23話 ほのかにデイスターズ♪
「突然呼ばれたと思ったら」
「クリスマスパーティーかいな・・・・・・」
私と五百井は突然かりんさんに北海道に呼ばれた。そしてすごい豪邸に呼ばれたんだけど、何が始まるのかと思ったらクリスマスパーティーをするらしい。
「目指すは1m! でっかいケーキを作りますわよ!!」
「こーいうのって、あらかじめ作っておくもんなんじゃないの?」
「みんなで作るから意味があるんですのっ!」
「ええ、みなさんを呼んでパーティーをしたいって言い出したのはかりんさんですが、私もすごく興味があったので、こうして会場を準備させていただきました」
ここが小林さんの家ってことか・・・・・・。すげぇ。
『材料は私が用意したんですよっ!』
声は聞こえども姿は見えず。私たちは聞き覚えのある声の主を探す。
「言い忘れてましたわ、みなさん招待したARコードの入力をお願いしますわ」
「え? ARコードってなんや?」
「ほら、こうすんの」
私は脳内のイメージを五百井に直接送信する。
「あーもう、全然分からへんわ・・・・・・」
コードを入力すると、舞台は現実と変わらない、けど見覚えのある人達がいた。
『お久しぶりですっ! 黒部ランですっ!』
『白野ワールです・・・・・・、えへへ、こういうのもアリですね』
「ふたりとも、久しぶり!」
彼女たちAITuberは実体こそないものの、私たち全員に見えていた。
『きゅるるー!! おひさひさー!! ぶへらばー!』
「コスモも、久しぶりやで」
『あら、懐かしいメンツね』
「そうはいってもまだ1ヶ月も経ってないでしょ」
『時間の感覚なんて人によって違うのよ』
「また仮想世界に戻ったの? もったいない」
私がリーフィと話していたところで割入ったのは律帆だった。確か、リーフィは律帆から生まれた存在だって言ってたっけ・・・・・・。もうそのことは話したのかな。
『やっぱりこっちのほうがいいわ。温泉がたくさんあるもの』
「そうね、こっちの未来じゃ温泉も減ったものね」
この2人、やっぱり似てる。顔の前に手をあてて笑うところとか、言葉使いとか。
まだ全員集まってないけど、どんどん人が増えていく。その中には見たことのない人もたくさんいた。
その中でも異質なのは紙袋をかぶった人だ。
「あの、どなた?」
「あぁ、は、はじめまして・・・・・・。パティシエやってます、えっとVTuberのサチウスです・・・・・・」
「へー、本名は?」
「そ、それは個人情報です・・・・・・」
変な人だ。
「巨大ケーキには彼女が欠かせませんわっ! 日本一のパティシエですわよっ!」
「かりんさんには借りがありますから・・・・・・」
おどおどした様子の人だけど、お菓子作りの才能はお墨付きみたいだ。
あと1人、知らない人がいるな・・・・・・。そういえば、前に温泉旅行で藍がみみちゃんって人を呼んでないとかいってたな。さっきのがサチウスってことは、こっちがそのみみちゃん?
小さい人だ、何故か白衣を着ている。
「はじめまして、みみちゃんってあんた?」
「はいっ! そうです! 御園生みみって名前でサイエンス系VTuberやってます!」
「そうなんだ、よろしく。私は高田夏芽、夏芽で大丈夫」
「よろしくです、夏芽、さん」
へぇー、色んなVTuberが来てるんだ。
そして新しく来た人、見たことはないけど、なんとなく誰かは分かる。
渚さんだ、高身長で仮想世界で会った姿よりもかっこいい。モテるんだろうなぁ、晴人が好きなショタコンじゃなかったら。
そして、ようやく全員集まった。
「えー、突然のお呼び出しにこれだけ集まってくれて嬉しいですわ! 今日の目標は高さ1mのケーキを作ること、以上! 各自取り掛かりますわよ!」
「ちょっと待ちなさいよ、そんなの作れるの? それに、ケーキ作りなんかしたことないんだけど」
「困った時はサチウスに聞くといいですわ!」
「でも、あまり本業が出しゃばるのもダメなので・・・・・・。あくまでサポートって形で・・・・・・。私はデコレーション用のマカロンを作ってます」
「以上! これ以上は質問も聞きませんわ! さぁ各自取り掛かってくださいまし!」
かりんさんは無理矢理に締めて、壇上を降りて材料の乗ったテーブルで材料を眺めている。
「さっさと作るわよ、五百井」
「1mって、ホンマに作れるんかいな・・・・・・それも初心者が」
「スポンジを焼くところからね、小林さん! オーブンってあるの!?」
「ええ、私も一時期お菓子作りにこっていまして、その時に業務用オーブンと型は買ってあります」
