フィーナが限界な話
出かけようとしてるのに、何かが起きて話が進まない。
そんな時、ありますよね。
セトです。
現況を報告すると、モウラがフィーナから逃走。
俺はモウラに手を引かれて巻き添えを食ってます。
「あいつ頭おかしいのよ!カッツェより脳筋。あと周りも洗脳されてる」
宗教だから、と言ったら失礼か。まぁ頭おかしいというか。
通常運転だ。
「待って待って待って。この国ではあれが普通なの?鯉のぼり?あれできるのみんな」
できるわけない。
何を今更。
モウラは砦の森へ隠れると一息つく。
「昨日ね。フィーナのお師匠さん。あの建国祭でレンと戦った人」
「マグナスだな」
「そうあの人が来たんだけど、あの人も変」
「お前、建国祭の前、ステゴロ大会だっけ?あの時も見てただろ」
「あの時は、ヴェルにやられて朦朧としてたから」
「その割に試合見てたな」
「試合だけね」
「あの時もポールダンスやってたぞ。鯉のぼりもしてた」
その言葉にモウラがゲンナリする。
「すごいけど……」
「すごくはあるけどな…」
技術的にも見た目もすごいのだ。
認めてはいるが、頭がついていかない。
わかる。
あれ、モウラと帝国から帰ってきた時も鯉のぼりしてたよな。
そんなことを言おうと、モウラを見ると、モウラの顔が険しくなる。
突如森がざわめく
「モウラ、もーーうーーら」
低い声が森の奥から響く。
モウラが俺の口を塞ぎ気配を消そうとする。
だが無理だろ。
筋肉信者の山狩されたら即アウト。
てか、なんで砦で山狩されないといけないんだ?
「モウラ、何でフィーナはあんな状態なんだ」
「知らないわよ」
「何か変なもの食べたとか」
「帝国のお土産でお饅頭と抹茶」
お饅頭は甘いお菓子で前セラからもらったな、あと、抹茶か。
あれは、飲んだ後頭がさえたかな。
「もーーーうーーラーーー」
こんな状態になるか?
幸い筋肉信者総出の山狩はないらしい。
フィーナ単騎だ。
「モウラ、提案なんだが」
「何、あれから逃げられるの?」
「上に逃げるか下に逃げるかどっちがいい?」
「上から追ってきてるのに上に行くわけないじゃない」
「じゃあ二手に別れよう。モウラは下に、俺は上に逃げる。どちらかは生き残れる」
モウラは少し考える。
「犠牲になってくれるんですね」
モウラがいい笑顔を返してくる。こいつ巻き込んだくせに。
だが、いいその方が俺も心が痛まない。
「ああ、だが両方、逃げ切れるのが一番だ」
モウラと拳を合わせ、俺たちは二手に分かれる。
「そもそも、追われてたのモウラだし、俺を追ってこないだろ。さらに…」
モウラの背中を見ながら俺は横へ走る。もう少し。
そう、セラの提案で掘り始めた地下通路。まだ試しに掘ってる段階で、さながら迷路、いやダンジョンである。
仮にフィーナが追ってきても、撒くことができる。掘ってる職人さえ迷うダンジョン。ほとぼりが覚めたら出て行こう。
…………
細い道と広い空間、さらに横穴がほられている。我が家の下でなければ、怖くて入れない。
お堀の水を使っての罠空間まであるな、セラは練兵の為って言ってたけど、必要かこれ?
まぁまだ試作段階だ、色々やってるんだろう。
入り口の光が、遠くなってくる。
ここら辺でやめておくか、フィーナももうモウラを捕まえたか、諦めただろう。
念のためもう少し時間を潰すか、俺、ここから生きて帰ったら、レンの肌を……
こつり。ズズズ。こつり。ズズズズズー
暗い足元を確かめながら歩くような音ともう一つはなんだ?
今日は作業に入る日ではない。
職人が忘れ物をとりにきたか。
暗闇に火の玉が灯る。
なんだ、ガスでも……
暗闇にフィーナの顔だけが浮かび上がる。
火の玉じゃない。拳を光らせたフィーナが迫っていた。
バカな!標的はモウラのはずだ。
まさか…もう…
「セトさん。いますよね。うふふふ、わかりますか。フィーナです」
声は冷静だ、だが絵面が尋常じゃないほど酷い。
片手でモウラを引きずってやがる。
くそ、足止めにもならなかったか。
「私、限界なんです」
フィーナが虚空に向かって語りかけている。
モウラは意識がないな。
「わかりますか、セトさん…」
こつり、ズズズズズズ。
やばい、逃げ込んだはいいがまだ、貫通していないここに逃げはない。
「アッシュさんとヴェルの過去の話はしょうがないです。悲しいけど、受けとます」
こつり、ズズズズズズ。
「セトさん逃げて、フィーナはもう」
「ああモウラお目覚めですね。あなたのおかげで、私はしばらく持ちました」
「フィーナ?何を言って…」
モウラに外傷はない、絞め落とされいたのか…
「人狼はちょうどよく私を発散させてくれました。モウラを鍛えるのもちょうどよかったです」
俺は声を出せない。モウラの犠牲を無駄にしないためにも、逃げ道を…
暗闇で目が合う。いや見えてはいない。
だが、確実に、フィーナに見られた。
「ダリアさんの話あたりから、難しくて限界なんです。何で私がセラさんやイーゼルと肩を並べて説明側なんですか!!」
あー。
その割、一言も発してなかったよな。
難しい顔してたのはそのせいか。
そして、モウラへのシゴキがそのせいでエスカレートしたと、いつものフィーナだな。
フィーナの不満の理由がわかりホッとしてると、手が掴まれた。
しまった。
「限界だと、思いませんぁああ」
ただの八つ当たりだった。
「ねぇセトさん、夫なら私のこの昂りを鎮めてください」
「え?なに?ナニ?何?……」
………
………
もう一丁いく?
…………
………
抹茶で興奮していたのだと、のちにフィーナ被告は語るのであった。
モウラは一言。すごかったっとだけ口にし、その後沈黙を守った。
あの時、洞窟で何されたか、俺は恥ずかしいから言わない。
現場からは以上です。
抹茶は無罪。
ちょっとらしからぬ話が続いたので、作者もフィーナも爆発しました。
なお、作者は反省はしていない模様。




