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最終話 これからデイスターズ♪

 無事にスポンジが焼けた。それも大きいのが6段、これを重ねれば1m超えだ。


 「やったー! やりましたねきゅー子さん! ・・・・・・あれ? きゅー子さんは?」


 気づくときゅー子さんがいなくなっていた。


 「九子さん? 向こうの方でライムと遊んでますよ」


喜楽里がやつれた顔で指を指す。


 「きゅー子さん・・・・・・」


 「ほら、ホイップクリームが溶ける前にやらなあかんで」


 五百井は大量のホイップクリームをボウルに入れて、喜楽里は絞り袋に詰めていた。


 「トッピングはみんなでやったほうがいいよね。はあ、おにいちゃんとホイップクリームのつけあいっことかしたかったなぁ・・・・・・」


 「そうやってサボるからおにいさんは置いてくるようにって言われたんやんか」


 「くそっ、腹立つ・・・・・・」


 ・・・・・・。


 ・・・・・・・・・・・・。


 「ねーちゃん、何乗せてんの?」


 「なにって、バジルソースだけど」


 「うえーっ・・・・・・」


 「なんでよ、バジルソース美味しいじゃない。お母さんの手作りよ?」


 「俺あんま好きじゃないんだよなぁ。それよりトマトとウインナーで・・・・・・」


 「あと、オリーブオイル・・・・・・」


 「もー! 余計なことすんなよー!」


 「・・・・・・そうね、一回自分で好きなようにやってみなさい」


 「分かったよ」


 前だったら譲らなかっただろうな。私も、ちょっとは成長してるかしら。


 ・・・・・・。


 ・・・・・・・・・・・・。


 「唐揚げの下準備完了っ!」


 2時間くらいお肉をタレにつけて寝かしておいた。寝かしている間はいちごを切るお手伝いをしてた、つまみ食いなんてしてないよっ?


