その骨、最強につき
夜のダンジョン、スケルトンに教わった抜け道を使い。教えられていた岩で囲まれた小部屋へ辿り着く。
まともな順路だと俺には辿り着けない八階層。
最強スケルトンがいる小部屋。財宝があるとも言われる小部屋。
松明の灯りが小部屋から漏れている。戦う音が聞こえる。先客がいた。
岩陰から、俺はその様子を見ていた。
スケルトンの相手はビーストティマー。
獣をけしかける、鋭い牙と鉄の様な爪を持つ魔獣。
咆哮と共にスケルトンへと突っ込んだ。
牙がスケルトンの腕をかすめたように見えた。
肉があれば、裂けていただろう。
だが骨には、届かない。それほどわずかな見切り。
スケルトンは軽く踏み込む。
ショートソードの一閃が、魔獣の爪の先をほんのわずかに削った。
浅い。けれど、速い。
そして何度も。
精度と数で圧倒していた。鉄の様に固いはずの爪がその長を失っていく。
浅くしてるのだ、魔獣にわからせるために。
魔獣は、とうとう一歩、下がった。
その間、スケルトンの体に触れたものは、ひとつもない。
攻撃が届かないのではない。届かせないのだ。
骨の剣士は、格の違いを、静かに、見せつけていた。
魔獣は荒い息を吐き、距離を取る。
それでもビーストティマーはけしかける。
「下がるな!何やってんだよ!バカが!」
スケルトンは、静かに剣をおろす。終わったと言わんばかりに。
いや、そもそもスケルトンにとっては戦いですらなかったのだ。
ゆっくりとショートソードを壁にかけた。
その岩壁には、他にも様々な武器が整然と並べられていた。
両手剣、バトルアックス、槍、ハチェット
まるで鍛錬場のような光景。
スケルトンは手を見つめる。
手袋の中にある厚み。人工スキンの肌。
スケルトンは静かに撫でていた。
まるで、大事なものを確かめる様に。
その様子に俺の胸が熱くなる。
だが、ティマーには馬鹿にされたように映るだろう。
戦ってた相手が、武器をしまい。敵とも見做されていないのだ。
ティマーの声がさらに大きくなる。
罵声にしか聞こえない。聞くに耐えない。
魔獣はもう動かない。獣は強さを見間違えていないのだ。
その瞬間だった。
ヒュッ。
小さな風切り音。
ハチェットがティマーの鼻先をかすめ、奥の壁に深く突き刺さった。
「……ッ!」
声にならない悲鳴を残し、ティマーは恐怖に駆られて逃げ出した。
余程パニックだったのか、すれ違った俺にも気が付かない。
魔獣も主人に続いて、音もなく姿を消す。
あの距離から殺さないギリギリを狙う。
殺す気なら、間違いなく即死していた。
だからこそ震え上がるのだ。
見ていてわかる。
あれは、ただの骨ではない。
殺す力を持ちながらも、無益な殺しを選ばない。
だから人々は、恐れと敬意を込め、その名を口にする。
最強スケルトンと。




