セラはセラ
「ダリアからの恋文かい」
ダリアから渡された紙を見ているとセラがのぞいてくる。
「紙じゃなくて、羊皮紙だね」
セラは腕組みしているが、俺はこれに書かれたものがさっぱりわからない。
「わからないことだらけだよ。ダリアもお前も」
「ふふふっミステリアスの方がそそるだろ、昨日もすごかったし」
「うるさいよ」
「とはいえ、あまり引っ張りすぎるのも悪いからね」
セラは少しだけ真面目な顔をする。
「アレクなんかには知られてるけど、私の元の名前はセラフィム・タウロノアだ」
さらっと王族の姓が出てくる。
普通なら驚く。
だが、今更だ、セラはセラでしかない。
「やっぱりセト君は驚かないよね」
「ここにくる前までなら驚いたけどな。今は某国のお姫様や帝国のお姫様。教皇の娘だからな」
「ふふふっどれも肩書きに興味がないくせに」
セトは肩をすくめる。
「だからだよ」
「君は何ができるかにしか興味ない。もしくはどこが壊れてるかだ」
不意にセラの目が細くなる。
「なんだそれ」
「いや、いいんだ。完璧すぎる私がいけない。君の趣味とはちょっと違うことは理解してる」
最近真面目だったのに、いつもの調子が出てきたな。
「直すのが好きな道具屋だからな」
「私は直すところがないからね」
「いっぱいあるだろ」
その言葉にセラが笑う。
「では、旦那様、何なりと申し付けください」
「仕事をするから、自分のことをやってください」
その言葉にセラはすごすごと席についた。
扉が開くとルナとリザが入ってくる。
おとなしいセラを見て首を傾げているな。
ルナがどうしましたと言わんばかりだが、ほっとけ。
今日は俺も仕事をする。
羊皮紙を机にしまい、ルナがまとめてくれた書類に目を通す。
工事費:魔王城地下通路施工費:二億ゴルド
なんだこれ?
発案者セラ
「おいセラ」
「なんでしょう。旦那様」
「いいからやめろ。その口調」
セラがニヤニヤしてる。
「この地下通路ってなんだ?」
「いずれ必要になるだろ」
「襲撃された時の脱出口か?」
「いやセト君、砦降りてから大回りで北区とか行くだろ、近道だよ近道」
「なるほどな、でも工事費高くないか?」
「広間を作るからね。兵の隠し場所としても練兵する施設としても使える」
その顔は至って真面目だった。セラが戦いも想定している。
セラもイーゼルも好きに動いてもらっているのはここにある。
俺の考えの至らないところを補ってくれているのだ。
「了解だ」
俺は書類にサインし、その場でルナに渡す。
「のちに魔王城のダンジョンと呼ばれる施設である…」
セラが変なこと言ってるな。
結構な秘密を聞いた気がするのに、やはりセラはセラだ。




