魔王城の日常 少年の視点
転々と土地を移動して生きてきた。
旅の一行って言うんだけか?
親分、っと言うと怒られるけど、親分のコンノについて生きていこうと決めたのはいつだったろう。
サノブは孤児だった。
言葉を話すより先に盗みを覚えた。
コンノを狙ったのは、そこそこ腕に覚えをつけた頃だった。
まだ細いがサノブはそこらの大人くらいだしける。
捕まらなければいい、盗みとはそう言うものだ。
そこそこ強面が集まっているが、半数は女だ。いざとなれば女を盾に逃げればいい。
この世は弱肉強食。
ボコられた。特に逃げる時、刃物を向けた女にしこたまボコられた。
その後、なぜか行動を共にしている。
「食えないなら、しばらく働け」
コンノはでかい男だ。
ついていこう。
そして、俺をボコった女はコンノの奥さんだという。
ヨウさんはすごい綺麗だけど、すごい怖い。
避けておこう。
そんなコンノは今回の土地に根を張るといった。
旅の日々は終わりだと。
ちょっと寂しい。だが、コンノも奥さんも嬉しそうだ。
なら、良い。
いや良くない。
コンノが、魔王に頭を下げてる。
あんな弱そうな奴に。
腹が立つ。
だが、顔には出さない。
魔王は女性を多く連れてくる。うらやま……不誠実な奴に違いない。
コンノは、ヨウさん取り戻すために魔人に立ち向かったんだぞ。
あれ、コンノが、汗かいてるな。
姿勢を正せ?なんで?メイドさんが、笑う。
すごい可愛らしい人なのに、コンノは、硬直していた。
メイド服の小さい方は俺でも倒せそうだけどな。
獣人は、細いのに強そうなのはわかる。この人の物は盗みづらそう。
髪の毛白黒のねーちゃんは簡単……
なんて考えてると背筋が冷える。
ヨウさんに睨まれる。怖い。キセルを灰皿で叩く、灰を落としてるんじゃない。
あれは、警告だ。やめてキセルをそんなに叩かないで。
記憶が蘇りそうだから。
お使いで市場に行くと、また魔王が女を連れている。良い身分だな。
魔王城と聞いていたのに、拍子抜けするくらい。平和だ。
この、市場だって俺にかかれば盗み放題だ。
だが、しない。
コンノの顔を潰す行為などしない。
獣人の魔王嫁が、子供達に人気だな。わかる。強くてかっこいい。
しかも最近はなんというか、エロかっこいい。
子供達に紛れて俺も……
魔王に見られる、
ヨウさんの視線と思うくらいに怖い。
侮りすぎていたのかもしれない。
「俺の尻だ」
ん?聞き間違えか。
獣人の魔王嫁と仲良く歩いている。
羨ましい。
「おりゃーセト!覚悟」
魔王を蹴飛ばす少女を見かける。
頭には小さな角、見かけない衣服。
何より小さい。子供?サノブは驚きを隠せない。
魔王は確かに弱そうに見えるが、コンノが頭を下げ。ヨウさんとも対等に話す相手だぞ。
それにさっきの目線、あれはただの変態が出せる威圧じゃない。
あー捕まって。ゲンコツで頭を挟まれてる。グリグリと、少女が泣いても魔王はやめない。
なんだ、あの魔王。容赦がない。
しばらく見ていると、しょげた少女に魔王が屋台で何かを買い与える。
それを頬張りながら、少女は魔王の後ろを歩く。
コンノが頭を下げている時より。サノブの心は揺れ動く。
ダメだ、あの魔王。あの少女にまで手を出す気だ。
あの魔王から、少女を助け出さなければならない。
サノブはそう誓った。
誓ったのに、コンノから商隊で旅に出ろと言われた。
旅は好きだけど、今はちょっと。
どこからか、キセルを叩く音が聞こえる。
いえ、行きますよ。
怖くて後ろを振り向けない。
荷物を積み、魔王城を出る時、またあの少女を見た。
魔王の後ろを歩き、蹴り飛ばし、捕まっていた。
楽しそうだった。
あの後街の人から聞いた、災害と救助と顛末。
平和そうに見えるのは、魔王のおかげだった。
魔王は、サノブの商隊に気がつき手をふる。あの少女も手を振る。
魔王の背中をついてまわる少女の笑顔を見ながら。
門を出た。
何かに気がつき……
心が少し痛かった。




