誘惑される首元と背中と……
手合わせで付いた人工スキンへの傷は、しばらくすれば自然に繋がる。
あまり深い傷は跡が残るらしいが、今回は最終調整で全部直す予定だ。
さて――足回りへ、大まかに人工スキンを配置する。
肩周りは薄めにつけたが、足は中までみっちり詰める。
途中、重さをレンに確認してもらいながら、ふくらはぎまで詰めたら、ももまわりへと移行。
「へぇ、粘土細工というか、陶芸というか。不思議なもんだな」
ヴェルが感心して見てくる。というか、近い。
というか……近すぎる。首元に吐息が当たる。
「邪魔になりますよ」
アッシュが嗜めてくれるが、ヴェルはそのまま背中に覆い被さってくる。
「大丈夫だよ。なぁ、セト?」
くそう、背中に……おっぱ……お前、嫁の足を作ってる夫に何してくれてんの!?
「大丈夫じゃないから離れて」
「なんだよ、ケチ」
「ケチじゃないよ、手元が狂うだろ」
「おっぱいに気を取られてか?」
「……わかってるならやめてね。それと嫁の前で誘惑するな」
「そうですよ。はしたない。やるならこっそりやりなさい」
こっそりもダメですよアッシュさん。
なんだか調子が狂う。
さて、足の付け根までで、今回は終了かな……。
「なぁ、せっかくなら全部やったらどうだ?」
ヴェルの言うことはもっともだが、なんせ金欠だ。
「バランスの問題もあるし、徐々にな。それと……スケルトンの特性を全部無くすのにも、ちょっと抵抗がある」
事実でもあるし、建前でもある。
「スケルトンとしての特性がなくても、レンは強いよ」
「手合わせした者の意見か」
「それもあるけど……レンは先読みがすごくて、それに合わせて動けるんだ」
「実際、攻撃を食らうことは稀だな」
「だろ? だから問題ないよ。戦いも大事だけど、レンも女の子だ。早くちゃんとした体にしてあげなよ」
なるほどな……。
実際、スケルトンであることをなくすのは、俺の勝手かもしれないと思っていた。
理想の少女を作り上げる――それが当初の目的だった。
だが、一緒に過ごすうちに……俺の中でも、迷いが生まれ始めていたのだ。
「レン、早く全部肌にしたいか?」
【どっちでも良かったけど】
「けど?」
レンは急いで文字を書く。
【今は早く肌を作って、セトに触れたい】
……すごく嬉しい。だが、今は――
「レン、大胆!」
「待て! おっぱじめる宣言だな!」
ヴェルとセラが騒いでる。
「君たち……多少は感動の余韻を、俺にくれよ」
ちょっと怒気が混じってしまった。
「いや、すまない。大胆発言についな……」
セラが少しだけ申し訳なさそうにしている。
「だが、よろしい。そういうことなら――用意しよう」
「私が費用出すよ」
セラとヴェルが張り切っている。
「いや、家族のことだから、そこまでは……」
と言いかけたところで、ヴェルが遮る。
「大丈夫だよ」
「……何が?」
「私、セトを夫にするから」
そう言って、口元に指を当てながら、にっこり笑うヴェル。
――あらやだ、かわいい。……ではない!!
はぁあん!?
思わずアッシュの方を見ると、彼女はいつもの涼しい笑みで、こう言い放った。
「不束な妹ですが、よろしくお願いしますね」
はあぁああん!?!?




