基本は六角形
聖撃での話し合いが終わった。
アッシュは何やら話があるとかで、そのまま聖撃に残った。
「気をつけてね」
モナが軽く手を振ると、アッシュも無言でうなずく。
そして――帰り道。
俺、モナ、レン、ヴェル、そして――
「……なんでいるの?」
「何がです?」
「君だよ、君。フィーナ」
「ご一緒しては、まずいでしょうか?」
まずくはない。だが違和感しかない。
「何か用事?」
「レンさんともう少しお話ししたいなっと」
さっきスケルトンと知ったばかりだものな無理もない。
「あとは偵察です」
「堂々と言うね」ヴェルが笑う。
「いや、さすがに堂々すぎるだろ」
「ですが、実際に観察しないと」
「何を観察するつもりなんだ」
「セトさんの……動向を」
「具体的に?」
「女性関係とか、筋肉のつき具合とか――」
「筋肉は関係ないだろ!!あと女性関係もほっとけ」
レンが紙に一言。
【また増えました】
モナがため息をつき、ヴェルが楽しそうに肩をすくめた。
そして俺は、どこか遠くを見つめた。
「増えてないよ」
「今夜はレンさんと、枕を並べて語り合うつもりです」
「泊まるの!?」
ヴェルが耳元で囁いてくる。
「セト、そろそろ認めたら?」
「何を」
「セトはヒモじゃない、ハーレムの主だよ」
「それも違う。増えてないって言ってるだろ」
「ふふっ」モナが小さく笑った。
レンが紙を掲げた。
【今日もにぎやか】
それだけ書かれた文字に、俺はなんだかもう逆らう気力も失せて――
「……好きにしてくれ」
「はいっ!」
フィーナが満面の笑みで頭を下げる。
今日も我が家は、平常運転だ。
「メガネ枠まで奪う気かね」
セラも平常運転だな。
「ただいま」
「おかえり、今度は聖女様までハーレムに入れるつもりだね」
「聖女ではなく、聖騎士ですよ。ハーレムってなんですか」
セラとフィーナが話し始める。メガネもそうだが、この二人はよく似てるんだよな。
「食いつかなくていいよ」
俺は半分諦めながらも一応止める。
「レンモナヴェルととりあえずハーレム入りしてる。私とルナは順番待ち」
またルナが首振って、ないな。ツッコミに飽きたか?いや、フィーナを警戒してるだけかも。
「最強のヒモとは伺ってますが、私も縛られたりするのでしょうか?」
「待て、誰も縛ったりした覚えはない」
「おや、セトくん」セラが小悪魔みたいに笑う。
「縛る縄を用意してるだろ。しかも痛くないように手入れまでしてる」
「お前、嘘も大概に…あーないこともない」
「ほら、用意周到だよね」
「どこが!?違うよあれは、モナ捕獲の時に!」
モナが身震いしてる。
「捕獲依頼の時の、まだ会う前のね。わかる?」
誤解だと言いたい。
「私は聖騎士ですから、多少の拘束には慣れてます」
「いや勝手に覚悟決めるな」
「縛り方も色々ありまして、聖撃では六角形で縛るのが基本です」
「教会でいつ使うの」
レンが紙を掲げる。【平和】
「どこが!」
そうフィーナは変な下ネタをぶちこんでくる。そこもセラに似てるんだ。
ルナがドン引きしてるな。フィーナにか?俺ですか。そうですか。
アッシュが帰ってくれば、まとまるだろうか。
いや、あれも面白がるだろうな。