魔王の村ができました。
ご無沙汰してますセトです。
嫁が強すぎて追放を受けた道具屋で修理工です。
今の肩書きは魔王になりました。
強いのかって?とんでもない。
嫁達が強すぎなだけです。
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魔王城――というにはちょっと大げさで、実際はほぼ集落。
いや、もう村と呼んでもいいかもしれない。ここが俺、セトの追放先だ。
当面はセラの財力に頼って、食料や物資を調達しているが……
いつまでも甘えてるわけにもいかない。そろそろ、稼ぐ手段を真面目に考えないと。
とはいえ、追放された身でも、ノアとの商売は一応できるらしい。
「修復依頼の絵画、置いておくよ」
そう言って数枚の絵を俺の作業部屋に置いていくのは、セラ。
豪商の娘で、美術商で、貴族や財界にも顔が利く変態――いや、俺の嫁だ。
魔王城(仮)には、ちゃんと俺専用のアトリエがある。
そしてどういうわけか、修復依頼が途切れない。
「魔王城に飾られたとか、“魔王が修復した”って言うだけで、良い宣伝になるんだよ」
なるほど、そういう理屈か。
肩書き商法、恐るべし。
まぁ収入があるのは素直にありがたい。
「山の見回り終わったよ。何本か木も倒してきたから、あとで確認お願い」
戻ってきたのはモナ。
神獣の名を持つ獣人・モーナフェルム。そして俺の嫁。
彼女の兄弟たちのおかげで、山の手入れも夜間の警備も滞りなく行われている。助かっている。
「フィーナと若手に任せるよ」
そう返しつつ、俺は作業に目を戻す。
フィーナは元・教会任命の聖騎士で、今は俺の嫁の一人。
この地で新たな宗派を立ち上げつつあり、筋肉信者たちを引き連れてやってきた。
おかげで魔王城の改修工事は大幅に進行中だ。
鍛錬場に教会まで建て始めてるが……まぁ、大目に見よう。
その向かいには、もう一つの鍛錬場がある。
木剣がぶつかり合う音が、今日も響いていた。
あれはセラのお付きで、俺の嫁――ルナの道場。
……いや、実質は彼女の祖父・ディグの道場か。
一応ルナが道場主になっているが、爺さん、まだまだ現役バリバリだ。
その道場の門下生である冒険者たちも、この地に根を下ろし始めている。
魔王のもとに行くなんてロクなことじゃないはずだが……ルナのファンも多いらしい。
もう人妻だぞ?
……まぁ、あの可愛さならわからなくもない。
そんなことを考えていたら、金髪がふたり、俺に近づいてきた。
ヴァンパイアハーフの姉妹、アッシュとヴェルだ。
……すまん、両方とも俺の嫁である。
何人いるのかって? 大丈夫、あとひとりだ。
黒髪と銀髪が入り混じった長い髪の少女――レン。
ダンジョンで出会った、俺の最初の嫁。伝説の最強スケルトンだ。
今は肉付けして、外見だけなら人間とほぼ変わらない。
ただし中身は、骨だけ。
声帯がないので、レンとの会話は筆談だ。
【お昼ご飯だよ】
「もうそんな時間か」
俺は筆を置いて、立ち上がる。
ヴェルが手を取り、自然と胸を押し当ててくる。
「近いよ」
そう言っても、ヴェルは何も言わず微笑むだけで、歩き出す。
アッシュも、同じように微笑んでいる。
ヴァンパイアハーフとして、かつては恐れられた二人。
だがこの地では、気兼ねなく過ごせている。
……まぁ、フィーナの信者たちからはまだ恐れられているが。
そのうち慣れるだろう。たぶん。
そんなこんなで、俺は今日も――楽しく過ごしている。
お待たせしました。忙しい時期が終わったのでまた再開します。
またよろしくお願いします。