霞を掴む旅
「で、結局、コイツはなんなの?」
戦いが終わり、モナの元へ行くとヴェルが怒ってる。
まぁ無理もない。
「俺も、別に全部がわかってるわけじゃない」
「ならなんで、オオタの実体がないとかわかったの」
「俺と言うよりモナだな」
モナがきょとんとしてるな。
「モナが実体あるオオタに気が付かないわけがないんだ。たとえ足音がしなくても」
「それだけで?」
モナが何かを思い出し口を開く。
「そう。最初に外で会った時は音がしなかった。でも、その後は足音がしたから、足捌きかなって思った」
「まだ分からないんだけど?」
ヴェルが食い下がるな。後ろでイーゼルも気にしてる顔だ。
レンは、オオタの周りをぐるぐる回ってる。気になるよな、わかる。
「細かい話は後にして、見てもらいたいものがあるのですが」
オオタが困った顔をしてるな。
ヴェルが渋々、オオタが歩く方向へ顔を向ける。
「あんたが散らかすから歩きづらいのよ」
「ふふふ。すみません。戦いやすい演出かと思ったんですが……張り切りすぎました」
「ペテン師より演劇の手伝いした方がいいかもな」
「宗教家は似たようなことをしますから」
オオタの言葉に、イーゼルが睨むが、イーゼルの肩から力が抜ける。
「その点は否定しきれませんが、貴方が言うと腹が立ちます」
「そうですね。あまり舞台の裏側を語るのは興醒めですね。でも、商売も宗教も期待を持たせる。ワクワクさせることが大事です。いえ、そればかりではありませんが、やはり分かりやすいものが必要だと、私は思うのですよ」
オオタが大袈裟に肩をすくめる。
「セトさん。やはり私はコイツが嫌いです」
そんなやりとりの中、レンが何か書き込んでるな。
【オオタもスケルトン?】
はたと、全員の足が止まる。
「いえ、私はスケルトンではないですね。これも借り物……勝手に憑依させてもらってます」
「レイスと勝手に俺が言ったが、本当にレイスなのか?」
「死霊とも違う。いや違わないのかもしれませんね。狐火とも言われる存在なのですが」
「どっちにしても祓われる対象です」
イーゼルが睨んでるな。
「どうかお目こぼしをお願いします」
「まだ利用価……やることもあるでしょうから、今は祓いません」
そう言うと、視線を逸らした。
利用価値って言おうとしたな。
「その本体?いやどっちが本体なのか分からなくなるな。黒い骨は自分では動かないのか」
「どうなんでしょうね。人で言うところの魂がない状態でした」
「先に出た方には魂があったと」
「そう言うことになりますね」
オオタは悪びれることもなく言う。
「セトさんは神をあまり重要視してないようですが、魂は信じるのですか?」
オオタが嬉しそうに語る。僧正なのに罰当たりな気もするけどな。
「魂というか人格、いや魂なのか」
言葉にするには難しい。
「人の本質、芯みたいなものは存在していると思います。神を差し置いても人の生命の芯があると思ってます」
イーゼルが呟く。
「イーゼルさんほどの方でも、そう思われるのですね」
オオタの笑いにイーゼルが嫌そうな顔を隠さない。
「レンやアッシュの実験を経てと言ったな」
「言いましたとも」
「元は同じなのか?」
俺の質問に、オオタが初めて悩む。
「難しいですね。蓮華は思想ばかり広まって、同じ団体同じ人ではないですからね。ただ、耐える魂はそう多くないと思います。魂はもっと儚い」
そんな話をしていると、入り口にたどり着く。
「とても楽しい時間でした。セトさん。いやモナさん。謀ってすみませんでした。長く生きすぎて暇を持て余しましてね。お詫びに蝋燭も少量ですが用意しました。羊皮紙の解読はもう少しお時間いただきたいところです」
「なら、預けとくか?」
「いえ、もう覚えました」
入り口から出て、後ろを振り向くとオオタの姿はもうなかった。
「結局何も分からなかったって事?」
ヴェルが疲れてるな。
「そうでもないさ」
俺が納得してる風に終わろうとすると、ヴェルが背中に乗ってくる。
「セトは変なものに好かれやすいのよね」
「身に覚えはある」
「そうでしょうね」
【私も戦いたかった】
「まぁレンはそうだな」
無駄足だったようで、何かもう少しでわかる気がする。そんな旅だった。
「帰りましょうか」
イーゼルが歩みを進める。