 「ごめん、ちょっとピザの方を見てくる。揚げれる?」


 「任せてください、それくらい簡単」


 「うん! 頑張りまーす!」


 というわけで、衣をつける作業をしている渚さん、そしてコンロの前には私と晴人くん、律花さんが残された。


 「IHなんだ・・・・・・。私の家はガスだったから、ちょっと分かんないけど・・・・・・」


 「同じだろ同じ、よし、やるぞー」


 「子供だけじゃ危ないから、私も手伝うね」


 律花さんがエプロンをして菜箸を持つ。


 晴人くんがIHの強さを中火にする。するとたちまち油がぱちぱち音をたて始める。


 「そろそろいいんじゃない?」


 「そうね、じゃあいくよ」


 律花さんが菜箸で衣のついたお肉を取ると、油の中に放り込んだ。


 ぱちゅぱちゅぱちゅ・・・・・・。


 「わー! いい音―!」


 「だな、からっと美味しいのが揚がるぞ」


 唐揚げはあっという間に茶色くて美味しそうな見た目になった。


 「うわ! あっという間!」


 「IHって便利かもですねー!」


 「ん、このレシピだと2~4分揚げるって言ってるが、1分も揚げてないよな?」


 「知らないけど、中火だからじゃないかしら!」


 「うーん」


 なにか納得言ってないような顔をして、晴人くんが包丁で唐揚げを2つに切った。


 「ほら、生じゃねーか」


 「うーん、まだはじめの方だからかなぁ、ほら、ホットケーキも1回目は上手くやけないじゃない? だって、これ以上揚げたら焦げちゃうし・・・・・・」


 「なるほどー!」


 「うーん、もっと強くしたほうがいいのかなぁ」


 そんな話をしながら次のお肉を入れようとすると律帆のお母さんがやってきた。


 「ん」


 「あ、ふーきさん! いい感じですよ!」


 「・・・・・・生焼け」


 律帆のお母さんは次のお肉を入れようとする律花さんの手を押さえて、コンロの表示を見る。


 「これ、火力強すぎ」


 「え? でも中ですよ? それに、火力が強かったら中が生になるのはおかしくないですか?」


 「多分、210℃くらいになってる。熱すぎる、だから外が先に焦げる」


 そう言うと、慣れた手つきでIHを設定して、170℃って表示にする。


 「IHだから、ガスとはまた違うの。ふぅ、危ない・・・・・・」


 「ご、ごめんなさい・・・・・・」


 律花さんは何回も頭を下げる。


 「ふふ、面白い失敗。これも、いい思い出」


 「え?」


 「火事にならなかったなら、笑い話で済む。次からは気をつけて」


 それだけ言って、またピザを作ってる方に戻っていった。


 「・・・・・・私は大人、家事はからっきしですが、ちゃんとしないとですね」


 律花さんは拳をぐっと握って揚げる作業を再開した。


 次に出来た唐揚げは、ジューシーで、すっごく美味しかった。


 一方、白夜さんの方は。


 「どうだっ! ミシュランも真っ青だぞっ! 美味しいぞっ!」


 私たちの唐揚げとは違って、ちょっと大きく切ったお肉を使ってるからお店みたいな唐揚げが次々揚がっていった。機械がお肉を吐き出して、網が唐揚げを一度油から出して、戻して二度揚げしてる。出来た唐揚げは油をきってお皿にどんどん載せられていく。


 「あら、美味しそうですわね。いただきますわ」


 かりんさんが匂いにつられてふらっと立ち寄ってきた。先に白夜さんの唐揚げを食べる。


 「・・・・・・っ! ベストな下味のバランス、そして、衣の内側に肉汁がたっぷりですわっ。外側のかりっと感、そしてお肉のジューシー感、そしてそして、衣と肉の境界線は少ししんなりしてる。このコントラスト、まさに芸術ですわ・・・・・・」


 「これからの時代、美味しいは自動で作れるのさ! 手づくりの価値はなくなっていくだろうね! 大量生産される衣料品、食品、所詮科学の発展が産業の全てなのさ!」


 次に、かりんさんが私たちの唐揚げを食べる。


 「・・・・・・。衣は薄めで、お肉が主体になっていますわね。にんにくが少し強めで、ご飯をかきこみたくなる味ですわ」


 白夜さんが作ったやつより、少し反応は薄かった。


 「お兄様の唐揚げはまさに至高、すごく美味しい唐揚げですわ」


 「さすが妹! 公平なジャッジだー!!」


 「ですが、食に完璧というものはありません。そんなのがあったら、人間は食を追求したりしませんものね。ですから、わたくしはどちらのほうが美味しいなどと無粋なことは言いませんわ。“食の優劣は比べることに非ず”ですわよ」


 「有名な人の言葉ですか?」


 「わたくしの座右の銘ですわ」


 「ちぇっ、つまんねーのー!」


 「これ、律帆さんに持っていってあげて欲しいですわ」


 かりんさんは私たちに笑いかける。


 「ふーきさん監修ですのよね、ということは律帆さんの好きな味付けのはずですわ。きっと、お兄様の唐揚げより美味しいっていって食べるに決まってます」


 「うん! 晴人くん、早く持っていってあげよ!」


 「おう、そうだな」


 私は唐揚げを一個爪楊枝に刺すと、律帆ちゃんに持っていった。


 「からあげだよー! 揚げたてだよー!」


 「からあげっ!? 一昨日のおかえり会でも昨日の誕生日会でも食べたわよっ!? 3日連続じゃないっ!!」


 「あー! ねえちゃんばっかりずれー!!」


 「ちょっと! 熱っ!! 出来たてだったらいいってもんじゃないのっ!」


 「出来立てだよーー」


 「ほら、食えよ」


 「やけどするからっ!」


 そんな微笑ましい光景を見ていたかりんさんと白夜さん。


 「ところで、かりん。スパイスとして山椒とカレー粉、柚子胡椒を用意してるんだ、試してみなよー」


 「本当ですのっ! それはグッドですわっ!」


 白夜さんが作った唐揚げをパクパクとつまみ食いしていた。


 ・・・・・・。


 ・・・・・・・・・・・・。


 「うむむぅ」


 僕はカヌレを作っていた。ちょうど1陣が焼きあがったのだけれど、焼きムラがあって微妙な感じだ。


 「マカロンが膨らまなかったよー! 思いの外重い、ヘビよりヘビーな状況だよー!」


 「ダメでしたー! 膨らみはしましたけどひび割れがひどいことにぃー!」


 そんななか、サチウスは完璧なお店レベルのマカロンを焼き上げていた。


 なぜ、なぜ上手くいかないんだ? 料理と違って、お菓子作りはマニュアル通りにやったら成功するはず・・・・・・。


 カヌレの型はテフロン加工のものではなく、本格的な銅の型。結構お高いものだけど、この家にはあったので使わせてもらった。銅の型を使えば均一に熱が通るものだと思っていたのに・・・・・・。