小林さんに誘われるままに部屋を移動すると、お店にあるような巨大オーブンがあった。これだけ大きければ土台もしっかりしたのが作れそうだ。
「五百井、じゃあ材料を全部運ぶわよ」
「お、おー!」
・・・・・・。
・・・・・・・・・・・・。
「おお! でかいオーブンだな!! ピザ焼こうぜねーちゃん!!」
「ばか言うんじゃないわよ、今日はケーキを作る会でしょ」
「あら、それでしたら庭先に石窯があるので、そちらを使っていただければ」
「この家、なんでもあるのね・・・・・・」
「ピザだピザ! 俺ウインナー乗せたい!」
律帆ちゃんと羽矢くんはどうやらピザを作るみたい。
「晴人くん、私たちはどうする?」
「そうだな、じゃあ俺達も何か料理でも作るか? ケーキも大事だが、俺はせっかくだから宴会用メニューでも作ったらいいんじゃねえかなって思う」
「じゃあ唐揚げ作ろうよ! 律帆ちゃんの好物!」
「おいおい、3日連続でか・・・・・・?」
「いいね、それ。律帆が喜ぶ」
一緒に呼ばれた律帆のお母さんも賛成みたい。
「そういえば、律帆ちゃんのお母さんってお名前はなんですか? お母さんが2人いるからややこしくって」
「ふーき」
「ふーきさん、ですか? あれ? どこかで聞いたことがあるような」
「あー! ふーきさんじゃないですのっ! 貴方のお洋服、とっても好きですわ!」
「ありがと」
「あぁっ! ふーきってデザイナーさんの!?」
「なんだ? 有名なのか?」
「うん! 前にいちかりんちゃん(斑鳩)が着てたでしょ! あれだよ! フリフリが多くて可愛いの!」
「へぇ・・・・・・」
「それより、唐揚げだよね、材料がないから買ってこないと」
「この感じ、前の誕生日会を思い出すな」
「うんうん!」
「手伝わせてほしいな、晴人くん」
「渚さん・・・・・・」
背が高くてかっこいい人、晴人くんが好きな人だ。
「はっはー! 僕も参加しようー!」
それと、律帆ちゃんのお父さん。
「ふーき! 久しぶりだね」
「馴れ馴れしい・・・・・・」
「律帆を預ける時に一回会ったじゃないか!」
「それだけ、でしょ。でも、ありがとう、素敵な出会いをくれて」
「そう言ってもらえると嘘でも嬉しいよ!」
「いや、ホントの話。律帆と出会えて、私は幸せ」
「ふーん、恨んでないんだ。子を捨てた僕のことを」
「もちろん、白夜のことは好きじゃない。けど、責めたところで意味はないから」
「あっそー!」
そっか、律帆のお母さん、ふーきさんはてっきり白夜さんに怒るのかなって思ったけど、律帆ちゃんと出会えたことのほうが嬉しかったんだ。辛いこともたくさんあったのに、それでも嬉しかったって言えるのは、本当にすごいな。
「さてさて、唐揚げ作るって言ってたよね、なんと! じゃーん! 唐揚げ製造マシンを発明してきました! これさえあればカットした鶏肉を放り込むだけで勝手に衣をつけて、揚げて、ベストなタイミングで引き上げてくれるよ! 昨日律帆がからあげを美味しそうに食べてたのを見て思いついたんだ!」
白夜さんはパーティーが始まる前から白い布に包まれたなにかを持ってきていたけど、その中身が唐揚げ製造マシンだったなんて・・・・・・。
「僕も律帆の好物を作ろうと思っててさ! 父として、ね!」
「その気持ちは嬉しい。けど、私は手を片栗粉で汚して、みんなで楽しくゆっくり作りたい」
「ははー、工芸家タイプだねー! じゃあ勝負だよっ! どっちのほうが美味しいのが作れるかね!!」
「望むところ」
バチバチと火花をちらしてる2人、すごいけんまく・・・・・・。
「じゃ、どっちみち買い出しは必要だね、行こうか晴人くん」
「おう・・・・・・」
「北海道は農場があるから、美味しい鶏が売ってるかもね」
2人は渚さんのオープンカーに乗ってそのまま行ってしまった。
「私は、何をしたらいいでしょう・・・・・・」
律帆の生みの親、律花さん。
「じゃあ私たちは味付けの準備しましょうっ! あの、醤油とか、生姜とか混ぜるんです!」
「ふふーん、僕は鶏肉さえ買ってきてもらえたら完璧だよ。なんたって、この機械にはちゃんと下味に漬け込む機能もあるからねっ! 生姜、にんにくのチューブと、醤油と酒を入れれば勝手にベストな塩梅で作ってくれるのさ!」
白夜さん、すごいんだけど、なにか違うんだよなー・・・・・・。
・・・・・・。
・・・・・・・・・・・・。
「見てくださいまし! 各地のフルーツをありったけ取り寄せましたわ!」
