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学校の『王子様』女子を甘やかしてみた  作者: 有明海
3章 学園祭前編

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35 王子様と匂わせ

週明け。

俺はいつもより少し早めに登校していた。

親友の遠藤から、話したいことがあると呼び出されたからだ。


「おはよ。……で、話って?」


「おはよう。お前、土曜日に何かあったか?」


遠藤の声は、すべてをお見通しだと言わんばかりだった。


「……青葉から聞いたのか」


「まあな」


「そっか……」


そこから、俺たちの間には重苦しい沈黙が流れた。


「青葉も、悪気があって言ったわけじゃないと思うんだ。あいつも反省してる。許してやってくれ」


「……わかってるよ。あいつがわざと俺を傷つけようとしたんじゃないことくらい」


「日曜、俺たちに泣きながら電話してきたんだよ。『終わった、私にはもう生きてる価値なんてない』って」


「そんな大袈裟な……」


俺は力なく笑ったが、遠藤の表情は真剣そのものだった。


「それに、中学の連中もみんな騒いでた。お前に謝りたいって。俺の彼女も、あいつも……みんなだ」


そう言われて、俺は黙り込むしかなかった。

あの時、青葉にすべてを話してしまった時点で、薄々こうなることはわかっていた。


「そっか。……でも、俺はみんなに会う気はないから」


俺の拒絶を察して遠藤はそれ以上、話そうとはしなかった


教室に戻っても周囲の視線を過敏に感じる落ち着くことはできなかった。

俺は逃げるように、生徒会室に向かった。



扉を開けるとそこにはすでに先客がいた。


「お疲れ様大くん」


「大地くんおつー」


「上原くんお疲れ様」


菊池さんと鳩ヶ谷さん、鶴見さんが勉強をしていた。特に3年生の先輩達は受験シーズンなのもあり本腰を入れて勉強してるようだ。


「顔色悪いけど大丈夫そ?」


「大丈夫です。最近少し疲れてまして」


「私たちが言えることじゃないけど程々に休みなね。大くん真面目だから」


そんなことを話しながらテーブルの上に俺は一つの箱を置いた。中には華とお揃いで買ったマグカップだ。


「それなに?」


「俺用のカップここにないじゃないですか?だから持ってきたんですよ」


「おーかわいいねこれ。猫ちゃんだ」


鳩ヶ谷さんが席を立って俺のマグをジロジロとのぞいてきた。


「みんなおつかれ」


後ろから鳥羽さんと華も遅れて教室に入ってきた。


「あれそれは?」


鳥羽さんが気づいたように俺のカップを指を指す。


「役員室ように持ってきたんです」


「へぇーいいわね柄も可愛くて。大地くんって猫派なのね」


「犬か猫で言ったらそうですね」


そんなたわいのない話をしていると華がじーっとカップをみて一言声に出した。


「私の持ってきたやつと似ているわ」


「「「え?」」」


「はい?」


そう言って華がバックから取り出したのは、

俺と色違いの柄のマグカップ。


隣に並べると――


全く同じデザインのマグカップだった。

2つの猫がテーブルの上で並ぶ。


「……これ、どう見てもペアカップじゃん」


鳩ヶ谷さんの指摘に、役員室に重苦しい……いや、妙に生温かい沈黙が流れた。


「すごい偶然ですね」


「偶然で片付けるには、あまりにも出来すぎていませんか?上原くん、白鷺さんもしかして――?」


役員達がじーっと俺の方を見てくる。

華は平然と何もないようにしている。


「これ隣町のショッピングモールで買ったのだけど上原くんも?」


「、あ、はい。俺も夏休みに可愛いなと思って」


「なるほどね。こんな偶然もあるのね、珍しいわ」


華は淡々とそう言い切り、無理やり白を切ろうとする。

だが、役員室の空気はさらに怪しさを増していた。


「すごいね! こんな偶然あるんだ。お揃いでかわいい!」


鶴見さんだけは純粋に驚いたのか、「すごい、すごい」とはしゃぎながら俺たちのカップをスマホで撮り始めた。

パシャパシャと乾いたシャッター音が室内に響く。


「……奇跡的な偶然もあるものね。よし、仕事に戻るわよ」


華がパンと手を叩いて場を締め、俺たちはそれぞれのデスクへと散った。

その際、彼女が俺の耳元に顔を寄せる。


『華、これは一体どういうこと?』


『なにが?』


『流石にお揃いのカップはまずいって。変な誤解をされる』


小声で詰め寄る俺を、華はどこ吹く風で受け流す。


『あのカップ、家で相方がいなくて寂しそうだったのよ。だから連れてきただけ』


『そうかもだけど……』


『それに――私は別に、勘違いされてもいいわよ?』


「え……?」


思考が止まった。

向かいに座る華の顔を、俺は最後まで直視することができなかった。



「……華、ああいうのはやめてよ」


「ごめんなさい。つい、面白くなっちゃって」


帰り道。俺の家の最寄りにあるスーパーには、華、たくま君、母さん、千代、そして俺の五人がいた。


「今日もみんなで食べたい」という彼女の要望は、もはや日常になりつつある。

最近、この5人で食卓を囲む頻度が極端に増えていた。


「あ、卵買い忘れたわ。みんな、外で待ってて」


「お母様、私もついていきます」


二人が店内に戻り、俺と千代、たくま君の3人が出口付近で待機することになった。


「あ、お兄ちゃんみてー!」


「ん?」


たくま君が道路の反対側を指差す。


「あっちの人、お姉ちゃんと同じ服着てる!」


「ああ、そうだな。同じ高校の……ひ……っ」


言葉が出なかった。

視線の先にいたのは、明らかに見覚えのある4人組。


鳥羽さん、鳩ヶ谷さん、鶴見さん、そして菊池さんだ。


マズい。そう思った頃には、あちらもこちらに気づいていた。


「あれ!?」とはしゃぐ鶴見さんを先頭に、4人がこちらへ向かって歩いてくる。

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