魔法と魔術回路
「それで、私のところへ来てくれたんですね」
教会の小部屋、イーゼルの部屋に来た。
レン達はフェルのところにまだいる。
場所は決まったので、筋肉信者達が井戸を掘っているのを見ているだけだ。
フィーナが例の掛け声で、音頭を取っている。教会に居なくて良いのかあいつ。
俺にイーゼルが向き直る。
今日は少しだけ大人びて見えるのは、俺に物を教える立場だから張り切ってるせいか。
「魔術回路と教会の魔法はまた別なんです」
「別とは?」
「アッシュ様の火とフィーナの光は、根本が違うんです」
説明されても、わかっていない俺にイーゼルは微笑む。
「ヴェルさんもそうですが、例えばセトさんのワンドありますよね」
定着のワンド。レンの肌を作るために俺が使ってる魔導具だ。
「あのワンドは、魔法を使えない人にも使えるようになってます」
「ふむ」
そこまでは分かる。
「でも魔力は必要で、充填式。もしくは誰かの魔力を使ってますよね」
「そうだな、最初は俺が、その後はモナに協力してもらって、次はヴェルもいたな」
イーゼルの眉が少し上がる。
「そこはちょっと驚きなんですが、説明を先にしちゃいますね」
「頼む」
「魔導具は別ですが、人は長い年月をかけて、魔術回路を体に染み込ませます。それが魔法使い」
「あまり見ないよな」
「特殊すぎるのと、たとえば炎の剣。セトさんだったらどうします?」
「油かけて燃やす」
「そう、簡単なものなら代用できるのに、長い年月をかけない」
「そもそも炎の剣って持ち手が焼けるよな」
その言葉にイーゼルがクスリと笑う。
「セトさんらしい発想ですがそうですね。使い手も危ないです。なので、人気なのは爆発魔法ですが……一回使うと魔力全部持って行かれるんです」
「混戦だったら、その後危ないな。分けてとか、小さく爆発とかできないのか?」
「普通の魔法使いには難しいですね」
イーゼルが少し笑う。おかしいこと言ったか?
「1つ使えれば普通の魔法使い、2つ使えれば凄い魔法使いです」
「その魔法ごとに回路が違うのか」
「そういうことですね。アッシュ様やヴェルさんは炎の種類も、その耐性に再生能力なども持ち合わせてます」
「フィーナは?」
「そこに話を戻すと、フィーナは魔法使いではありません」
あれまた分からなくなったぞ。
「でも、拳が光ってるよな。アンデッドも倒すし」
「あれは祈りの効果ですね」
フィーナの戦いを思い出す。叫んでるだけで祈ってはいないな。
「決まった文言を唱えてませんか」
「あっ」
「それです」
「あれ、文言。呪文だったのか」
「祈りです」
「いや、掛け声」
「祈りです」
イーゼルは微笑む。
納得いくようで納得いかない答えだった。
井戸は無事掘り終わったようだ。




