人が増えればやることも増える
「山の木材、運び終わりました!」
今日も砦は筋肉と活気に満ちている。いや、活気というか騒がしいだけというか──。
フィーナが聖撃を辞めるって言い出したときは驚いたけど、マグナスの返しのほうがもっと驚きだった。
「じゃあ、砦に新しい宗派を作ってくれ」
ってなんだそれ。軽すぎないか?
まぁその結果、新しもの好きの筋肉信者が何人かフィーナについてきて、ディグの弟子たちまで合流してきたから、砦は一気に人が増えた。
山じゃモナの兄弟たちが「木の手入れ」と称して暴れまわってるし、それで獣道ができて、若者たちが材木として有効活用してる。
……いや、これもう完全に自給自足じゃないか。
「騒がしいわね」セラが紅茶を飲みながら、どこか楽しげに言う。
「それで、王都との話はうまくいったか?」
「悪い方向には行ってないわ。でも…」
「でも?」
「そのうち、ちょっかい程度には来るわよ」
「……やっぱりか」
俺が溜息をつくと、セラは楽しげに笑った。
「防衛訓練だと思って頑張ってちょうだい」
「大教会相手だろ?練習にしては、だいぶスケールおかしいんだけど」
「フィーナの宗派づくりも順調よ。宗教戦争なんて、今さら始まったところで誰も驚かないし」
セラはそう言うけど、俺としては正直、戦いとか権力争いとかは、あまり関わりたくない。
「……難しいことは任せるよ」
「任されたわ。安心して井戸でも掘ってなさい」
はいはい。
「でもなぁ、木材だけじゃ守りが不安なんだよな」
「堀でも掘って、その土で壁にしたら?」
「人手が足りない」
「心配ないわよ。冬になったら、野盗が流れてくるし」
「……え?」
「人が集まっていて、警備がまだ薄そうなここは狙い所なのよ」
「それはわかるが、人手とどう繋がる?」
「食うに困ってるだけなら、とっ捕まえて仕事与えればいいの」
「働くかね、そういうの」
セラが首を軽く撫でて笑った。
「働かないのはね、使えないから処分……なんて冗談よ」
「それ、笑えないからな」
「大丈夫。フィーナの筋肉説法があれば、だいたい改心するわよ」
「それもまた怖いんだが……」
俺は砦の中央を見渡しながら、ふと思った。
砦の規模が大きくなるたびに、必要な物も、関わる人も増えてきた。
水、食糧、寝床、防衛、教育、流通、娯楽、宗教──
これ、もしかして──
「……俺、国を作ってるのか?」
「まだ村にも満たない、ただの集落よ」
「それにセトハーレムが中心で集まるって不健全では?」
「神様たちの話だって、そんなものよ」
そうか、そういうもんなのか……って納得しかけたところでセラが、ふと思い出したように言った。
「そうそう。城塞都市ノアとの商売は、今まで通りできるわよ」
俺は思わず身を乗り出す。
「てっきり全面遮断かと……」
「そこまで極端にはしないわ。アレクとしてもセト君の修復技術は手放したくないのよ」
「でも、俺が行くのは……」
「ダメよ」即答だった。
俺は小さくため息をついた。
「やっぱりか……」
「セトくんは今ちょっと“問題視”されてるから。下手に姿を見せると、あっちの保守派が騒ぐわよ」
セラはそう言って、茶菓子に手を伸ばす。
「騒ぐくらいならまだいいけど……暗殺されちゃうわよ?」
セラが冗談めかしてウィンクしてくる。
「笑えないからやめて……」
「まぁ大丈夫よ。入国の人数は制限あるけど、代表立てて交易目的で通すぶんには問題ないわ」
「誰が行くんだ、アッシュ?ルナ?」
「そのへんは調整するわよ。私とルナが多いかもね。君は……砦で井戸でも掘ってなさい」
「うっ、井戸ばかり掘るな……」
「まずお水が大事。あと、あんたもそろそろ税金の概念を覚えなさいね」
「……追放されたのに、税金取られるのかよ」
「違います。税金を取る側です。人増えてるんだから、それなりに管理費も必要になるわ」
ああ、俺……ただの道具屋だったのになぁ。
なんか違う気がするけど──
魔王城と城下町建設ライフが始まりそうです。
『最強スケルトンに恋をした ~肉付けしたら美少女でした~』完結しました!
ここまで読んでくださった皆様、本当にありがとうございました!
「おいおい、まだ話途中だろ!?」という声もあるかと思いますが、
ご安心ください。タイトルを新たにして、新章へ突入します!
スケルトンとの出会いからはじまり、まさかの魔王認定──
そして嫁たちとの砦スローライフ(?)へ。
セトとレンたちの物語は、ひとまずここで一区切りです。
新章はただいま準備中。
もしよければ、感想やレビューなどいただけると、とても励みになります!
次回作
『最強スケルトンを嫁にした 〜嫁たちが強すぎて魔王認定されて追放された〜』
……あと実は、この「恋をした」編も、最初から書き直したいところではあるんですが、
それはまた今度。ということで──
また次回、よろしくお願いします!