「凄いな・・・・・・。この白いいちごとかはじめてみたよ」
「栃木産の美味しいいちごですわよっ! 素晴らしいでしょうっ!」
『わー! キラキラですねー! あ、コレを取り寄せたのも私なんですよ、褒めてくださいねー!』
「ありがとう、ラン」
僕は実体のないランの頭を撫でてやった。
『褒められましたー! きゅー!』
「斑鳩? 一応わたくしたち付き合ってますのよね?」
「え、うんそうだね」
「でしたら、あまりわたくし以外の女性へのスキンシップは控えるべきではありませんでして?」
「え!? いやでもARの中だけだよっ!? 実際に触ってるわけでもないのにっ!?」
『なんですかーそれ!! 私はちゃんとここにいますよっ! ほらっ! ほらっ!』
そう言うと、僕の近くに寄ってくる。
「仮想世界で恋愛をするご時世、それは言い訳になりませんでしてよ」
「うわぁっ! 板挟みだぁっ!?」
「なにやってるですか?」
今度は佐藤さんたちがやってきた。
「あぁ、今は・・・・・・。何やってるんだろ」
ただフルーツを眺めながら騒いでただけだ・・・・・・。
「おいしそうですー」
「た、食べたらダメですよっ? 七海っ!」
「おいしそうですー」
物欲しそうに白いいちごを眺める七海。
「そういうと思って、買っておいたよ」
それを見かねた小林さんが冷蔵庫からいちごを取り出して七海に渡した。
「うわー! さすがです! こばやし!」
「わ、私も一口食べていいですか・・・・・・?」
「だーめ」
「そんなぁ・・・・・・です」
「七海ちゃんはまだ子供だからいいの」
「でも、最近は言葉も上手くなってきてるです、もう子供じゃないですよ」
「まぁ、確かに“でしゅ”とか、“れす”とかの赤ちゃん言葉は抜けましたよね」
「アイデンティティクライシスなのです・・・・・・」
結局、ここにいる全員駄弁ってるだけで、ケーキ作りは全く進まないのだった。
・・・・・・。
・・・・・・・・・・・・。
「あらー!? どうしましょー! スポンジが焦げちゃうっ!」
私はきゅー子さんと再会した。とはいっても、こっちの世界のきゅー子さんとは初めて会う。それに、姿も完全に幼女じゃなくなって、きゅー子さんの好みからは離れてしまった。
「一回止めましょっか」
まだ膨らんでいないのに、何故か黒くなったスポンジを持って、サチウスさんのところに行った。
「マカロンだよー! 人生で一回は作ってみたかったよー!」
「お菓子作りは科学です・・・・・・。論理的、科学的に工夫すれば初めてでもいいものが作れるはず・・・・・・」
こっちでは和美と御園生が奮闘していた。
「あ、どうしたんですか?」
サチウスさんがスポンジの型を持った私たちを見て何か察したのか、声をかけてくれた。
「あの・・・・・・。それが、スポンジが膨らむ前に焦げちゃうんです」
「どうしたらいいのかしらぁ・・・・・・」
「多分、大きいからヒーターと近くて焦げちゃうんですね。アルミホイルを被せてあげたら多分大丈夫ですよ」
「なるほど」
「って、これでは生地が多すぎますっ!」
「え? でも土台だから大きくないと・・・・・・」
「これだと型をはみ出して不格好になってしまいますっ・・・・・・。貸してくださいますか!?」
言われるままにサチウスさんに生地を渡すと、串とかでぷすぷす刺したり、スプーンで掘り返したりして焼け具合を確認する。
「ここくらいですね」
そう言うと、私たちが入れた3/4くらいの高さを指差す。私には誤差にしか思えないけど、パティシエが言うならそうすれば上手くいくんだろう。
「りょーかいです! ありがと!」
「また何かあったら呼んでください・・・・・・」
というわけで、反省を活かして生地を全部入れ替えて、言われた通りの量にした。
「こんくらいか」
「そうねぇ」
「ほら、生地が追加で必要になったから、五百井、喜楽里、頼むわよ」
「うわぁー! 腱鞘炎になってまうでー!!」
「腕がっ! 終わるっ!」
さっきから黙々と生地を混ぜていた2人に追加注文する。
「あ、あの。ミキサーはありますよ?」
申し訳なさそうに小林さんがミキサーを持ってきた。
「それを先に言ってくれぇー!!!」
「なんでぇー!!」
「はは、五百井らしいわね」
「腕がつるぅー!! 慰謝料よこせー!! あぁー!!」
「あら、喜楽里ちゃんが可哀想・・・・・・」
「うちの心配はっ!?」
「いいですよ、無視してもらって。それより早くスポンジを焼かないと日が暮れちゃいます」
「それもそうね、2人とも頑張って!」
「「うあーー!!」」