 「あら、カヌレですのね」


 「かりんさん・・・・・・。上手く出来なくってさ、ほら、きれいな色にならないんだ」


 「1ついただいてもよろしくて?」


 「うん」


 かりんさんは僕の作ったカヌレを1つとると少しかじった。


 「・・・・・・。ホワイトラムですわね、どっちかというとダークラムのほうが美味しく作れると思いますわ。それと、この程度の焼きムラなら焼き直せば綺麗になると思いますわ」


 「さすがかりんさん・・・・・・。食に関してはプロフェッショナルだね」


 「いえ、わたくしはお料理はしますけれど、お菓子作りはあまりしませんの。ですが、その中でもカヌレだけはよく作っていたのですわ。ふふ、気が合いますわね、わたくしたち」


 「そうだね」


 僕らが話している間、ほかの2人はサチウスにマカロンが失敗した原因を聞いていた。


 「ライムさんのはピエが出てませんね・・・・・・。一度表面を乾かしてから、一気に焼けば良いかと思います。御園生さんはマカロナージュが足りてませんね、それから焼く前に爪楊枝などで気泡を潰せばひび割れないで綺麗なマカロンになると思います」


 「なるほど」


 「次は成功させてみせるよー!」


 ・・・・・・。


 ・・・・・・・・・・・・。


 それから、3時間くらいみんなで楽しくお料理した。


 「さぼり?」


 律帆ちゃんが私に声をかけた。


 「いや、なんていうかね。すごく、幸せだなって、しみじみ思ってたの」


 私にはもったいないくらい、楽しい。


 3人で一緒にVTuber活動してたときも楽しかったけど、今こうやって、こんなにたくさんの人で仲良く出来てるっていうのが、すごく幸せなことなんだなーって。


 「そう、この景色はあんたが作ったのよ」


 「え? 私が?」


 そんなことない、みんなが頑張ったから手に入ったハッピーエンドだもん。


 「覚えてる? 小学校の時の授業参観」


 「私がレジェンドVTuberになりたいって言った時?」


 「そうよ、私あの日のことだけは今でも鮮明に思い出せるの」


 今から、えっと10年前くらいか。もう、そんなに経ったんだ・・・・・・。


 「私は非現実的だって、そんなのありえないって言った。晴人もね」


 「うん、言ってた」


 「でも、それでも諦めなかった。頑張る藍に感化されて、私も晴人もVTuberを始めて、ついにトレンドVTuberになれたのよね」


 「そうだね、みんなで頑張ったもんね。お父さんも、お母さんも、みんなが応援してくれたから」


 「藍のキラキラはみんなの憧れになったし、希望になったのよ。私の知り合いも、アイカが、ふれあが好きだって言ってたわ」


 「良かった、嬉しいな」


 「あの授業参観の時、あんたはみんなに勇気を与えられるようなVTuberになりたいって言ってた。その夢は、叶ったのよ。私を苦しみから解放して、みんなをこうやって1つにした」


 私は、みんなを見る。


 晴人くん、最近よく笑うようになったように思う。あの機械から出てきてから、こっちの世界がもっと好きになったって言ってたし。そして、渚さんとも仲良し。


 その渚さんも、晴人くんがみんなと話してるところを見て、遠くから笑ってる。


 斑鳩さんとかりんさんはラブラブ、最近よくデートしてるって教えてくれた。


 山田ちゃん、ミリコちゃん、アンちゃんは相変わらず3人仲良し。でも、アンちゃんは前より大人っぽくなったし、たくさん成長してる。


 夏芽ちゃんと五百井ちゃんは、前より仲良くなったようにみえる。特に、五百井ちゃんは夏芽ちゃんにちょっとベッタリしてて、夏芽ちゃんもおにいちゃんが戻ってきたからかすごく前向きで、みんなを引っ張ってくれる。


 ランちゃんとワールちゃんは・・・・・・。あんまり変わってないけど、楽しそう。


 みみちゃんとさっちゃん、すごく明るくなったな。バトルでも一緒に戦ってくれる心強い味方、こうやってみんなにいろんなことを教えたりしてくれて、好きなことを語ってるときの顔はとても楽しそう。


