。


『華:仕事はしっかりやっているのだから、文句はないでしょう。

それに――今、すごく疲れているから。大地チャージが必要なの』


そのまま送信ボタンを押した。

彼女は改めて俺の手を強く握り直したのだった。


その後も、鳥羽さんや華、そして3年生の先輩たちの仕事を手伝いながら、時間は過ぎていった。

途中で俺が南先輩や鳥羽さんのフォローに回るたび、華が目に見えて不機嫌になっていた。

机の下で俺の手をギュッとつねってきて結構痛かったりする。


そして全員の仕事が一通り終わった。


「みんな、急に集まってもらってありがとうね!」


鳥羽さんが明るく声をかけると、先輩たちも「大丈夫だよ、お疲れ様!」と労い合っている。


「……このお礼は、何らかの形で必ず返すわ」


華がそう告げると、先輩たちが一瞬、顔を見合わせてざわつき始めた。

何事かと思っていると、先ほど俺に話しかけてくれた先輩が、急に手を挙げた。


「えっ……じゃあ華ちゃん、1つだけ聞きたいことがあるんだけど。」 


「? ええ、構わないけれど。それがお礼になるのかしら」


「なるなる、大いになる!」


「わかったわ。……なにかしら?」


「――あの、水族館へ一緒に行ったのって、やっぱり彼氏!?」


そういうと他の先輩方からも黄色い歓声が上がり始めた。

南先輩と鳥羽さんに至っては、机をバンバン叩いて腹を抱え、涙を流して笑っている。


あまりの恥ずかしさに、耐えきれなくなった俺が席を立とうとする。

それを阻止するように、2人に肩を掴まれた。


「大地君も気になってるんでしょ座りなさい」


「いや俺は別に……!」


そう言ってトイレに逃げようとすると華がこっちをじっと見てくる。

そして、少しだけ悪戯っぽく、くすりと微笑んだ。


「そうね水族館に一緒に行ったのは男の子よ」


「「「「ええええ――っ!?」」」」


再び、耳が痛くなるほどの歓声が上がる。 


「……でも、付き合ってはいないわ。まだ」


「えっ、どういうこと?」


頬を桃色に染めながら言葉を続けた。


「私がお付き合いしたくてアピールしてるところなの。それで今は、告白してもらいたくてずっと待ってるの」


それはいつも凛々しい『王子様』とは違う。

恋をする1人の少女そのものだった。

静まり返った室内が、次の瞬間、先ほど以上の大歓声に包まれる。


「華ちゃんが、可愛い……っ!」


「私たちの王子様が、片想い!?」


「男っていう生き物をあんなに軽視してた華ちゃんが、告白待ち!?」


いつの間にか俺の左右にきた南先輩と鳥羽さんが、俺の脇腹を肘でグイグイと突ついてくる。


「華ちゃんは告白してもらいたいんだって〜」


「アピールしてるんだって〜」


「……先輩たち、黙っててください。今、顔真っ赤なんで」


そんな俺たちのやりとりをよそに華に先輩達は質問攻めしていた。


「男の子ってことは年下?」


「そう、1つ下の子よ」


「うちの学校?」


「……それは内緒よ」


「えーじゃあいつ出会ったの?」


「私が困っていた時に、助けてくれたの。最初は冷たい態度を取ってしまったのに、彼は何度も私を救ってくれて……気づいたら、好きになっていたわ」


惚気を真正面から浴びせられ、俺はいよいよ逃げ出したくなった。

時計を見ると、ちょうど最終下校時刻。


「みなさんそろそろ下校時間なんで帰りの準備した方がいいですよ!」


俺が叫ぶように促すと、あちこちからブーイングが上がる。

その文句をよそにテーブルの文房具を片付けていると、不意に大きな声が上がった。


「待って!上原君」


「は、はいどうしました」


すると急に俺の手を指差してみんなでヒソヒソ話をし始めた。


「今度は華ちゃんの横に並んでみてくれない?」


「白鷺さんのですか?……あ、はい」


言われるがまま華の隣に立つと、先輩たちが一斉にスマホを構える。

もしかしてあれ俺ってバレてる?

すると勇気を出すようにひとりの先輩が声をかけてくる。


「あ、あのさ……上原君つい最近水族――」


「ごめんなさいみんな、時間よ。生徒会室を閉めるから、出る準備をして」


パン、と華が手を叩き、強制的に解散を促した。

彼女にそう言われ先輩たちも引き下がるしかなく、名残惜しそうに廊下へと出ていく。

そして最後華が彼女達に声をかけた。


「改めてみんなありがとう。……それとみんなの予想は、たぶん当たっているわ。……このことは他のみんなには内緒にしておいてね。じゃあ、また明日」


「え!?マジ」


「大胆すぎるよ華ちゃん!」


華がパタンと扉を閉める。

すると、廊下から地響きのような歓声が聞こえる。


「……さて。どうしましょうか、大地」


そう言って彼女は腕を組んで困り始めた。


「「「『どうしましょうか』はこっちのセリフだよ!!!」」」


俺、南さん、鳥羽さん。

3人の絶叫が綺麗にハモった。



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