骨に肌を、財布に痛みを
あのスケルトンの顔を作りたい。笑わせたい。そのために、金がいる。
ダンジョンを出ると、満足感とこれからの不安が一気に押し寄せてくる。
だが、動いてるわけじゃない。知り合いの美術商から家を担保に借りただけだ。
期限を超えたら宿無しになる上、返せるまでの強制労働。
とりあえず1500万ゴルド。家と考えれば安い金額。だが俺には大金だ。
まだ手持ちに200万ゴルド残ってる。
大金貨20枚。両手でもてるだけの金属の塊が、俺の生活を左右する。
さて、これが5枚あれば今月は支払いできるし生活にも困らない。
スケルトンの頭を表面だけでも整えるためにはもう100万ゴルド必要。つまり100残して2か月の余裕を持てるわけだ。
スケルトンの衣服を揃えたりで多少減るかもしれない。つくづく、魔導具のワンドが高すぎる。
悩む俺の肩を叩く奴がいた。えーい、今忙しい。振り向くと美術商が笑っていた。
「勢いで借りてった金は有効に使えたかい?」
メガネにコルセットと落ち着いたドレス姿の若い女性。
親が豪商の道楽娘。自分で美術商を始めそれなりに成功してるようだ。
俺に仕事をくれる存在、セラ。
今回も深く聞かず金を貸してくれた。
立場が違うのに、商売人だからか、俺のような根無草にも普通に話してくる。
「初回から心配することじゃないけど、もう少し分割、細かくしたほうがいいんじゃない?」
「期限近くなったら相談する」
弱気なわけじゃない。保険だ。
早くスケルトンに顔が見たいから、予算ギリまで使おうとか考えてない。
「最悪返せなかったら」
「あの店だろ、わかってる」
「うん、足らない分は、君の体で払ってもらう」
「何そのスケベ展開」
「望むならそれも良いけど」
「いいの?」
「それは置いといて、君の腕で直して欲しいものが沢山あるだ」
「腕を見込まれるの嬉しいけど…」
「仕事を受けてもらってる間は、小屋も取り上げないから、無理はしないでいい」
「それはありがたいな」
「そう、今日死ぬ気で頑張っても明日があるんだから、程々に」
含蓄がありそうだが、セラがサボる時によくいう言葉だ。
こないだは「何もしないをしてる」とか言ってたな。
「それはそうと、セラはどこで服を買うんだ?」
「なんだ、服を褒めて下心でもあるのかい?」
「いや、全く」
「そこは少しはあるそぶりをしなよ。オーダーメイドだよ。家で相談して出来上がりを持ってきてもらう」
「うへぇ、高そう」
「最低20万。着てるの全部合わせると50、いや70あればできるかな」
「想像以上でした」
「服の中もすごいんだよ」
「それはなんか、すごいことになりそうなので遠慮します」
セラはくすくすと笑ったあと、不意に口調を変える。
「……ところで、人工スキンの取り扱い、うちでも少しやってるけど?」
「え?」
「義手や義足用の人工皮膚ね。他で大量に買う人がいるから、安く融通できるかも。聞いたよ1セット買ったのだろう」
セラはセトの顔をじっと見る。
「君の周りに、そういう必要な人がいたっけ?それとも、もしかしてあれかい」
「……?」
「ちっちゃい人形作って、ウフフする気かい?」
心臓が跳ねる音を感じた。図星だ。
いや、人形じゃない。
等身大だ。スケルトンだ。
やってることは……
「な、なんでもない」
「ふふっ、顔に出すねえ。私は君のそういうところ、嫌いじゃない」
セラはどこから何を見てるのかわからない。気を付けよう。
だが、その情報網があって、美術商として成功してるんだろうな。
「良いよ、盛大にやらかしたまえ。でも借金は私に相談すること。間違っても金庫番のレイグから借りない」
「借りたら?」
「内臓売られるんじゃない?」
スケルトンに肉付けしたい男が内臓売られるのか。
ちょっと怖くなる。
セラのお付きが寄ってくる。嬢より少し小さい黒髪おかっぱの少女メイド。
腰には立派なレイピアを下げている。護衛のルナと言ったか。
ちょっと睨まれる。怖い。でも可愛い。
「そろそろお時間です」
「おっと、そんな時間か。じゃあ。頑張りたまえよ」
ひらひらと手を振りながら、セラは街の喧騒に紛れていった。
セラの情報網に察知されていることに冷や汗をかくも、人工スキンが少しでも安いなら利用しない手はない。
服の予算と相談しながら、頭部に使う人工スキンを手配してもらおう。
店を周り、間に合わせだがブラウスとロングスカート、そしてマントを買う。
セラの服に比べれば差は歴然だが、少しでも綺麗なものを吟味する。
そして本命だ。
スケルトンの眼球。目を求めて店を歩く。
さっきまでとは違う。通り。普段は足を運ばない場所。
さぁいくら使う。迷うのが値段なら買えが信条だが。いいものは高い。
日が暮れるまで迷った。
人工スキンがセラから届く。安くしてもらったが、やはり人工スキンは高い。
頭部をちゃんと作れる量か不安だ。
だが今回は物も多く揃えた。早く戻ってやろう。
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それでは、また次回にて。