 喜楽里ちゃんは、前よりすごく明るくなった。それに、私に友達になって欲しいって言ってくれた。すごく嬉しかった。


 きゅー子さんはライムちゃんと仲良し、ちょっと一方的なようにも見えるけど・・・・・・。


 リーフィちゃんも、コスモちゃんも、律帆のお母さんも、律花さんも、白夜さんも、咲也さんも。


 みんな、みんな。


 あれ、なんでかな、不思議だな。嬉しいのに、ちょっと目が熱いや。


 「藍・・・・・・」


 「よかった、本当によかったよぉっ! 私、すっごく幸せだよっ!」


 私は律帆ちゃんに抱きついた。


 「あら、いつもと逆ね」


 「みなさーん!! ケーキが出来ますわよー!!」


 「てっぺんは私の出番です! 任せるですっ!」


 山田ちゃんがはしごに登って、慎重にチョコプレートをてっぺんに乗っける。


 「さいごにだいなしにするなですよー!!」


 確かにっ、なんだか最後の最後でずっこけそうだよね。


 「任せろですー!! あぁっ!?」


 突然はしごがぐらぐらって揺れ始めた。


 「危なっ!」


 それをなんとか夏芽ちゃんが押さえて、五百井ちゃんが体を支える。


 「ほら、さっさと乗っけちゃいなよ」


 「ほんま、最後の最後に台無しは勘弁やで・・・・・・」


 「そのとおりですね・・・・・・」


 「“チョコ”を“ちょこ”っと乗せるだけなのに、ドキドキするよー!」


 チョコプレートが無事に乗る。そこにはHappyって上手な文字で書いてあった。


 「Happy?」


 「クリスマスって書くのもなんだかもったいなかったので、色んな意味を込めてHappyにしましたわ!」


 「なるほどね、ここにいる人達分の意味がこもってるってことだね」


 「それでは乾杯ですわっ!!」


 「あっ、あのっ!」


 私は大きな声を出した。


 「私、あいさつしたいですっ!」


 突然私が声を出したからか、みんな驚いてた。


 「お願いしますわ」


 「私のおにいちゃんを救ってくれた実質命の恩人だもん。むしろ私からお願いしたかったくらい」


 みんな、私が手をあげたのを見て拍手してくれた。


 私は、マイクを渡される。


 ドキドキする。今までVTuberとしてみんなの前に立ったことはあるけど、今は私として、藍としてここに立ってる。みんな、静かに私の言葉を聞こうとしてる。ちょっと焦る気持ちを押さえて、呼吸を置いて、ゆっくりと口を開く。


 「私の夢は、レジェンドVTuberですっ!」


 みんなの視線は、とても温かった。


 「はじめは、みんなを幸せにしたかった、勇気を与えられるような、そんなVTuberになりたかったの! でも、そのためにどうすればいいんだろうって、最初は分かんなかった。そんな時、いつも私と一緒にいてくれたのが、律帆ちゃんと晴人くんだった」


 最初は、どうすればいいんだろうって、焦ってたときもあった。


 「頑張らないとって思ってた、そんな時に毎日の楽しさをくれたのはみんなだった。毎日本当に楽しくって、一緒に作戦会議をしたり、ラジオ番組に出演したり、歌を作ったり、いろんなことをやったの! もちろん、辛いこともたくさんあったよ! でもね、それを乗り越えたら、それも大切な思い出になったの。それで、前にライブをしたんだ、失敗したら晴人くんを助けられない、すごく重要なライブ。1億人に見てもらわないとダメだったのに、10万人しか来なくって、でも、来てくれた人達には幸せをあげたいって思って、頑張ったんだ。そしたら、なんかすっごい奇跡が起きて、律帆ちゃんと晴人くんが来てくれて、ライブが出来たんだ。私、あのときちょっと泣いちゃって・・・・・・。すっごく嬉しかったから」


 「子供は奇跡を起こす。きゅー子さんが言ってたよね」


 「せやな。奇跡、ほんまに起きたもんな」


 「そして、今こうやってたくさんの人とパーティーが出来てるっ! 私、夢のレジェンドVTuberになれたと思う! ちょっと自分を褒めすぎかもしれないけど、私が頑張ったから、この景色が今見れてるんだと思うっ!」


 「そのとおりだと思うよ、藍ちゃん」


 「間違いありませんわ、この奇跡はあなたが起こしたものですわよ」


 え、えーっと。最後はどうやって終わりにしよう。


 そのときちらっと見えたチョコプレートのHappyの文字。私だったら、どんな意味にしようかな。


 Happy End? でも、全然Endじゃないもん。これからもっと頑張らないと。レジェンドVTuberになったからって、私のVTuber活動はこれからもずぅーっと続いていく。というか、これからが大切だよっ!


 じゃあ、Happy Dayにしようかな。今日はすっごく楽しかったし。


 ・・・・・・。いや、違う。


 私はマイクを両手で強く握った。


 「Happy Days。これからも、幸せな毎日が続きますように!!」







 VTuberを1mmしか知らない人が、にわか知識を頼りに書いたVTuber近代SFジュブナイルバトル小説 ? 終 -


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