禅問答と入り口
「ふふふっイーゼルさんは、これを見た時何か思いましたか?」
オオタが羊皮紙を眺めながら、質問をしてくる。
「古いダリア式ではない、誰かの手が加わってるとは思いましたが、私では解読できませんでした」
「そうでしょうね。全く訳がわからない理論が書かれてますから」
「読めるのか?」
俺の言葉にオオタが笑う。
「詳しくは、時間を頂かないといけませんが、訳が分からないくらいは分かりました」
「あいつ何言ってるの?」
ヴェルが俺の腕を引っ張る。少し不機嫌だな。
「悪いヴェル。オオタの言ってる感覚少しわかるんだわ」
「わかるんだ。私は頭痛くなりそう」
ヴェルは椅子に深く腰をかけるが、俺の腕は触り続けていた。
モナは足元で丸まり寝てる。獣姿が珍しいのか、たまに白装束が覗いてる。
「良いですね。セトさんも行ける口でしたか」
「変な言い回しだが言いたいことはわかる」
「なら、分かりますね。これは進まない。延々繰り返してたどり着くか。これの書き手に会うかです」
難しい。俺に渡したダリアが書いたものだとしても、また会うことが出来るだろうか。
「あなたなら、延々繰り返せるのでは」
イーゼルがオオタを見る。
「以前は、やってましたけどね。今はもっぱら呪いの方でしてね」
オオタが羊皮紙を俺に戻すと。大袈裟に手を振った。
「人体実験を繰り返してきたくせに」
イーゼルが睨む。
「施術。ですよ。望むものに望む行為をしてきただけです」
「待て、オオタも蓮華の…」
俺の言葉にオオタがニヤリとする。
「人をやめて人を超えるでしたか、そこまで大袈裟じゃないんですよ。強くなりたいから鍛える。それと同じです」
「セトさん、こいつはペテン師なので、煙に巻かれるだけです」
イーゼルが席を立とうとするので俺が止める。
「言葉巧みなのは俺もわかった。それで、オオタも蓮華なのか」
「ふふふっ話戻されちゃいましたね。そうですね。思想は同じです。もっとも行き過ぎた連中は…」
オオタが山の頂きを指差す。
「まとめて一掃されてしまいました」
俺の腕が引っ張られる。ヴェルだ。
「あそこは、人身御供と言いながら乱暴したり実験を繰り返す施設が多かったの」
「暴れ過ぎてなった訳じゃなかったのか」
「人をなんだと思ってるの?まぁ予想以上にはなったけど」
ヴェルは少しだけバツが悪そうにオオタを見る。
「いえいえ、風通しが良くなりましたよ。なんとは高いところが好きらしく、まとまっていたのも幸いでした」
白装束がオオタに声をかけ、オオタが席を立つ。
「ふふふっ楽しい時間でした。よろしければ、施設の中を案内させます。何か見つかると良いですね」
イーゼルはまだ難しい顔をしている。
信仰的な部分もあるのだろう、中々納得は難しい。
俺は宗教に無知なせいか、受け入れてしまっている部分がある。
レンに肉付けすること、それは望まれてやっている。
今でこそ言えるが、最初は自分の欲望だ。
施設を見る。寺院とは違う。
大きさの違う箱を並べたようなものが、長く山の横に連なる。
その入り口の一つなのだろう。
オオタが祈祷していた先に見える。階段。
「レンどうする」
聞くまでもなかった。レンはその階段をずっと見つめている。




