完成と、はじまり
「ちょっと待て」
「なんだい不満なのかい?」
セラが口を挟んでるくる。
「いや、なんというか。まず、二人の意見もだな」
「それはこないだ確認ずみだ」
「はぁあん?」
「面白い声を出すね。レンとモナにはこないだの夜に確認したのだよ」
セラが胸を張っている。くそう。腹が立つ。だがそれどころじゃない。
「どう言うこと?」
レンとモナに向き直る。
「いや、誰かが求婚した場合どうするかって話題があって」
「あって?」
「みんなのセトってことでまとまった」
【ハーレム大丈夫】
「俺の意見は!?」
何か俺の中の常識が崩れていく。
「一応、私とルナ、ヴェルとアッシュ、フィーナまでかな」
「フィーナの了承も得てないだろそれ、てかルナまで?」
「私は入ってません!」
強く否定された、そうだよな。なんだろ。ちょっとだけ寂しい。
「そんなことはないよ。嫌がるのは最初だけでだんだん良くなるよ」
セラの言い方がイヤらしい。てかお前も入ってるのな。
「私達が宣言しても、先にいる嫁は拒否しないって協定だよ」
「俺の意見は?」
「もちろん拒否権はあるよ。だが、どうだいヴェルの申し入れを断るのかい?」
「私はダメ?」
ヴェルを筆頭に女性陣の目線が俺に集まる。
逃げ場なんてない。
保留なんて許されないのだろう。
「ヴェルは魅力的だ。断る理由はないが――早すぎるだろ。こないだ会ったばかりだぞ?」
「レンもモナも出会ったばかりでしょ」
「むぐぅ……!」
考える隙を、ヴェルは一切与えてこない。
「私とは結構付き合い長いのになんでダメなんだい!?」
「ややこしいから、ちょっと黙って!」
「なんで!?」
セラがうるさい。
てか本気でセラもハーレム入りするつもりなの?……てか、ハーレムってなんだよ!?
「レンのことが途中だから、先にそっちをやらない?」
ヴェルがもっとなことを言うけど、君の宣言のせいだからね。
「返事はちょっと待ってあげるよ」
嫁二人の反対もないなら、断る理由も見つからない。
もう好きにして。
ルナが人工スキンを持って帰ってきた。
腰回りから胴体までを作り、残った部分を顔を重点的に補充する。
口の中と声帯ができれば声が出るかと思うが、今後の課題だな。
形が整ったところで、モナとヴェルを呼ぶ。
今回はモナに隣にいてもらい。ヴェルの背中から手を回す。
少しヴェルがびっくりしてるが、さっきのお返しだ。
「何、セトなにさせるの?」
「うちの家族はこれをやるとき一緒に魔力を込めるんだよ。前回はモナにやってもらった」
レンが微笑んでヴェルを見てる。
【ヴェルも家族】
俺の手の中でヴェルが震えてる。
いや泣いてる?
「……家族って、簡単に言うなよ……」
「簡単なんかじゃないさ。でも、俺は言いたいと思ったんだ」
そっと魔力を込める。レンの肌がゆっくりとなじんでいく。
その様子を、ヴェルとモナが両脇から支えて見守っている。
「よし、これで完了だな」
俺が手を離すと、ヴェルがすぐに袖で涙を拭ってそっぽを向いた。
「ふん……ちょっと、風が目に入っただけだし」
「室内だぞ」
「……知らない。セトのくせに」
そのくせに、ってなんだよ。夫だぞ?
レンを見ると肌が、光を受けて柔らかく輝いていた。
白い陶器のようでもあり、生身のようでもある。
だが何より――
顔に重点的に補充をした効果かレンの笑顔が、今まで以上に自然だ。
「……綺麗だな、レン」
【セトが作ってくれたから】
その言葉に、心臓が跳ねた。
そうだ。
これは俺が、俺たちの手で、レンに贈った“命の形”なんだ。
これからもっと動けるようになる。
もっと触れられるようになる。
もっと、笑えるようになる。
そう思うと――
完成したのは“表面”だけのはずなのに、
俺の中では、確かに何かが満たされていた。
【ありがとう】
レンが手を差し出す。モナとヴェルがそれを取り、今度は優しく握り返した。
うちの嫁たちは仲が良い。
……それが、何より嬉しかった。
ダンジョンで出会った最強のスケルトンは、姿を変えた。
嫁が増え、家族になり、また新たな生活が始まる。
次の目標は……そうだな、声かな。
【一緒にお風呂】
「それは狭いな」
いや待て、店の改装?
前途多難だ。
金欠も、まだまだ続きそうだ。
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